嫌なら全部、捨てちゃえば?
まろん
第1話 プロローグ~僕達の始まり~
・・・あなたに会えてよかった。
幸せだったし、恨んでない。
母親は父親と離婚してから女手1つで僕を養ってくれている。
お金の事で2人が言い合いをしているし、家の雰囲気が悪くなってきて、当時小学2年生だった僕もなんとなく察した。
もう終わりだなって。
この家庭がおかしくなったのは僕が6歳の頃。
それから離婚するまでの間、僕は週末になるとだいたい祖父母の家に預けられて、月曜の学校が終わって家に帰るまでの間母親に会う事が出来なかった。
祖父母に聞くと
「ママは今頑張ってるから。」
としか言われなかった。
でも僕は何となく知っていた。
稼ぎの悪い父親に変わって母親が夜に男と酒を飲む仕事をしている事を。
それを父方の祖父母が黙認している事も。
だから・・・学校から帰って来てドアを開けると、寝室のベッドで死んだように眠っている母親を見ても何も言わない。
僕に出来る事は「手のかからない子ども」になる事。
宿題は学童で必ず終わらせて来る。
お迎えが来て、家に着いたら言われなくても手洗いうがいをする。
お風呂掃除をする。
「いただきます」「ごちそうさま」を言う。
母親がたまに泣いていても誰にも気づかれずに振舞うように、僕も母と目が合うと必死で笑顔を作った。
僕は「いいこ」なんだ。
だけどまだ子供の僕にはしんどいものがある。
家族が壊れるのは嫌だけど、早く「りこん」てやつをしちゃえばいいのに。と内心思っていた。
そうなった場合、僕は絶対に母親について行くだろう。
だってさ、父親はろくに生活費も入れないし、幼稚園の時も小学校に入ってからも、行事に来てくれた事はない。
僕の送り迎えやご飯の支度ももちろん母親。
こういうの、世間では「ワンオペ」って言うのだろう?
誕生日だって父親は何もしてくれなくて、状況を知ってる母親の友達が気遣ってゲームソフトを買ってくれたのが記憶にある。
僕が小学3年生になる前、ついに離婚した。
どうこう言わずとも、この母親は意外としたたかだった。
これは後から聞いた話だが、母親は沈黙を守りながらも僕が7歳になったあたりから本格的に離婚に向けて貯金していたのだった。
そのおかげもあって、母子家庭となった後も、僕は塾にも通えてサッカーも続けられた。
前の学校の時は友達みんな持ってるのに、僕は「学童だから必要ない」って持たせてもらえなかった携帯電話も買ってもらった。
何より母親がいつも笑顔で居てくれるから、僕も気持ちが楽だ。
「肩の荷が下りる」ってこの事をいうのだろうか。
何はともあれ、晴れて新しい生活が始まる。
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