9話


 ウナ先輩が来る。

 夕方の集会で、峠に集まった天ノ雀のメンバーは、各々鉄パイプや角棒を手にしながら震えていた。

 輪の中心で、すずめちゃんはピンク色に塗装したホンダのCB400FOURに跨って、気合いのすだれ前髪を気にしていた。サラシにドカジャンを羽織って、足元はチャイナ風シューズ、すずめちゃんの一番のオシャレだ、とオタケは思った。

「今日はトップクじゃないんだね」

「今日あウナへんぱいがくるひらし……」

 すずめちゃんがまた前髪をいじりながら言った。

「一張羅だね」

「うん……チームらなくれ、すずめとしれ、あいらいの……」

 オタケは大きなせんべい缶を携えている。その手は緊張からじっとりと湿っていた。

 その時、遠くで悲鳴が上がり、輪の一箇所が崩れた。

 ウナ先輩が来たのだ。

「すずめオラ! どこだ!」

 邪魔だザコ! 叫んで改造バイクから轟音を響かせながら、ウナ先輩が人を割ってすずめちゃんの前に現れる。

「すずめ、テメー、アタシに面出させようって随分偉くなってんじゃねえか。ボコされる覚悟済んでんのか」

「ウナへんぱい……!」

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