はじまり
第二夜 「人の形をしたドラゴン」
「「「時間だ、9番」」」
男二人、女一人で構成された三重の機械音声が響く。
声と同時に、暗闇の空間にスポットライトが灯る。
光で照らし出されたのは、椅子に縛り付けられた骨と皮だけの衰弱した男。髪が伸びたまま放置され、長らく身体を洗っていないのか汚れている。
9番と呼ばれた男はゆっくりと首を上げる。
「昨日ぶりだな、管理者共。どうだ、少しは人間だった頃が懐かしいか?」
9番を見据える三つのモノアイ。巨大な本機に繋がっている、三機の人工脳搭載型子機が言葉を発する。
「減らず口が叩けるなら、今日も語るのだな」
「物語が枯れた時、9番の死刑が執行される」
「我ら三眼の、究極の贅沢が完遂される瞬間でもある。だから、9番。死に物狂いで語りなさい」
「「「死ぬまで、我らを楽しませろ」」」
9番含めた九人の反乱分子――九人の文化人が収監されてからこの遊びは始まった。
九人が一人ずつ、あらゆる文化や娯楽が尽きるまで、三眼の管理者の前で披露させられた。
披露できるものが無くなれば、その人物の処刑が全世界に中継された。
処刑中継は潜伏している反乱分子をけん制する副次的な目的に過ぎない。
一番の目的は、三眼の管理者が文化と娯楽を独占したと宣言すること。
支配者気取りのサイボーグはそれを「究極の贅沢」と表現する。
既に八人が死んだ。
最後の一人、9番だけが三眼の管理者に抵抗する最後の戦力だった。
武器は、彼が知る物語や創作する物語。
9番の前に、古めかしい蓄音機型の録音デバイスがやってきた。
今日の、命がけの夜話が始まる。
「良いだろう。お前たちに聞かせてやろう」
9番が語るのはドラゴンの物語。
人の形をした竜人たちの物語。
「今日の物語は――」
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