婚約破棄された悪役令嬢は、『あなたのお悩み解決しません! 』
さくらのあき
第1話 悪役令嬢 誕生
「エミリア・ファセリア公爵令嬢、君は、私の人生の悪役令嬢だ。よって、婚約を破棄する! 」
「はい? 私が、悪役令嬢で、婚約破棄ですか? 」
「そうだ」
「私が悪役令嬢、なぜですか? 」
「まず、暗くて、冷たい」
殿下は、私に向かって言う。
「まぁ、私が暗くて冷たいなんて、そんなに落ち着いていて冷静ですか? 嬉しいですわ。王太子妃教育、頑張ったかいがありますわ」
うふふ、早速、昨日の王太子妃教育で学んだ『短所は長所に言い換えられる』を実践よ。私は、殿下のネガティブな言葉を見方を変えて、ポジティブな言葉に言い換える。
「えっ、褒めてないぞ」
むすっとして殿下は言う。
「それから、それから・・・・」
私は、目を輝かせながら聞く。言葉の言い換え楽しいわ。それに、本当に婚約破棄ができるかもしれないわ。
「その上、出しゃばりだ」
「まぁ、私、出しゃばりですか? そんなに私、しっかりしてますか? 嬉しいですわ、殿下。それから、それから・・・・」
さらに、私は、目を輝かせながら聞く。
「はぁ? 褒めてないぞ。それから、従妹のベロニカ伯爵令嬢をいじめてる」
殿下が言う。
覚えがないわね。
「まぁ、私がいじめてる? いじめてたなんて、気付きませんでしたわ。どんなことですか? 」
「それは、ベロニカ嬢に服を貸してあげなかったり、わざとぶつかったり、私と仲が良いからと嫌がらせをしていると聞いた。そうだろう? 」
殿下は、隣にいるベロニカに声をかける。
「はい、殿下。エミリア様は、私が、「この服、素敵ですわね。いいなぁ~ 」と言っても服を貸してくれないんです」
えっ、ベロニカ、あなた今まで私に服貸してなんて言ったことは、ないわよね。いいなぁ~ がもしかして、貸してって意味なの? それ、わかりにくいわ!
「それに、職員室の前で、私にぶつかってきたんです。謝ってもくれないんです。きっと、殿下と仲がいいから嫉妬されているんですわ」
ベロニカは目を潤ませながら、上目遣いで殿下を見る。
それ、私は、職員室の前で立ってただけで、ぶつかってきたのはベロニカよ。それに、殿下が他の女性といても私、嫉妬しないわよ。だって婚約破棄したいんですもの。でも、そんなことは、どうでもいいわ。今は、婚約破棄のチャンスよ。
「誤解を与えてしまったようですね。ベロニカへの配慮が足りなかったようですわ。ごめんなさい」
と軽く頭を下げる。そして続ける。
「婚約破棄ですね。承知しましたわ。私が、落ち着いていて冷静で、しっかり者だから、殿下の人生の悪役令嬢なのですね。私は、悪役令嬢で、配慮が足りなかったわけですから、婚約破棄もしょうがないですわ。ですから、もう王太子妃教育は、行きません。では、さようなら」
私は、笑顔で言う。
「はぁ? 」
殿下は、きょとんとして、困惑した顔をしている。
私は、カーテシーをして、殿下の前から、スキップして去っていった。
やったわ! 婚約破棄よ。
もう、立ち振る舞いも気にしなくていいのよ。スキップだってできちゃう。
淑女の鏡になんてならなくていいのよ。
王太子妃教育をもうやらなくていいのよ。
誰にでも優しく、落ち着き冷静で、謙虚でいる必要はないのよね。
いい子でなくていいのよね。
うわ~、嬉しいわ!
そうだわ、せっかくだから、殿下が言うように皆の人生の悪役令嬢になってみようかしら。
うふふ、やってみたかったのよね。いじわるを・・・・。
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