第137話

 ■□■


冒険者担当クラブ・ヤマモト視点】


 結局、装備の作成に一日掛かった関係で、フォーザインに戻ってきたのは、フォーザインを出立してから五日目のことだった。


 本体キングが新装備にこだわったせいで、随分と時間が掛かった気がしてならないよ。


 それだけの時間をかけただけあって、新装備はなかなかにイイ感じだ。


 ちなみに、装備一覧はこんな感じ。


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 【キャットイヤーローブ】

 レア:8

 品質:高品質

 耐久:1000/1000

 製作:ヤマモト

 性能:物防+56 (斬属性)

    魔防+32(全属性)

    【耐久削り】

 備考:巨蛇ヴリトラの外皮を利用して作られたフード付きの黒塗りローブ。軽そうな見た目と裏腹に高い耐久性と防御力を持つ。フードの猫耳が特徴的で可愛い。

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 【認識阻害の眼帯】

 レア:9

 品質:高品質

 耐久:1000/1000

 製作:ヤマモト

 性能:物防+1 (斬属性)

    魔防+1(全属性)

    【偽装】LvMAX

 備考:一見すると、触手が絡み合う絵柄が描かれた黒の眼帯だが、その実、オリハルコンでできた超貴重品。本来ならば、特殊な能力を付与することも可能なはずだが、その性能のほとんどを【偽装】スキルの一点に特化している。これを装備した者の前では、その相手を正しく認識できないことだろう。

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 【千代女の忍び装束(上下)】

 レア:7

 品質:高品質

 耐久:500/500

 製作:ヤマモト

 性能:物防+31 (斬属性)

    魔防+26(全属性)

    【回避】Lv5

 備考:敵対する者の意識を散漫にし、身躱し効果を強める忍び装束。その布面積は少なく、とても防具としての効果が発揮できるとは思えない。だが、異性相手にはその攻撃の鋭さを鈍らせることができる。

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 【弾滑りの手甲】

 レア:6

 品質:高品質

 耐久:700/700

 製作:ヤマモト

 性能:物防+56 (叩属性)

    魔防+44(全属性)

    【パリィ】可能

 備考:相手の攻撃をタイミング良く弾くことで、スキルを持っていなくとも【パリィ】が可能な手甲。熟練の冒険者に人気の一品。

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 【雲霞の脚絆】

 レア:8

 品質:高品質

 耐久:500/500

 製作:ヤマモト

 性能:物防+15 (刺属性)

    魔防+27(全属性)

    【悪路走破】LvMAX

 備考:まるで付けていることを感じさせないほどに軽い脚絆。これを身に着けた者は雲のように身が軽くなり、悪路を悪路とも感じなくなるという。

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 格好的には、猫耳ローブを着たちょっと色々と際どい格好の眼帯忍者って感じかな?


 エロカワを狙って作ったっていうより、攻撃を躱せるように、スキル盛々で忍び装束を作っていたら、こんな感じになっちゃったっていうのが正しいのかな?


 ほら、私って現在、大ダメージを受けると【肉雲化】が勝手に発動しちゃうでしょ?


 流石にそれは邪神感が強過ぎて、周囲も引くって気がついたんだよね。


 だから、攻撃はなるべく回避する方向性で……って思ったんだけど、【ヤマモト流】が回避系のスキルを攻撃アシスト系のスキルと判定してるらしくて、本体がスキルを取得することができなかったんだよ。


 だから、装備に付与することで、無理矢理スキルを追加してやろうって、忍び装束を作ったんだよね。


 なんで、忍び装束かって?


 ほら、忍者ってなんか回避とかクリティカルとかが高いイメージあるでしょ?


 本体もそれを意識して作ってたみたいなんだけど……作った後で、ちょっと露出多過ぎない? ってなったんだよね。


 ほら、この忍び装束――太腿丸出しだし、脇見せだし、胸元開いてるし、こんな格好でウロウロしてたら痴女じゃんってなっちゃって……。


 結果、全身を隠して、色香を紛らわすために猫耳ローブが追加されたっていうのが真相。


 後は、目立つ点としては、独眼竜よろしく眼帯が追加されたってことかな?


 フロートサークレットは本体が使ってるから、正体隠しの装備が不足してるんだよね。


 それで、なるべく身に着けてて、不自然じゃないし、外れなさそうな物ってことで眼帯になったみたい。


 私はロケットペンダントでもいいんじゃない? って言ったんだけどねー。


 本体が「和装メインなら眼帯でしょ!」と言って譲らなくてねぇ。


 まぁ、わかるけども!


 で、こうして、眼帯をしたちょっとエロカワな猫耳くノ一が誕生したわけなんだけど……。


 問題は格好の方じゃなくて、こっちの武器の方なんだよねー。

 

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【うごうご丸】

 レア:10

 品質:最高品質

 耐久:10000/10000

 製作:ヤマモト

 性能:物攻+971 (斬属性)

    【マインドブレイク】

    【ディスペア】

 備考:邪神がうごうご言いながら製作したとされる忍刀。この武器で斬られた場合だけでなく、武器に対して【鑑定】を行った者も精神に異常を来たすという。――深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ。byニーチェ

 ※【マインドブレイク】……状態異常にかかりやすくする混沌魔法。

 ※【ディスペア】……全状態異常を同時に相手にかける混沌魔法。

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 なに平和そうな名前付けて悪魔のような武器を生み出してるの?


 というか、これ、絶対に自分の肉片とか素材にして作ったでしょ?


 その発想が完全に邪神なんだけど?


 SAN値直葬な感じで、お手軽に武器を作らないで欲しいわー。


 これ、万が一、敵対勢力とかに奪われたら、目も当てられないんじゃないの?


 最終兵器的なものは、本体だけが持ってればいいのに、なんで私にまでこういうの渡すかなー。


 はぁ……。


 まぁ、貰っちゃったものは仕方ない。


 あんまり、出番がないように上手く立ち回るしかないのかな?


 腰の後ろに差してある、うごうご丸の柄を軽く叩きながら、私は【わりと雷帝】を解除して、フォーザインの街へと落下していくよ。


 さて、まずはツナさんでも探すかなー。


 ■□■


「ツナさん、お待たせー」

「……誰だ、お前?」

「私、私」

「俺にそんなに気安く話しかけてくるとは……ゴッドか? 格好も雰囲気もまるで違うが……」


 認識阻害の眼帯が機能してるようで何より。


 私が【レビテーション】でフォーザインの砂浜にゆっくりと着地して、周囲を見回してみたら砂浜で焚き火を熾している第一ツナさんを発見した。


 そして、近づいて声を掛けてみたら、先の反応だ。


 というか、ツナさんの装備がまた褌一丁に戻ってるんだけど? どういうことなの? 海のモンスターに破壊されちゃったのかな?


 まぁ、新装備もなかなかイイ感じで【偽装】してくれてることがわかったので、私としてはホクホクなのだ。今なら無料で装備を直しちゃうぐらいには御機嫌だよ!


「本当にゴッドになったゴッドか」

「ぐっ……」


 言われると思ってたけどさー。


 そうストレートに言わなくてもいいんじゃない?


「言葉に詰まるな。正解だと言ってるようなものだぞ?」

「どうせ、掲示板とかじゃ、私がゴッドになったとかで盛り上がってるんでしょ?」

「知らん。見てないからな」

「私も怖いから見てないけど」


 でも、まぁ、当たらずとも遠からずって感じじゃないかな? 知らないけど。


「だが、俺がお前をゴッドだと認識しても、世間がお前をゴッドだと認識するとは限らない」

「ごめん、ちょっと何言ってるのかわからない」

「俺とゴッドの間柄なら、言葉よりも確かな絆があるはずだ。それを示してみろ」


 絆……。


 私は猫耳ローブを深く被り直しながら、ツナさんの目を見る。


 ツナさんが何かを訴えかけるように、私の目を見つめてくる。


 ――その時、私に電流が走る!


「ごめん! 忙しくて、王都土産の食べ物は買ってこれなかった!」

「おのれ、偽物め!」


 私の真偽って、そこで判断するの!?


 でも、ツナさんと私の絆ってそれだけだもんね!


 EODとか特殊なモンスターを食べたいって理由だけで旅仲間してるだけだし!


 うーん。


 なんか、ツナさんの機嫌を直す、お土産とかないかな?


 土地もらったよーって言っても嬉しくないだろうし。


 あ……。


「山羊肉とか……、食べる……?」

「山羊か! 食べたことがないな! ジンギスカンは羊だしな! ……美味いのか?」

「さ、さぁ? 私は食べたことないかな……」


 ごめん、山羊くん。


 私の処世術のために、ちょっとだけ美味しい部位とか分けてくれないかな?


「ふむ、やはりゴッドだな。俺とゴッドの仲は不滅だ」

「食だけの関係って微妙だと思うけど……。とりあえず新鮮な食材になると思うけど、あんまり驚かないでね? 黒の仔山羊召喚!」


 私がMPを代償に山羊くんを呼ぶ。


 砂浜に魔法陣が展開し、そこからウネウネとうねる枝を持つ山羊くんがじゃーんと登場する。うん、相変わらず活きがいいね。


「コレなんだけど食べる?」

「…………」


 ツナさんからの返事がない。


 流石のツナさんも食べるのに躊躇うレベルなのかなと思って振り返ると……。


「気絶してる……」

「…………」


 流石のツナさんでも邪神の眷属はショックが大きかったみたい。立ちながら気を失ってるよ。


 というか、山羊さんがそういうスキル持ちなのかな?


 【鑑定】してないけど、【鑑定】した方が……はっ! 【野生の勘】が絶対にやめとけって言ってる気がする!


「うごうご」

「…………」

「うご?」


 なんとなく、うごうご丸の性能を思い出す。


 もしかして、山羊さんを【鑑定】した場合、私がピンチになったりする?


 そして、混乱した私がフォーザインの街で暴れ回ったりして……。


 ははは、まさかぁ。


「…………」

「うごうご」

「とりあえず、送還!」

「うご?」


 うん、臭いものには蓋をしようの精神だよ。


 どさっ。


 砂浜に仰向けに倒れるツナさんを放置しながら、さてどうしたものかと私は思案するのであった――。

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