第117話
というわけで、早速、選ばれし近接戦闘のエリートが【灰棺】と【黒棺】に乗り込むよ。
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[魔天狼]
今更だが、棺の上でバランス取るってムズくないか?
[山田]
バランス力が足りてないね。
[魔天狼]
なんだ、バランス力って……。
体幹的な話か……?
[TAX]
棺には縄を括り付けて、それを手首に巻きつけるんだ。
それで、大分乗りやすくなる。
[ささら]
これはなかなか難易度高いニャリ〜
[WSGM]
文字通り、括った綱が命綱か……。
そういえば、こういう時にアクセルたちがいないのは、どうしてだ?
[ミタライ]
アクセルくんたちは、Dr.と新しい航路を探して、今は王国中を巡ってるよ
[WSGM]
ネームド討伐のシステムメッセージの後に出た、例の奴か
[ミタライ]
うまくすれば、別の大陸に渡れるんじゃないかってことで、王都にいないんだけど……。
こんなことになるなら、残ってもらってた方がよかったよね……。
[山田]
いない戦力あてにしても仕方ないでしょー。
さっさと始めようよー。
あと、私の灰色の棺は操作に慣れてないから、ヒットアンドアウェイを繰り返す形になるけど、勘弁してね!
[ささら]
あ、それだったら、ニャリは黒の棺に乗ることにするにゃりー
[チック]
それなら、俺は灰色の方がいいかな。
ささらさん交換しましょう。
[ささら]
にゃり〜
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というわけで、戦闘開始前に少しだけゴタついたが、一斉に19の棺が空中に浮遊する。
あ、私がシャンプーを渡した黒い人も、棺に乗って一緒に飛ぶんだね?
一緒に飛ぶことによって、各棺の操作をやりやすくしてるのかな? やっぱり、自分の目で見ないと操作がし辛い部分もあるのだろう。
そして、黒い棺は空を自由に飛ぶ飛燕のように放たれ、私の操る灰色の棺は解き放たれた矢のように一気に加速する!
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[TAX]
思ってたより、Gが辛ぇ!
おりゃ!
[ささら]
殴っても全然手応えがないニャリ!
後、口に泥入ったニャリよ!
[ミタライ]
物防が270もあったからね。
普通の攻撃はそんなに通らないと考えるのが正解だろうね
[ささら]
防御無視系のスキル使うニャリ!
[TAX]
ミタライ、【必殺技】はどんなものだ?
そろそろ
[ミタライ]
もう、撃てるけど、1ゲージ削り切ってから2ゲージ目に突入した段階で発動した方がよくないかな?
僕の【必殺技】は丸々ゲージをひとつ吹き飛ばすから、今使うともったいなくて……。
[WSGM]
既に1ゲージの二割は削ってるからな。
戦闘に慣れるためにもゲージ一本を削ってから使うで良いんじゃないか?
[ささら]
ニャリのユニークスキル【コンボ補正】もあるニャリから、時間がかかった方が有り難いニャリ〜
[結衣が独尊]
おいおい、そっちはいいかもしれないが、こっちはMPキツイんだぞ……。
頼むぜ、本当に……。
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というか、その二割を削ったのはほとんど私で、みんなの攻撃では、ほぼほぼ削れてないからね?
これってもしかして、私がゲージ一本を削るまで、動きがないと言っているのと同じなのではないだろうか?
いや、それ、絶対に魔術チームがMP切れになって、リジェネを阻止できなくなるって……。
そうなると、私がリジェネ阻止要員になりつつ、ミタライくんの【必殺技】メインで、私も【半殺技】を当てて立ち回る未来しか……って、ガガさんの魔剣が使えない以上、それも難しいじゃん!
うーん。
ミタライくんとリジェネ阻止の魔術部隊の参戦はありがたいけど、そんな牛歩戦術やられてもなーといった感じ。
もっと、私はチャチャッと倒したいんだー!
とはいえ、現状のリソースでは派手に暴れるわけにもいかず、コツコツと【ファイアーピラー】を当てる地道な作業を繰り返すよ。
「【ファイアーピラー】」
ちなみに、【灰棺】の操作はまだ慣れないので、こう、デイダラが隙を見せたところで近づかせて攻撃させて、ヤバくなったら逃げてを繰り返してる状態だ。
なんだろう。
行ってー、戻ってーの動きを繰り返すのを見てたら、遊園地のアトラクションのバイキングを思い出しちゃったよ。
ほら、デカイ船の奴でさ。支柱を中心にぐわんぐわんとスイングするアトラクションがあるじゃん。
それを思い出しちゃったんだよねー。
で、そんな私の思考をトレースしたのか、【灰棺】もそんな感じでスイングし始めて……。
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[TAX]
ちょっと待て、気分悪くなってきた……。
[チック]
俺もです……。
酔った……。
[魔天狼]
山田、もうちょっと動きどうにかならないか?
[山田]
ゴメン、ちょっと変えてみる
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味方に被害を与えていくスタイル!
魔王軍四天王だからね! 仕方ないね!
まぁ、文句も出たので、こうPCとかのドライブを意識して、スッと出て、カチャンと戻るを意識してみる。
スライド移動するだけなんで、そっちなら文句は出ないみたい。
こう、スイングがいけなかったっぽい?
上下左右にGが一定の間隔でかかるのがいけないんだろうか?
なお、本家の【黒棺】の人は、ファ○ネル的に棺桶を飛ばしてるので、あっちはあっちでプレイヤーたちは大変そう。アバターじゃなきゃ、とっくの昔に握力を使い切って、湖に真っ逆さまに落ちてるんじゃないかな?
とりあえず、そんな感じで、魔術攻撃と物理攻撃の波状攻撃を行っていたら、なんとかHPバーの一本目を六割にまで減らすことができた。
でも、あと四本も満タンのHPバーが残ってるって考えたら、ちょっと吐きそうになるぐらいウンザリだ。
そして、四割削ったところで、新戦力投入。
なんか、五、六人が宙に浮かんだまま、湖の上をスーッと横滑りしていっては、すれ違いざまにデイダラにダメージを与えて駆け抜けていく。
それが、何度も、何度も行われているんだけど……。
なに、あのアトラクション? 楽しそう……。
アレがアイルちゃんが言ってた【フロート】とかいう奴なのかな?
橋の上では、アイルちゃんの一番の友達みたいな女の子が、なんか劇画タッチの顔になりながら、空中に浮かぶパーティーの方向や速度を調整して送り出してるみたい。
その女の子が、何もない空間……多分、透明な板? みたいなのがあるのかな?……を押したと思ったら、1パーティーがスーッと湖の上をスライド移動していき、そのままデイダラの側を掠めて、湖の対岸にまで飛んでいっちゃったよ。
うん。
あの絶妙な角度と速度を調整するためなら、あんな劇画調の顔になっちゃうのも仕方ないのかもしれないね。
【フロート】職人の朝は早い……ってナレーション付けたくなっちゃうもん。
そして、そんなのを見ていたら、私の視界の端にシステムメッセージが。
あぁ、まねっこ動物が【フロートやん?】を覚えるかどうかを聞いてきてるね。
というか、今回、みんながみんなユニークスキルを連発してるせいで、さっきから【まねっこ動物】のシステムメッセージが止まらないんだけど……。
これは、後でちゃんと吟味する必要があるね。
ちょっと早いけど、レイドボス戦を頑張ってる私への御褒美と考えて、後でじっくりと悩ませてもらおうっと。
あ、湖の対岸に着いたパーティーは【フロート】から降りて、走って橋まで戻っていくんだ? こりゃ、大変だ〜。
まぁ、一番大変なのは、絶対にフロート職人さんだとは思うけども。
で、手数が増えた結果、一時間ぐらいでなんとかHPバーを一本削り取ったよ!
みんな頑張った!
というか、思ったよりも有用なユニークスキル持ちが多かったのかな?
私の予想よりも早く削り取ったよ!
でも、もうガス欠みたいな人も大勢いそうだ。大丈夫かな?
ちなみに、私も浮いてるだけなら、と【わりと雷帝】から、【風魔法】の【レビテーション】に空中浮遊の動力源を切り替えたよ。
だって、現状、【ファイアーピラー】と【灰棺】ぐらいしかやってないんだもん……。
遠くから、チクチクやるぐらいなら、高速戦闘スキルである【わりと雷帝】は使わないよね?
で、デイダラのHPバーが一本なくなったと思ったら、体が動かなくなった。
むむむ?
あ、なんかムービー始まった?
私たちの目の前で、デイダラの体が一回り小さくなっていく。あら、突然のシェイプアップ?
見た目の感じでいうと、脂肪と筋肉を纏ったプロレスラーから筋肉ムキムキのマッチョマンになったといえば違いがわかるだろうか?
泥人形から、より人間に近い形にビルドアップされているみたい。
で、ムービー終わりに咆哮を行うわけなんだけど……。
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[TAX]
ミタライ頼んだ!
[ミタライ]
任された!
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ムービーが終わったと同時に、ひとつの【黒棺】が近づき、その上で格好良くポーズを決めたミタライくんが襲いかかる!
「我が渾身の力を込めて! 今こそ必殺の一撃を放つ時! 喰らえっ! エリミネーションセイバー!」
ミタライくんが放った【必殺技】があたり、ヒット箇所が急激な変形を繰り返したかと思うと――。
――ドカァァァァン!
派手な閃光を発して、デイダラの体が大爆発する。
普通なら、それでおしまいなんだろうけど、実際にはHPバーの二本目が弾け飛んだだけなんだよね。
これで、デイダラの残りHPはあと60万ってとこ?
まだまだ道のりは遠いなぁ……。
そんな風にしみじみしてたら、またムービーが始まっちゃったよ。
もしかして、また変形するのかな?
期待しないで待ってようっと。
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