第二章、Greatなんですか? Greatなんですよ。

第23話

 ガガさんに破門を言い渡されてから一日が経過したけど、あんまり実感の湧かないヤマモトです。


 どーも、こんにちは。


 あの後、ガガさんと「お互い頑張ろうね!」的にちょっと熱いやり取りをしてから、エヴィルグランデに戻ってきたんだけど、相変わらずヤマモト探しを行っている人が多いみたい。


 何か面倒くさそうだったから、思わずSPを使って【隠形】ってスキルを取っちゃったよ。


 このスキルは気配を消して、こちらから話しかけたり、アクションを起こさない限り、相手に気付かれることがなくなるスキルなんだってさ。


 ちょっと街中で、知り合いから声を掛けられ難くなるスキルっぽいから、少しだけ取得するのを躊躇ってたんだけど……良く考えたら知り合いってタツさんと一部のNPCぐらいしかいないから別に影響ないじゃんって気づいちゃって……結局、【隠形】を取得しちゃいました!


 ……なんでだろう。悲しいね。


 まぁ、それで、街に舞い戻ってきた私は『竜の微睡み亭』に寄って拠点を確保した後に、適当に商業ギルドに顔を出したんだけど、そこでミレーネさんに捕まっちゃって、現在、奥の錬金室で【再生薬】を作らされている最中だったりする。


 【再生薬】が万年、品不足ってのは本当の話みたいだね。作り手は逃さないよ? ってミレーネさんの顔に書いてあったもん。


「うーん」


 ちなみに、【再生薬】については速攻で完成済み。


 というか、【錬金術】のスキルで自動オートで作成すると、素材が集まって、ピカーって光って、【再生薬】がすぐに完成するんだよね。


 まぁ、品質はお察しさいあくなんだけど……。


 ちなみに、この状況、普通なら『依頼失敗待った無し!』なんだけど、私の場合は更に続きがある。


 はい。ここに取り出したるは品質良好な【再生薬】が二つ。


 ガガさんの時に作った奴の余り物だね。


 これを二つ並べたところに、品質が悪い【再生薬】をひとつ置いてあげると、


 ▶【バランス】が発動しました。

  【再生薬】の品質を均等にします。


 ピカーって光って、品質の悪い物が品質の良い物に変わる。


 多分、【バランス】さんが品質のバランスを調整して、悪い品質のものを良い品質に切り上げたってことなんだろうけど……。


 で、三つの良質な【再生薬】を並べた状態で、今度は二つの残念な【再生薬】を並べて――と、あとは倍々ゲーム。


 【再生薬】十五個の納品依頼はあっという間に完了してしまった。


 まぁ、材料はミレーネさんに集めてもらっているから、材料代を差し引くと依頼料は微々たるものなんだけど、それでも、この依頼を受けたのには二つの理由があったりする。


「難しいなぁ……」


 そう。私が今悩んでいるのは、B級になるためのC級の生産依頼についてだ。


 C級の生産依頼の確認を行いたかったというのが、理由のひとつ目だ。


 前回は【再生薬】を作るのでいっぱいいっぱいだったしねー。依頼内容を確認するためには、商業ギルドに寄る必要があったんだよ。


 ちなみに、C級の生産レシピについては、錬金室に籠もる前に全てを資料室で確認済みとなっている。


 けど、問題はそこじゃなくて、C級の依頼の難易度の方なんだ。


 視界いっぱいに広げたスクリーンショットで依頼の内容を確認しているんだけど、見たことも聞いたこともない素材の名前がいっぱい並んでいる。


 ワールドマーケットのメニューを呼び出して、素材名で検索するんだけど、ほとんどの素材が見つからない。


 そして、たまに見つかるも、値段がバカ高い!


 買えない程じゃないけど、依頼クリアのために依頼料以上のお金を払うというのもどうかと躊躇ってしまうほどだ。


「これって、もしかして、先のエリアの素材だったりするのかな……」


 森の中の素材はほとんどコンプリートしている私が、見たことも聞いたこともないというのは、その可能性が高い。


 いや、森の奥の奥までは行ってないから、正確には、全てを知っているってわけじゃないけど……。


 ちなみに、ガガさんの工房から更に奥まった森の奥の奥に、私は一度だけ足を踏み入れたことがある。


 そこで見たのは、明らかにジュラ○ック・ワールドな世界。


 恐竜が闊歩し、恐竜同士で弱肉強食の世界を演じていたりする。


 そして、その恐竜を平気で噛み殺す毒々しい色合いをしたサンショウウオというね。


 多分、アレが毒々サンショウウオなんじゃないのかな?


 とにかく、エリアを越えて、いきなり難易度が上がった修羅の世界を肌で感じたから、慌てて逃げてきちゃったんだよ。


 殺人熊マーダーベアとかの方が全然優しいレベル。正直、勝てるビジョンが見えなかったんだもん。


 …………。


 まぁ、修羅の世界の話はおいといて。


 やはり、B級のギルド会員になるためには、少しゲームを進めないとダメなようだ。


 恐らく、ゲームバランス的にエリア1、エリア2あたりで、D〜C級に上げさせて、エリア3、4あたりでC〜Bに上げさせようとするようなバランスなんじゃないの?


 いや、それだとA級に割とすぐ上がれることになっちゃうのか。


 もっと先にいかないとB級にはなれない……?


 というか、ガガさんの工房の近くの環境が既にエリア2、3相当だったとかもありそう……。


 だから、私が普通にC級になってるんじゃないの?


 辺境オブ辺境だったもんなぁ、アソコ。


 というわけで、理由その1が、商業ギルドの依頼を確認しようってことだったのに対して、理由その2の方なんだけど……。


 こっちは凄く単純で、ひっそりと誰にも邪魔されないところでスキルの確認がしたかったってだけの話なんだよね。


 その確認したかったというスキルのひとつがコレ。


====================

【魔鋼精製】

 消費MP:任意

 鉱物と魔力に慣れ親しんだ者が到る極致。

 魔力を媒体として、魔鋼を生み出す。

 消費した魔力量と選択した鉱物によって生産量が変化する。

====================


 書いてあることはシンプルなんだけど、実際に使ってみるとこんな感じ。


====================

 ▶【魔鋼精製】を使用しました。

  精製する鉱石を選択して下さい。

  ▶魔鉄

   ミスリル

   妖精鋼

   水晶鋼

   ヒヒイロカネ

====================


 何か、見たことない金属がいっぱいあるわけなんだけど?


 というか、ミスリルって結構お高いんでしょう?


 なのに、MP消費して作れちゃうってどうなのっていうね。


 市場価格を破壊できちゃうんじゃない?


 運営がそこまで考えて作っているのかまでは知らないけど、私的にはまたお金儲けの手段が一個増えたわけだ。ウシシって感じだよ。


 とりあえず、お試しでヒヒイロカネをMP1000を消費して等価交換(?)してみる。


 コロンと出てきたのは、私の指二本分くらいの棒。


 え。


 コレだけ?


「少なっ!」


 MP1000は結構奮発した方なんだけどなー。


 それでこれだけかぁ……。


 とりあえず、【鑑定】してみるかなー。


====================

【ヒヒイロカネ】

 レア:7

 品質:高品質

 性能:生産素材

 備考:魔力を多量に含む製法不明な伝説の金属。常に魔力を纏っているため、この金属を加工した装備品は魔力に対する強い耐性を持つことができる。一方で物理には脆く、他の金属と混ぜ合わせて使うことが推奨される。

====================


 うん。魔力特化型の鉱石……というか、金属っぽいね。


 【水晶鋼】は硬い、魔力沢山って感じだったから、一見すると劣化にも思えるけど、この指二本分の量の【ヒヒイロカネ】の周りからオーラみたいのが漂ってるのが見えるから、かなりヤバそうなのは分かる。


 魔力を秘めた装備を作りたい時には、この金属を沢山集めて鋳潰したりして、インゴットを作れば良いのかなぁ?


 それにしても、量がねぇ……。


「これだけ少ないと、全身鎧を作るにはどれだけの量が必要なんだろう? 【鍛冶】を行うと最初の量から更に減るしなぁ」


 ――あ。


 そこで、唐突に気付いてしまった。


「女戦士のビキニアーマーって、全然守るとこ少ないじゃんって思ってたけど、希少金属を使ってるから、面積が用意できてないだけだったりする?」


 お色気ウッフン的な感じじゃなくて、予算と素材の都合の関係だったりするんだろうか?


 となれば、私も集めるのが難しいとなれば、緊急手段として、ビキニアーマーを作って着るみたいなことがワンチャン――、


 ……無いね。


 そんな恥ずかしい格好出来るわけがない!


 MPは寝れば回復するんだし、私はコツコツ希少金属を集めていくよ!


 そういえば、C級の【調合】レシピの中に【マジックポーション】があった気がする。


 これも、素材が無いから作れないたぐいの奴だけど、作れれば【魔鋼精製】が一気に捗るね。


 うーん、未来に期待だよ。


 そして、問題のスキルパート2がコレ。


====================

【魔神器創造】〘奥義スキル〙

 消費MP:1000

 アイテムクリエイターの到る極致。

 魔剣、魔装、魔具の三種の生産を極めた者が開眼すると云われている。

 かつて、大陸を解放して回った勇者たちの一人が所持しており、その活躍の原動力となっていたと云われている。

====================


 うん。もう、何か説明を聞いただけで頭が痛くなるよ。


 ちなみに、これも使ってみたところ、目の前の景色が一瞬で切り変わって、アバター設定の時の宇宙空間に放り出されたんだよね。


 一面の宇宙。


 星の瞬きが綺麗だなーって思っていたら、


 ▶生産したいものを思い浮かべて下さい。


 目の前にそんな文字がいきなり浮かんできたので、私は何となく、たこ焼きプレートを思い浮かべたんだけど、そしたら、目の前にたこ焼きプレートのイメージが浮かび上がる。


 これ、もしかしてアバター設定の時と同じなのかな?


 デザインを変えようと考えたら、粘土のようにグニャグニャと変形できたので、同じかそれ以上の機能と見た。


 で、適当にいじり倒して、これでいいやと思っていたら、


 ▶アイテムに必要な機能を決定して下さい。


 って表示が出たんだよね。


 なので、自動で温かくなって、温度調節できる機能が欲しいって考えたら、


 ▶生産するには以下の素材が必要です。

  魔鉄*3

  獄炎草*2

  ※素材が足りません。


 って出たんだよね。


 そこで、私はスキルを解除キャンセルしたんだけど……。


 このスキルのヤバさ、分かってもらえたかな?


 このスキル、素材ありきじゃなくて、で素材を算出してるの。


 つまり、私が作りたいものを創造して、提示された素材さえ集められれば、何でも作れちゃうってことね。


 それこそ、シールドファ○ネルだって夢じゃない! ってわけ。


 …………。


 うん。普通に考えて頭オカシイスキルだ。


 どう考えても調整ミス。絶対ヤバイ奴だって、誰が考えても分かる。


 こんなスキルを持ってることがバレたら、絶対にどこかに監禁されて、一生、生産させられ続ける運命しか待ってないよ……。


 このスキルの内容を知った時は、ちょっと浮かれてたけど、背中に氷水を入れられたように一気に冷やっとした。


 便利なスキルだし、使い方を習熟するためにも使っていこうとは思っているんだけど、その存在を明らかにしちゃいけないんだろうなー、というのは何となくだけど理解出来ちゃったよ……。


 このゲーム、デスゲームなんかやってる場合でなく、緻密なバランス調整の方が必要だと思うんだけど、どうなんだろうね?

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