第2話
ゲーキョ! ゲーキョ!
はい、開始早々、森の中スタートなわけですが……。
「あれ? 人族じゃないと、始まりの町的な場所からスタートじゃないとか?」
どうやら人外は、始まりの町的な場所からスタートじゃなくて、何処ぞと知れない場所からスタートするみたいだね。
はい、絶賛森の中を彷徨い中の私です。
こんにちは。
さて、ゲームスタート前に、一応プレイヤー名も決めてました。アバター作成の時に項目があったから記載しておいたんだよね。
特に捻りもなく、ヤマモトです。
白銀の騎士なのに、ヤマモトっていうのは違和感が凄いけど、ゲーム内で凝った名前にするのって恥ずかしくない?
私は無理。
あと、この名前はペンネームでもあるので、きっちりデザイン関係で売名行為もしていこうかなという打算もあったりする。
さて、ゲームが始まったんだけど、何の説明もなく森の中を彷徨っているわけだけど?
森の中では虫とか鳥とかの鳴き声で溢れていて、なんとも言えない騒々しさに耳が痛い。でも、そんな音の騒々しさや、森の草いきれの香りなんかも凄いリアルで、実際に森の中を彷徨ってる感じがする。
「この木とかって……。おぉう、枝が折れる。破壊可能オブジェクトなのか……」
▶取得:【木の枝】
しかも、何かアイテムとしてゲット出来てるし。
自由度が凄いとか言ってたけど、本当にちょっとしたことでも、それは出来ませんって表示されないのは、凄いと思う。
むしろ、ちゃんと木に触れた感触もあるところが、今までのVRMMORPGとは一線を画していると思われる。
ただ、リアル指向寄りのゲームのせいなのか、チュートリアルもないのは不親切だけどね。
って、考えていたら、視界の端にヒントマークが出てきた。
えーと、『チュートリアルは街中で受けることが出来ます。まずは、近くの街を目指してみよう』ねぇ。
私、人間種族じゃないんだけど、街を目指しても混乱起きない? 絶対に問題あるんじゃないかなーと思うんだけど、どうなんだろう?
あー、もしかしたら、魔物種族の街とかもあるのかな? だったら、そこを目指せって感じなのかも。
とりあえず、ヒントを消化したら何か矢印みたいなのが現れたから、それを目印に歩けってことなのかな?
あ、またヒントが出てる。
えーと、何々? 道中ではモンスターが出ることもあります。ステータスが初期状態の方は、スペシャルポイントを割り振って、能力を強化しておきましょう……?
いや、チュートリアル前に、戦闘の可能性があるのはおかしくない? その戦闘のイロハを知る為にチュートリアルに向かうんだよね? 色々と順番がおかしいよ?
とりあえず、ヒントに従って、自分の能力を確認するためにもステータス画面でも開いてみるかなー。
何々、ステータスオープンと念じるだけで、簡単にステータスが開くらしい……おっ、開いた。
名前 ヤマモト
種族 ディラハン(妖精)
性別 ♀
年齢 0歳
LV 1
HP 170/170
MP 120/120
SP 30
物攻 22(+12)
魔攻 8
物防 25(+15)
魔防 25(+13)
体力 17
敏捷 5
直感 4
精神 12
運命 7
ユニークスキル 【バランス】
種族スキル 【馬車召喚】
コモンスキル なし
おぉぉぉ、硬い、強い! そして、ノロい!
物理攻撃力や防御力なんかは立派な(デザイン頑張った)鎧や剣を装備しているから、強いのは分かる。
後は、魔法系も割と使えるのは、妖精種だからなんだろうね。
その代わり、敏捷や直感が鈍いから、素早い動きや攻撃を躱すといった動きは苦手なイメージかな。
うん。純粋重騎士ですね、分かります。
HPもMPもそれなりにあるから、割と戦闘でもゴリ押しでどうにかなるかなー。
しかし、種族スキルとかいう見たことも聞いたことも無いものがあるんだけど?
何だろうね、コレ?
【種族スキル】
種族固有で使えるスキル。ドラゴンであればブレスなど。その種族が保有している特有のスキル。
なるほど?
つまり、私の場合はディラハンだから、馬車が召喚出来ると。
ん? 馬車を召喚して、それに乗って移動すれば、速度遅い問題も全て解決しない?
いや、そんなに上手くはいかないかな。
とりあえず、【馬車召喚】のスキルの詳細が見たいと願うと、次の文言が映し出された。本当に便利な機能だよ。
【馬車召喚】
消費MP:100
馬車を召喚し、標的に死を宣告する。
※スキル実行後、二十四時間位内に標的を定めて、死を宣告して下さい。
その標的を【馬車召喚】後、二十四時間位内に倒すことが出来れば、【馬車召喚】のスキルが終了し、馬車と内部の棺桶(簡易セーブポイント)が消滅します。
標的を倒せなかった場合には、【馬車召喚】から二十四時間経過後に、HPに100%のダメージを受けます。
「何というピーキーなスキル……」
一度使ったが最後、誰かに死の宣告をして、相手を倒さないと、私が死んじゃうらしい。
なんて使い勝手が悪いスキルだ……と思っていたけど。
「良く考えたら、死の宣告に制限は無いわけだから、別にフィールドモンスター相手に死の宣告をして、倒せばオッケーだよね?」
つまり、死の宣告をして相手を倒さない限り、二十四時間乗り回せる乗り物が手に入ったとも考えられるわけだ。
いやー、凄いね、ディラハン! めっちゃ便利!
しかも、馬車の中にある棺桶は簡易セーブポイントらしい。
至れり尽くせりとはこのことか!
いや、待てよ。
棺桶が簡易セーブポイントなら、もしかして馬車の中はセーフティエリアになっているんじゃない?
「ちょっと試してみよう。【馬車召喚】!」
私が、そう叫ぶと同時にデンドロ○ウムみたいなデカい馬車が現れる。
うん。森の中を走ることとか全く想定していないデザインだ。
いいんだもん! デカくて格好良いデザインにしたかったんだもん!
森の木々を圧し折りながら現れた馬車の内部に乗り込むと、これまた簡素というか、内部は随分とすっきりとしたデザインになっている。
うん、モチーフとしては、近未来型の宇宙船の内部を意識しているので、滑らかな曲線と金属の融合が随所に見られる形になっている。
あと、馬車にはあるまじきコンソール画面のようなものも付けてある。
ちなみに、このコンソール画面は元々は馬車に付属していた首なしの馬であった。
それを、姿形を散々改良して、コンソール画面に変更して、馬車を自走式にデザインし直したのが今の姿である。
むしろ、鎧のデザインよりも、馬車の大改造に時間を使った程だ。その分、馬車操作は楽に出来るけど。
▶セーフティーエリアに入りました。
「おぉう、予想通り、馬車の中はセーフティエリアかー」
セーフティエリアとは、その内部にいる限り、一切の攻撃行為が無効になるという場所で、そこではモンスターも仕掛けてこないし、PKもすることが出来ないという、一種の無敵ゾーンのことである。
「ここでなら、いきなり戦闘になることもないし、今の内にスペシャルポイントでも振っちゃうかなー」
スペシャルポイントとは、ステータス画面に表示されたSPという奴で、このポイントを使用することでステータスを上げたり、新たなスキルを覚えたりすることが可能らしい。
というわけで、早速、スペシャルポイントの使い道を考える。
「問題は、特化にするか、バランスにするかだなー」
現状の私のステータスは、硬くて強いけど、遅いというハンデを背負っている状態だ。
多分だけど、このステータスだと速い相手には攻撃が当てられずに一方的にボコボコにされると思う。
そういう相手には、パーティーを組んで弱点を補ったりすれば良いんだろうけど、正直、人付き合いが苦手な身としては、パーティーを組むこと自体が凄くハードルが高かったりする。
「パーティー前提のビルドだと、ガチガチのタンクにするのも手なんだけど……。パーティー組める気がしないし……」
そうなると、バランス型か?
でも、ここまでタンクに偏ったステータスだと、バランス型にするのが凄く勿体ない気がするんだよね。
「うーん、ステータスにポイントを振るんじゃなくて、必要そうなコモンスキルで何を取るか考えようかな?」
コモンスキルは、誰もが取れるスキルで、冒険に役立つスキルなどが山ほど揃っているのが特徴だ。
勿論、無条件で取れるものばかりではなく、条件を満たさないと取れないものや、取得するのにそれなりにポイントを払わなければならないものなどもあるが、基本的には安いポイントで専門分野の技能が取得出来るというのがウリである。
とはいえ、スペシャルポイントも無限に使えるものでもない。
基本は、レベルアップ時にレベルに応じて貰えたり、新たな発見や称号を取得したり、上級職に
「スキルを取ると言っても、戦闘職を邁進するか、支援職を選ぶか、それとも生産活動をするかで、随分と変わってくるからなー」
いや、人外選んでる時点で、戦闘職一択じゃないの? と思ったアナタは浅いよ?
むしろ、人外イコール戦闘職って思い込みがあるから、人外のプレイヤーは戦闘系のスキルに傾向すると思うんだよね。
だから、野良でやる場合には、需要のある支援型のスキル構成にしておくってのも、一つの手だと思うのよ。そうすると、まぁ、私のコミュニケーションスキルが低くても、引く手数多になるってわけ。
まぁ、人外同士でパーティー組むことがあるのかって、そもそもの疑問はあるけどね。
あと、同じような理由で生産職も有り。
人外系のプレイヤーに武器やアイテムが必要なのかと問われると、要らない人もいるだろうけど、リザードマンやらゴブリン、オークといった人外は、武器を使って戦ったりするわけだし、決して需要が無いわけじゃないんだよ。
あと、このゲームにはワールドマーケットっていう機能があって、プレイヤーだけがアクセス出来て、そこで売買取り引きが出来る機能があるんだ。
つまり、人間系のプレイヤーにも売りつけることが出来るので、作ったアイテムは多分腐ることは無いと思う。
そうなると、本職の血も騒ぐし、生産職になろうかなーという気にもなってくる。うん、ステータスは圧倒的にタンク寄りなんですけどね。
「よし、生産系のスキルを取ろう! でも、何を取ろうかなー?」
生産系といっても沢山ある。
その辺の草から薬を作り出す【調合】だとか、物質を変化させて新しい物質やアイテムを作り出す【錬金術】だとか、武器防具を作り出す【鍛冶】だとかね。
この辺は、三大生産スキルとしても有名だ。
まぁ、三つ全部に手を出しても良いんだけど、一番やりたいのは【鍛冶】かな?
デザインに直結している気がするしね!
でも、良いものを作るには良い素材が無いとだし、【錬金術】も一応取っておこう。
とりあえず、私は【鍛冶】と【錬金術】のコモンスキルを選択して、空中に出てきた取得ボタンを押す。
二つのスキルでスペシャルポイントを4ポイントほど使用。
まぁ、必要経費よ、必要経費。
▶【鍛冶】スキルLv1を取得しました。
▶【錬金術】スキルLv1を取得しました。
うんうん。これで、モノ造りが出来そうだね。
▶【バランス】が発動しました。
スキルのバランスを調整します。
▶【調合】スキルLv1を取得しました。
……うん?
「いや、何勝手に【調合】スキルを取得してるの!?」
慌ててステータス画面を開くも、そこにはSPが26の文字。良かった。どうやら、見間違えだったみたいだ。勝手にSPを2使って【調合】を取得されたのかと思ったよ。
そのまま自然にステータスを消そうとして、私の視線はコモンスキルの欄で止まる。
ある……。
【調合】スキルがコモンスキルに追加されているんだけど……。
え〜? どういうこと〜!?
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