超能力者のいる村。

ボウガ

第1話

昔々ある小さな村に、超能力者の少女が住んでいた。


少女は予知的な超能力をもつとされる。彼女は予知が降りてくると人々にあるヒントである短い言葉を残す。だが良い行いをするものにしか、その言葉の意味が理解できないという。


条件付きであるが、たぐいまれなる“超能力者”ということで、村の人々はその少女を大事にした。少女は自分で自分の能力を人々にこう説明していた。受け取る人のみならず、自分自身よい事をすると文字が思い浮かぶ。だが人々に語らぬ事もあり、実際彼女の能力は、夢に関するものだった。少女は少女が織りなす言葉が《夢》を根拠にしたものであること、超能力は断片的ではあるが、予知夢であることを秘密にしていた。少女はそれを“言葉がおりてくる”と言い換え人々に伝えていたのだ。それは身内に、“自分の秘密を守り、自分を守れるように”と教えられたからだったが。



 少女は幸福に生きていたが、ある夜男が忍び込み、少女を誘拐して、自分の部屋に隔離してしまった。村人が説得するも、一か月ほども男は少女を隔離した。その間、男は目的を少女にだけ話した。男の願いは、病気の母親を生きながらえさせること、だが男の村での身分は低く、だれもきいてくれず、少女と会う事すら許されなかった。そこで少女を隔離し、少女を脅し目的をはたそうとした。少女は犯人に同情し、犯人のために力を使おうとするが失敗した。来る日も来る日もがんばったが失敗した、その犯人に、一か月後、ある秘密を打ち明けた。2か月もすると、男の病気の母は亡くなった。男は目的をおえる事ができなかったので、少女を解放したが、罪に裁かれた。素直に彼はその罪を全うした。禁固7年。




 しばしの歳月がすぎ、その頃幸運の予言をするという少女のうわさは村から村、国中にひろまっていた。国王がそれを耳にするとすぐ少女は村から、宮殿に招かれた。ここで暮らすがよいと王につげられ、しばらく予言をして豪華絢爛な生活をしていたが、しばらくして王は少女に王子との結婚するように指示した。結婚前にして、少女は王子の部屋に招かれ、何不自由ない生活を与えられた、だがそれは彼女の望むものではなかった、与えられる一方で、夫になる人に何をしてあげる事もできなかった、食事の用意も、織物を織ることも、風呂に入るのだって、誰かがやってくれる。そのせいかその直後から、少女は夢を見る事ができなくなる、つまりは、“言葉”の予言も行使することができなくなり、能力を発揮することができず、王は少女にあきれ果てて彼女をを村に返した。




 とぼとぼと悲しい気持ちで村へ帰ると、村は変わり果てていた。少女がいなくなり、誇るものもなくなり、どんどんと貧乏になっていったのだ。少女はこの村の未来など考えておらず、自分のしたことに絶望した。少女が村人に発見され、つかまると、少女は地下に閉じ込められてしまった。村人は少女を二度と逃がさないときめ、地下牢にとじこめたのだった。そんなところへ、数か月ほど放り込まれていたある日、数人の村人が、地下の扉を開きこういった。

 『もう出ていいぞ、すまなかったな』

 自分を幽閉した荒っぽい村人とは違う様子だった。


 『なぜ出してくれたのですか』

 少女が尋ねると

 『少女は、ひどい環境では能力が発揮できない』

 と進言したものがあるそうだ。それはある男で、聞くにかつてある罪を犯した罪人だった。だが実は最近彼は、村長の隠し子だったという事がわかった、その上罪を反省して以降、勤勉に働いたため、村で信用を得て、村のためにいくつかの重要な仕事を任されているのだという。少女は男にたすけられ、数週間ぶりに牢をでて、その男をみた、その男は見覚えがあった。それはかつて少女を誘拐したあの時の男だった。男はいう。


 『あのとき、いつものように能力を使えなかった理由を私はなんとなく知っているきがします、強要されるとあなたは能力を発揮できないのですね、あなたは私に夢の事を話、人が善い行いをし、自分も善い行いをするときにだけ良い夢が見られると話した、それはどうやら事実らしい、あなただけが善い行いをしても、意味がなく、周りの人間もいい行いをしなければならない、周りの人間がいい行いをしても意味がなく、あなたもいい行いができる場所でなくてはならない』

 少女ははっとした。

 男がにっこり笑っていると、近くにいた村長がかけつけ、自分の名を名乗り、非礼を詫びた。

 『済まない事をした、これ、早くはなしてやりなさい』

 という。どうやら村の若い衆の暴走で少女はつかまっていたらしかった。村長はいう。

 『あなたが幸福になればいいとおもって私はこの村をでて王のもとへいくのをみおくった、小さいころから貴女はみなしごだった、みなしごだった貴女を助けたのは我々村人ではない、村人に差別されていた老婆だった、超能力が見つかってからは大事にしたが、老婆は村はずれにいたままだった、私たちは彼女に一度我々は自由を与えたではないか、彼女は本来自由の身だ』


 そして、かつて少女を誘拐した男はいう。


 『どこへでもすきなところへおいきなさい、あなたの力を縛ることがない場所へ』 


 占い師はすでに他界しており、少女はどこへでもいけると知ってずいぶんと迷いはしたが、しばらくその村に滞在するうちに、かつて生まれ育った村が荒れ果てているのをみていてもたってもいられなくなり、少女は村にのこり、生涯、人々がよい《夢》をみられる事ができるようしようと決心したのだった。


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超能力者のいる村。 ボウガ @yumieimaru

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