第30話 対決、砂の巨神 【後編】
エゲツナールと
2人は勝利を確信していた。
「ぎゃははは! 無能のデインがぁああ!!」
「ほほほ! 動くんじゃあないざんすよ。少しでも動けば子供の命はないざんす!」
ふむ。
動くつもりは毛頭ない。
なぜなら、
「お前たち、さっきも言ったがな……」
「なんの話ざんす?」
「俺の生徒は優秀なんだよ」
「しまった! エゲツナール後ろだぁああああ!!」
ダークの叫びは遅かった。
エゲツナールの後ろにいたのはマイカとロロア。
ロロアが股間に蹴りを入れる。
「えい!」
「あぎゃああああああッ!!」
飛び上がったエゲツナールに声をかけたのはマイカである。
「元はあんたの生徒でしょ。それを人質にするなんてね。最っ低!」
と、頬を打った。
「ぶべらぁああああああッ!!」
やれやれ。
「これで人質はいなくなったな」
再び、
蝶ホワイトストーンで終わらせてやる。
「ク、クソが! そうはいくかよ!!」
それは
やれやれ。
蝶が飛ばされては
そうなると、他の方法だな。
さて、どうやって倒そうか。
「死ね! デイン!!」
お断りだな。
俺は
単純な攻撃を交わすのは、注意さえしていれば可能だ。
しかし、それも時間の問題。俺の体力が尽きれば終わってしまう。
いち早く、奴の核を破壊する方法を考えなければならない。
奴は核である【巨神の心臓】を凄まじい速さで移動させられる。
通常のホワイトストーンでは瞬時に粉砕して再生してしまうからな。
もっと、他に奴の動きを封じる方法があればいいのだが……。
「砂が再生するのが面倒だよな」
『それ故に無敵の巨神と言われているのだ』
うーーむ。
無敵ねぇ。
「でもさ。無敵ならどうして眠りについたんだ? この世界にずっと君臨すればいいじゃないか」
『うむ。確かにそうだな。
「14日間は無敵だったんだな。その日に何があったんだろう?」
『きっと、人類を滅亡させたのだと思う』
「……いや。それだと子孫が残らないはずだ。俺たちが存在するには理由があるんだよ」
『なるほど』
砂の巨神が眠りにつくきっかけ……。
砂の……。
砂……。
「もしかして、雨かな?」
『雨?』
「14日後に雨が降った。砂は雨によって固まった。そう考えれば辻褄が合うよ」
『うむ。流石は
ここからだと川は遠いしな。
大量の水を手に入れる方法……。
「そうだ!」
俺は
「伸びろ!」
凄まじい速度で棒は地下へと伸びる。
『
ここいら周辺は森が豊かだ。
川も池もないのに、木々だけが生えている……。
「ぎゃははは! どうしたデイン、降参かぁあ!?」
手応えはあった。
この感触……。間違いない。
棒を元に戻す。
「降参するのはお前かもな」
ゴゴゴと地響きが鳴り響く。
「な、なんだ地震か? デイン。貴様、何をやった!?」
「お楽しみの時間さ」
「何ぃ!?」
棒を抜いた穴から大量の水が噴き出した。
ドラゴンは目を見張る。
『こ、これはどういうことだ?』
「地下水さ。何キロ下なのかは検討もつかないけどな。いくらでも伸びるお前のおかげで探すことができた」
『なるほど! その手があったのか! 流石は
大量の水を浴びた
「ぎゃああああああ! 溶けるぅううう!! 俺の体がぁあああああああ!!」
「砂だらけだから丁度いいだろう。地下水で洗い流せよ」
「くぅうう! 泥になると再生できない!!」
やはり弱点は水だったようだな。
さて、止めを刺しますか。
「ク、クソがぁああああ!! ただで死ぬもんかぁあああ!!」
「サンドバースト。ククク、この技は巨神の出せる最大の技だ。これを喰らえば一溜まりもあるまい」
「無駄だ。ここいら一帯はレナンシェアのダブルディフェンスによって守られている。お前の攻撃は通じない」
とはいえ、奴の
最後の力をあの球体に込めているのだろう。
まだ、膨れ上がっている。
「先生、安心してくださいですわ! なんとか、私たちだけで持ち堪えてみせますわ!!」
「ミィたんがんばる!!」
レナンシェアに
あそこまで潜在
しかし、それでもサンドバーストの力には及ばない。
この会場にサンドバーストが放たれるとまずい。俺の力をレナンシェアと合わせて会場を守るのが得策か。
俺の
彼女と合わせて40万位上。なんとか防げるギリギリのライン。
防御に専念しながら奴を倒す。
「観念するんだな、ダーク」
「うぐぅ……。だ、だったら貴様を後悔させてやんぜ」
「…………」
「俺様を敵に回したことをなぁあああ!」
……早く終わらせよう。
嫌な予感がする。
俺は
狙いは頭部にある巨神の心臓。
棒を伸ばそうとしたその時である。
「はぁぁああッ!!」
「検討違いの方向に……何故だ?」
「ははは! ただで死ぬもんか! 王都の人間を道連れにしてやる!!」
そうか!
王都に向かって投げたのか!
ダークはわからなかったんだ。
サンドバーストの
奴はレナンシェアのダブルディフェンスで防御されるのを恐れた。
だから、王都に向かって投げたんだ。
サンドバーストは凄まじい速さで王都に向かう。
衝突すれば王都は滅ぶ。
「ぎゃははは! 俺を怒らせたからこうなるんだぜぇ! デイン! お前のせいで大勢の人が死ぬんだぁああああ!!」
しまった!
俺が移動するには時間が足りない。
瞬時に40万以上の
会場が騒つく。
全員が王都に向かうサンドバーストの行方を目で追っていた。
命中すれば王都民300万人が死ぬ。
「先生!
そうなんだ、圧倒的
強大な
しかし、それをするには時間が足りないんだ。
象火も
「ぎゃははは! 全員、道連れだぜぇえええええええええ!!」
みんな諦めそうになったその時である。
「
あれは……。
さっき、
偶然……。いや奇跡か。
伝説の勇者は運も最強だと聞いたことがある。
ミィ……。お前は本当に伝説の勇者になるのかもな。
「その蝶を取り込め! その蝶は味方だ!」
「う、うん!」
彼女は蝶を両手で優しく包み込んだ。
その瞬間。
凄まじい
ミィの
その
「せ、先生! 凄まじい
俺の烏眼はレナンシェアの
「王都を守るんだ!」
「はい! ダブルディフェンス!」
それは
つまり、蝶ダブルディフェンス。
遠く離れた王都全体を包み込んだ。
サンドバーストは蝶ダブルディフェンスに当たって大爆発を起こす。
その影響で巨大な地震が起こった。
それはこの会場の大地をも揺らす。
やがて、それが治まると、王都が光の膜で包まれて、無事なことが確認できた。
良かった……。遠巻きだが、建物に被害は出ていないようだ。
「ダーク。悪は滅びるって、言葉知ってるか?」
「クソがぁああああ!!」
「あの世で学ぶんだな」
「ぎゃあああああああああああああッ!!」
ダークの悲鳴と共に
と、同時。
砂に変えられた観客は元の姿へと戻る。
「あは!
「凄いですわ! 伝説の巨神を倒してしまいましたわ!!」
「お前たちの協力のおかげさ」
「でも、あの
「だな。俺とお前たちとで王都を守ったんだ」
「あは!
「ああ」
「じゃあ、なでなでして」
「ふふふ。よしよし。偉いぞ」
「えへへ」
レナンシェアがソワソワする。
「あ、あの……。
「ああ。お前のおかげさ」
上目遣いでなでなで待ちをしているようだ。
「よしよし」
「うふふ……。嬉しいですわ」
続いてロロアとマイカがやってくる。
「僕も活躍したんだよ」
「あ、あたしだってねぇ。役には立ったんだからぁ」
やれやれ。
「じゃあ、お前たちもだ」
俺が2人の頭を撫でると、彼女らは満足そうに喜んだ。
そんな傍ら、俺たちから遠ざかる男が1人。
「はわわわわわ! ま、まさか、
そういえばコイツが残っていたな。
「逃げるが勝ちざんすぅうううう!!」
そうはいくか。
「ホワイトストーン」
石化の呪い。
その脚はチョークになる。
「ひぃいいいいいッ!! 脚が動かないざんすぅうううう!!」
「さぁて、お前にも教育が必要だな」
「あ、
「大勢の命を狙っておきながら、権利を主張できる立場かよ」
俺は
「ひぃいいいいいいッ!!」
エゲツナールの尻に向かって振り下ろす。
「教育ッ!」
ビシィイイッ! とけたたましい音が場内に鳴り響く。
「あぎゃあああああああああああああああッ!!」
奴はそのまま気を失った。
それを見ていたブリザ国王は立ち上がる。
「見事だ!! 流石はデイン!! 素晴らしい!!」
国王の指示により、エゲツナールは衛兵たちに連行された。
投獄されて、その罪を償うのだろう。
こうして、事件は解決した。
当然、発表会の続きなんてできるわけもなく。後日、正式な続きをやることになった。
翌日。
俺たちは王都にあるリザーク城に呼ばれた。
今回の事件を解決した報酬を受け取る為である。
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