第28話 対決、砂の巨神 【前編】

〜〜デイン視点〜〜


『災いが来た』


 俺の耳に、リザークの守護者ドラゴンが語りかける。

 腰にぶら下げた指示棒。 聖竜の指示棒ドラゴンポインターが喋っているのだ。


「ドラゴンが目覚めた元凶か?」


『そうだ。我はこいつと戦う為に千年の眠りより覚めた』


 俺の眼前ではエゲツナールが古代魔法を詠唱している。

 連動して、勇者ダークが豪風と共に砂になる。


「どうせ犯罪者になるんならよ。俺の体を巨神にくれてやる!」

 

「ほほほ! いい心がけざんす! 勇者の体が巨神を復活させるざんす!」


 ダークは砂の巨人に変貌した。

 体高30メートルはあるだろう。

 そいつはエゲツナールを拾うと肩の上に乗せた。


砂巨神サンドゥームの力で学園を消滅させるざんす!」


 ほぉ。 砂巨神サンドゥーム

 見たことも聞いたこともない敵だな。

 俺の一族、 魔神魔技族アーククラフターはここいら一帯にいるモンスターは知り尽くしているんだがな。


砂巨神サンドゥームと言っていたが、ドラゴンは知っているか?」


『1億年前に存在した砂の巨神だ。その 魔源力マナは計り知れん』


 なるほど。

 確かに、 魔神技アークアーツ 烏眼でも奴の 魔源力マナを測ることはできないようだ。

 黒いモヤが掛かって見えない……。


蟹竜キャンサードラゴンなんか目じゃないざんす! 倍以上の力があるざんす!」


「指名手配のお前が、どうして 蟹竜キャンサードラゴンの強さを比較に出すんだよ?」


「ほほほ。あいつはあーしが出したからざんす! この学園を破壊するためにね!」


 やれやれ。

 あれはこいつの仕業だったのか。


「やるざんす!  砂巨神サンドゥーム ダーク! 観客を砂にするざんす!!」


「うぉおおおお! やってやるぜぇええええ!!」


  砂巨神サンドゥームが巨大な腕を振ると、豪風が発生した。

 それは1万人の観客を襲う。

 豪風を浴びた観客は瞬く間に砂と化した。


「しまった!」


 風だけで人を砂にするのか!


「先生! あの風は強力ですわ! わたくしの打撃防御魔法、ディフェンスが破壊されてしまいました!」


 機転を利かせたレナンシェアであったが、その防御は無効だったようだ。


 あの砂の攻撃は呪いの類なのだろうか?


「ドラゴン。解呪の魔法で観客を治せるか?」


『不可能だ。あれは巨神による特別な攻撃』


 やれやれ、面倒だな。


「じゃあ、あの砂になった観客を戻す方法はあるのか?」


砂巨神サンドゥームを再び封印すれば、砂になった者たちは元に返る』


 なんだ、あるのか。


「そんな簡単な方法が」


 俺は直様、飛び上がり、 砂巨神サンドゥームの腕に蹴りを入れた。


魔神技アークアーツ 牙狼!」


 の蹴りバージョンだ。

 普段の5倍の破壊力!


 しかし、サンドゥームの腕は固かった。

 まったくビクともしない。


 普通の攻撃じゃダメか。

 なら、牙狼を強化してやる。


魔神技アークアーツ 象火!」


 からの、


「牙狼!」


 今度は更に5倍の攻撃。

 つまり、5×5で25倍の牙狼だ。



ドバッ!



  砂巨神サンドゥームの右腕は粉砕した。


「やった!」

 

 案外もろいな。

 

「ぎゃあああ! 俺様の腕がぁあああ! デインのクソがぁあああ!!」


「ほほほ。安心するざんす。あーたは無敵の巨神ざんす。念じるだけで修復が可能ざんすよ!」


「マジか? あ、本当だ! 俺の腕が……」


 周囲の砂が 砂巨神サンドゥームの腕を修復する。


「ぎゃははは! 見たかデイン! 貴様の攻撃は効かねぇえええええええ!!」


 やれやれ。

 完璧に元に戻ってしまった。


「喰らえデイン! ひまわり組のガキもろとも、貴様を砂に変えてやるわ!」


 いかん。

 この風を喰らえば砂になる。


  魔神技アークアーツ 兎走で回避だ。


 俺、1人ならこれで余裕なんだがな。

 そういうわけにもいかない。

 象火によって更にスピードを強化だ。

 25倍の速さでみんなを回収する。


 俺は4人の生徒を連れて豪風を回避した。


「ありがとう先生てんてー!」


 避けた風は観客席へと向かう。

 再び1万人が砂になった。


 避けると観客が砂になってしまう……。


「先生! 今度は魔法防御のマジックディフェンスを張ったのですが、それも破壊されてしまいましたわ!」


 さっきは打撃攻撃低減のディフェンス、次は魔法攻撃低減のマジックディフェンスか。

 呪い攻撃でもないしな。どうやったら奴の攻撃が防げるのだろう?


主人マスター 砂巨神サンドゥームの攻撃は魔法打撃なのだ。両方の特性がなければ攻撃は防げない』


「なるほどな。ミックスさせりゃあいいのか!」


「そ、そんな魔法、できませんわ! 教わっていませんもの!」


 いや、レナンシェアは優秀だ。

 この発表会でその活躍を見てきた。


「お前ならできるさ」


「先生……」


「俺の 魔源力マナは防御と攻撃に回したいんだ。観客の防御はお前に頼めるか、レナンシェア?」


「わ、わたくしにそんな魔法が使えるかどうか……」


「使えるさ。俺を信じろ」


「先生が教えてくれますの?」


「勿論だ」


「……わ、わたくし、やってみますわ!」


 打撃と魔法。両方を防御する魔法。

 その名はダブルディフェンス。

 Sランクの高等魔法だ。


「右脳と左脳で詠唱を済ます。ミックスすれば完成だ」


「む、難しいですわ!」


「お前ならできるさ」


「で、でもぉ……」


「諦めるな。魔法が得意な勇者になりたいんだろ?」


 ダークの高笑いが響く。


「ぎゃははは! ダブルディフェンスを使うつもりか? そんなガキに使える魔法かよ!」


「やってみなくちゃわからんさ」


「Sランクの魔法を、たかだか10歳のガキが使えるわけがねぇだろうが! 砂になっちまえ! バカどもがぁああああ!!」


 再び豪風が発生する。

 あれを喰らえば砂と化す。


「せ、先生! 詠唱は完了しましたわ! でも、圧倒的に 魔源力マナが足りませんわ!!」


 そうか、度重なる防御魔法の使用。

 レナンシェアの 魔源力マナは底を尽きていたのか!





「ぎゃははは! 死ねぇええええええええ!!」





 豪風が俺たちを襲う。

 紫色をした半透明の大ききな壁が、豪風を遮断した。


「何ィイイ!? 俺様の風を防ぐだとぉ!?」


 レナンシェアの後ろにはミィが立っていた。

 その高めた 魔源力マナをレナンシェアに移しながら。


「ミィたん。 魔源力マナ移しができるようになったんだもん!」


「ミィさん。助かりましたわ!」


 ダブルディフェンス成功だな。


「ダークよ。俺の生徒は優秀な勇者としての素質がある。巨神の力を使うお前とは格が違うな」


「ふざけんなぁ! クソがぁああ!!」


 ふっ。

 生徒よりも問題児か。


「お前には教育が必要だな」

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