猫歴73年その2にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。家族が殺そうとするから悲しい。
エリザベスとルシウスが猫クランに加入したからチームワークの訓練をしていただけなのに、全員で猫型・大になったわしを殺そうとするから涙目。しかし相手はわしだ。最強の猫には触れることも難しい。
と思っていたけど、猫クランはチームワークが良すぎ。白銀の武器だけは危険なので避けて、痛くもない魔法は無視して受けていたけど、途中から魔法を目眩ましや足元を狙って動きを阻害して来やがった。
特にベティとニナの変な魔法がうっとうしいことこの上ない! なんかバニーガールが抱きついて来た!? どうやってるんじゃ!?
そのせいで、攻撃を避けきれずに白銀の武器が
エリザベスはステルス機能搭載。隠れてわしの背後から近付き、気功猫パンチでわしの丸いモノを強打したのはさすがに効いた。
もうここからは、わしも手加減抜き。大物相手にしか使わない【吸収魔法・球】で完全防御。しかしこのままでは猫クランは何時間でも攻撃して来るから反撃だ。
【殺気の剣・肉球バージョン】で、プニッと反撃。外からは見えない錯覚だが、大きな肉球を喰らった人はちょっと幸せそうな顔だ。何度も喰らわせてやったら殺意が削られて、全員武器を投げ捨てるのであった……
「「「「「モフモフ~~~!!」」」」」
ラストはわしのモフモフに埋もれて完全勝利となるのであったとさ。
皆が正気に戻ったら、痛い思いをしたわしの説教。さすがに毛皮に血が付いているのだから、全員で誠心誠意頭を下げていた。やりすぎた自覚はあったのでよかった。
でも、反省会ではわしに傷を負わせた人には拍手喝采。ベティとニナも一番役に立ったと表彰されていたから、反省の色が見えない。戦闘の反省会だからわしの傷は関係ないのですか。そうですか……
キャットタワーに帰ったら、猫クランメンバー以外の家族にグチグチ。そしたら猫クランメンバーはめちゃくちゃ引かれてた。最愛の夫で父親で祖父で兄弟を殺そうとしたもんね。
この日のわしは、王妃の中で唯一わしを殺そうとしなかったエミリの腕の中で安らかに眠ったのであった。
それからも猫クラン研修を続けたら、もうこれでいいやとエリザベスとルシウスを連れて、猫市にあるハンターギルドで2人を登録する。
「えっと……猫をですか??」
「わしも猫にゃけど??」
「えっと……前例はあるみたいですけど、偉い人の推薦状がないと、どうにもこうにも……」
「わし、王様にゃんだけど??」
「本当だ!?」
「王様の顔、忘れたにゃ??」
「すいませ~~~ん!!」
受付嬢は王様みずからやって来てもなかなか登録してくれなかったので、直接ギルマスの部屋を襲撃。ソファーにふんぞり返り、テーブルに足を乗せるという超行儀の悪い格好で先程のやり取りを説明したら、ギルマスは土下座だ。
猫クラン加入者は、王様権限を使って漏れなくB級からスタート。猫クラン研修を受けた者の戦闘力ならB級ハンターを圧倒するから、これは職権乱用じゃないよ?
こうしてエリザベスとルシウスは、無事ハンターになったのであった。
猫兄弟が猫の国国民になってもハンターになっても、わしのやることは変わらない。猫クラン活動の合間に、王様の仕事はないのでお昼寝。3匹の猫で寝ているからか、あまり
たぶん、撫でたいのだろう。前までは猫が1匹しかいなかったから取り合いになるから、仕事をしろと言われていたのかも?
そんな日常を過ごしていたら、あまりにも家族が撫でて来るから今日はわしだけエスケープ。町に出てブラブラし、たまにはお洒落なオープンカフェに入ってみた。
そうして道行く人を見ながら「コーヒーのいれ方がなってないな」とか思っていたら、妙にキラキラした金髪の青年が青いマントをたなびかせて近付いて来た。
「ついに見付けたぞ! エセS級ハンター!!」
そのキラキラ青年に懐かしいモノを感じて「不思議だな」と思っていたら、急に指差して怒鳴るので、わしは後ろに誰かいるのかと振り向いた。
「お前だお前……猫王のことだ!!」
「にゃ? わしにゃ??」
「そうだ! 王様だからってやりたい放題しやがって! 不正にそれまでなかったS級を作らせ、その座に就いたことは知ってるぞ!!」
キラキラ青年の言っている意味がわしにはサッパリだ。
「いや、ハンター協会のヤツらが、勝手に作って勝手にわしをS級ハンターにしたんにゃ。苦情を言うにゃら、ハンター協会の会長に言ってくんにゃい??」
いつの間にわしがS級になったかと言うと、わしも本当に知らない。いつの日か、ハンターギルドに顔を出した時にハンター証を渡されたらS級と書いていたのだ。
「B級から勝手に変えやがって」と怒りながら質問したら、その理由はわしの功績ポイントが異常に高かったから。
それなのに手続きしてA級にも上がらず功績ポイントをドブに捨てていたから「これでは他のハンターが弱く見えてA級に上げられない」とか会議で話し合ったんだとか。
それに
せめてA級に上がってくれとハンター協会の会長から直々にお願いされたけど「面倒」と断っていたら、勝手に猫パーティ全員をA級に上げられ、そのリーダーのわしはS級にされたのだ。
だから大変な時はちょくちょく呼び出されるようになり、シャーマンの仕事はなくなったよ。シャーマンのために取って置いたのに、かわいそうに……
「噓つけ~~~!!」
そんな経緯を知らないキラキラ青年はうるさいな。まったりティータイムしているのがわからんのか?
「だからにゃ。苦情にゃらハンター協会に行けにゃ~」
無駄な押し問答は面倒なので、わしはもう逃げてやろうかと思ったけど、お会計がまだだったのでレジに向かう。
「逃げるのか!?」
「お金払うだけにゃ~」
「そんなこと言って逃げるつもりだろ! 決闘を申し込む! 男だったら逃げられないだろ!!」
わしは男でも猫だから逃げても一向に構わないけど、決闘なんて言うバカは久し振りに見たので受けてやろう。
「わかったにゃ。これ、釣りはいらないにゃ。置いておくからにゃ~?」
とりあえず千ネコを皿の下に挟んで置けば、コーヒーの倍はあるから問題ない。わしはトコトコと歩道に出た。
「わしが勝ったら、もう絡んで来るにゃよ?」
「フッ……俺様に勝てると思っているとは、笑止!」
「いや、笑ってにゃいで答えろにゃ。負けたのにまた来たら、不敬罪で一生ブタ箱に放り込むからにゃ」
「なっ……脅しとは汚いぞ!?」
「脅しじゃにゃくて、猫の国の王様に不敬働いてるんにゃから、当然のことにゃ。いまを放免にしてやってるんにゃから、感謝しろにゃ」
「くっ……負けたら近付かないと約束しよう……」
今ごろ王様にケンカ売ったことに気付くとは、どこまでバカなんだか……
「なんだそれは? そんなモノで決闘をするつもりか??」
わしが袖の中に開いた次元倉庫から滑り落とした竹刀を握ると、キラキラ青年はこれにも不満があるみたい。
「残念にゃがら、人間相手にはこれが最大級の武器にゃ。これで負けたとしても文句は言わにゃいから、そっちは真剣使ってくれていいからにゃ」
「そんな恥ずかしいことできるわけないだろう! 俺はこれで相手してやる!!」
キラキラ青年がアイテム袋から取り出した物は、たぶん刃を潰したソード。竹刀より強いけど、これより弱い武器なんてないみたいなので、それで結構。
わしは近くにいた少年に「はじめっ!って言うだけでいいよ」とお願いして審判をしてもらう。
「は、ははは、はじめっ! にゃっ!!」
少年の噛み噛みで必要のない語尾が付いた開始の合図で、わしはダラリとした構え。カッコイイじゃろ?
その
「お前、その剣、誰に習ったにゃ?」
打ち合いもしていないのにわしが驚いているので、ギャラリーは不思議そうな顔。実は何もしてないように見えて、脳内で先の先と後の先のやり取りを一瞬の間に三度繰り返したから、わしは驚きを隠せないのだ。
「職権乱用でS級になったと思っていたが、なかなかやるのだな」
「答えになってないにゃ」
「いいだろう。教えてやろう!」
キラキラ青年はマントを
「俺様の剣は、高祖父が
自己紹介されて、わしの奥底に眠っていた記憶が蘇った。
「にゃ~んだ。どっかで見た顔だと思っていたら、バカさんの曾孫にゃんだ~。驚いて損したにゃ~」
「バカさんじゃない! バーカリアンだ!!」
「その反論の仕方、バカさんそっくりにゃ~」
「バーカリアンだと言ってるだろ!!」
バーカリアンとは東の国の、自他共に認めるトップハンター。その昔、自分が最強とか言ってわしに何度も絡んで来た人。いつも適当にあしらって、ちゃんと戦ったのは一回のみ。それも引き分けで終わらせてやったのだ。優しいじゃろ?
「まぁバカさんの血筋にゃら、侍の剣を使えてもおかしくにゃいか」
「バカさんでも侍の剣でもない! バーカリアン流剣術だ!!」
バーカリアンが猫の国に来た時に、またわしに絡んで来たから「宮本に勝てたら考えてやる」と押し付けた記憶がある。それ以降見なかったから、負けたんじゃね? 興味もなかったから勝敗は聞いてないな。
「まぁどっちでもいいにゃ。かかってこいにゃ。アホのにゃにがし君」
「アーホノルドだ!!」
ちょっと挑発して左手でチョイチョイ呼んであげたら、アーホノルドはキレて飛び込んで来た。しかし頭の中は冷静なのか、先の先からわしの後の先を引き出し、それに合わせての後の先!
「ギャアアァァ~~~!?」
しかし、倒れたのはアーホノルド。わしはアーホノルドの後の先に合わせて【殺気の剣】で体を縦に真っ二つしたのであった……
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