猫歴70年その1にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。ドッキリは嫌い。
アンジェリーヌ女王の退位を本人から聞いたのだから、今回はドッキリは前もって回避。英雄卿の仕事というかカメラマンは辞退できなかったので、その日を待つしかない。
それからはいつも通り、狩りほとんどお昼寝の生活をしていたわしだが、さっちゃんのことが気になるのでシリエージョに会いに来たテイで、しょっちゅう顔を出している。
「ねえ? 私だったらお昼寝を密告しないと思ってる??」
というか、わしはさっちゃんがゆっくりしている時間を狙ってやって来て、エリザベスとルシウスの間でお昼寝しているのだ。
「聞いてる!?」
「ゴロゴロゴロゴロ~~~!?」
猫型・小で寝ているんだから、聞いてるワケがない。激しくモフられてわしは起こされた。
「急にモフったらビックリするにゃろ~」
「リータたちに密告していいの?」
「さっちゃんは、そんにゃことしないとわしは信じているにゃ」
「もうあそこにいるんだけど……」
「にゃんですと!? この度は、申し訳ありませんにゃ~~~!!」
リータたちが来てると聞いたのでは、わしは土下座。猫型のままだから、ただの伏せ。これで許してもらえたかとゆっくり顔を上げたら、さっちゃんがケラケラ笑ってた。
「ハメやがったにゃ……」
「アハハ。あ~。おかしい。シラタマちゃんは相変わらずね~。アハハハハ」
「笑うにゃ~~~」
「ゴメンゴメン。私のことを信用してくれてありがとうね。私は絶対に言わないと約束するから許して」
「絶対だからにゃ~? 約束破ったら、もう撫でさせないからにゃ~」
わしがさっちゃんを信用している理由は、さっちゃんはわしを撫でたいからわざわざ密告するワケがないと知っているから。なんだったら自分がお昼寝する時は、わしたちに埋もれて苦しそうに寝る変態なんだもん。
しかし急に起こされた上にドッキリを仕掛けられたわしは、ドッキドキでお昼寝してられないから、さっちゃんの膝の上で世間話をしていた。
「あ……リータたち……」
「またにゃ~? もう引っ掛からないにゃ~」
「いや、私じゃないからね? それだけは信じてね?」
「だからさっきの今で、引っ掛からないにゃ~」
「「へ~~~……」」
さっちゃんはドアのほうを見て言い訳しているからわしはドッキリだと思ったけど、声が聞こえた方向を見たら、ドアの隙間にリータとメイバイの顔が縦に並んでいたからめっちゃ怖い。
「シラタマさんはここで何をしてるのですか~?」
「いや、これは……さっちゃんと世間話をにゃ……」
「猫の姿で膝に乗ってニャー?」
「さ、さっちゃんがこの姿がいいって言うからにゃ……」
「「お昼寝してたでしょ!!」」
さっちゃんはわしの味方になってウンウン頷いてくれたけど、2人には通じず。そもそもシリエージョが「パパ、最近サンドリーヌ様の部屋でよくお昼寝してるけど、知ってる?」とチクッていたんだとか。
そんなことを知るワケがないわしは嘘をついたこともあり、いつもの倍はこっぴどく怒られたのであったとさ。
その日は、首根っ子を掴まれてキャットタワーに連行されたわしは帰ってからも怒られていた。
「まったく……サンドリーヌ様にまで迷惑掛けるなんて……」
「シリエージョちゃんも呆れてたニャー」
「も、申し訳ありにゃせん……」
わしだって罪悪感はあるので平謝り。でも、ちょっとぐらいわしの言い分も聞いてもらいたい。
「さっちゃんも歳にゃろ? 最近弱気になってたから、ちょっと心配でにゃ~……」
「そうですか……前よりお痩せになっていましたもんね……」
「シラタマ殿は仲良かったもんニャー……」
「まぁこの世界では初めての人間の友達だからにゃ。できるだけ顔を見せてやろうと行ってただけなんにゃ」
「そうですか……」
「また寂しくなるニャ……」
ここしばらく知人の葬式はなかったからか、リータとメイバイも寂しげに
「私たちも行きましょうか?」
「うんニャー。サクラちゃんもインホワも連れて行ったら喜ぶニャー!」
こうしてさっちゃんの部屋は、わしたち猫ファミリーの来客が途切れないのであった……
「いや、来すぎじゃない? こんなに大勢で毎日来られたら、私、今にも死ぬんじゃないかと心配なんだけど……」
「「「「「にゃ……にゃははは……」」」」」
さすがにこんなに多いとさっちゃんは喜べないらしいので、わしが代表して多めに顔を出してお昼寝するのであったとさ。
さっちゃんのおかげでお昼寝時間の増えたわしがグ~タラしていても日々は過ぎ、ついに年末年始に行われるアンジェリーヌ女王、最後の誕生祭となった。
わしたち猫ファミリーは常にさっちゃんと行動しているので、さっちゃんはモフモフに囲まれて嬉しそうだ。さっちゃんが歩き疲れたらタンカに座らせてわしたちが運ぶから、どんなに遊んでも疲れ知らずだ。
そんな感じで各種出し物を見ていたら、最終日には猫クランのお仕事。バトルイベントの開幕だ。
まずは予定通り、イサベレVSシリエージョ&キアラの親子対決。アンジェリーヌが前もって親子喧嘩を
門限とかゲームの時間がどうのこうの言ってるけど……そんなつまらないことで殺し合いするワケなかろう……
シナリオの内容はつまらないが、バトルの内容はやりすぎ。最初は観客に見えるようにイサベレたちも手を抜いて戦っていたのだが、途中から白熱したのかマジの殺し合いに発展。
慌ててわしが止めに行ったけど、こちらもつまらないことで喧嘩中。冷蔵庫のプリンがどうのこうの、母親ならケーキを譲るべきとかどうのこうの。どうやらイサベレが母親らしい行動を取ってなかったらしい……
しかし、呆気に取られているワケにはいかない。わしは観客の目に見えない速度で動きつつ「お菓子ならいっぱい用意している」と説得。でも、どっちが負けるかはここへ来て大揉め。
結局、最後まで戦い切り、辛くもイサベレが勝利をもぎ取ったのであった。
「シリちゃんもキアラも強くなっていい試合だったんだけどにゃ~……やりすぎにゃ」
「「「ごめんにゃさい……」」」
闘技場は1試合目でボロボロ。観客も人智を超えた試合を見たか見えなかったからか、声も出せない事態。そんな周りを見たイサベレたちは、反省して謝るのであったとさ。
わしが至る方面に謝罪しながら闘技場を補強したら、次は猫クランどうしの試合。リータ率いる第一王妃組VSメイバイ率いる第二王妃組。どちらがわしの
第四王妃のコリスは第二王妃組にいるので、第二王妃組の人数を少なくしているらしいけど、そういうことじゃない。なんで第四王妃が第二王妃を応援して、第三王妃のイサベレは参加もさせてもらえないんじゃ……
シナリオには納得いかないが、今回は手加減が上手くできているので観客は大盛り上がり。両王妃に声援が飛んでるけど、幼い子供も見てるんだから卑猥な言葉はやめてください。
そろそろ誰かが倒れてもいい頃合いになったところで、何故かベティ&ノエルが魔法少女に変身。同じチームのオニタだけじゃなく、別チームのインホワやニナにもガム弾やら地雷弾、汚い魔法の数々を撃ちまくった。
それを皮切りに、バトルロイヤルに発展。皆は目の前にいる人間と戦い、どんどん倒れて行く。この事態にはわしも焦りながら、倒れた子供や孫を安全地帯に退避。
戦闘中のベティ&ノルンには何があったのかと聞いたら、オニタとインホワにチリチリパーマを馬鹿にされたんだって。本当かどうかその2人に聞きに行ったら、こっちはこっちで「ザコザコ」とベティ&ノルンに馬鹿にされたんだって。
その他にもバトルロイヤルになった理由を聞き取りしてみたら、悪口を言われたとのこと。ただ、悪口を言っていた人にどうしてだと問い
「これって……ノルンちゃんのせいじゃにゃい? アイツ、声色変えられるにゃろ?」
「「「「「かもしれないにゃ……」」」」」
犯人が判明したところで、マジの殺し合いをしていたリータとメイバイはダブルノックダウン。中央ではベティ&ノルンが勝ち名乗りを上げていたから、わしはコリスに頼んで尻尾ベチコーンッと、場外ホームランにしてもらうのであったとさ。
第二試合も最終的には闘技場がズタボロ。観客も開いた口が塞がらない。第一王妃と第二王妃のいざこざに紛れて、第四王妃がかっさらったもんね。いや、人智を超えた試合のせいだ。
またわしは各方面に謝罪しながら闘技場を修復したら、最後の試合。猫王VS日ノ本最強タッグだ。
2試合共に大盛り下がりしてしまったのだから、わしは何度も頭を下げてお願い。玉藻と家康は「わかっておる。祭りだからのう」と言ってくれたから手加減してくれるはずだ。
さすがはジジババ長寿トリオなので、力加減は絶妙。観客が目視できる速度で動き、派手な技と魔法で楽しませる。
そろそろ頃合いかと、アンジェリーヌの猫王勝利シナリオ破り捨てて、わしのトリプルノックダウンシナリオで締めようと戦いながら話をしていたら、空からベティ&ノルンが降って来た。
「みんな~? この3人、誰が一番強いと思う~??」
「ノルンちゃんは圧倒的にシラタマだと思うんだよ~」
「「なんじゃと~~~!?」」
「そんにゃ挑発に乗るにゃよ~」
そしてちょっと煽っただけで、玉藻と家康は激ギレ。最終試合は前のふたつとは比べられないぐらい激しくなり、闘技場では狭すぎたから上空で行われたので、誰も見れないのであったとさ。
「なんてことしてくれたのですか……」
「「「申し訳にゃい……」」」
疲れ果てて闘技場に落ちたら誰もいなかったから、城まで3人で謝りに来てみたけど、アンジェリーヌは激オコ。最後の雄姿を台無しにされたもんね。
「あのあと大丈夫でしたでしょうにゃ?」
「イサベレや猫家の人のおかげでなんとか……」
どうやら猫クランメンバーもやりすぎたと反省していたから、わしたちが上空で雷みたいな激しい戦闘を繰り広げている間に、場を収集しようと頑張ってくれたらしい。
何をやったかと言うと、サイン会。まさに伝説となりつつあるイサベレ伝説卿のサインは激レアなので、長蛇の列になったとのこと。現東の国筆頭騎士のシリエージョと、次期東の国筆頭騎士になるかもしれないキアラも人気だったらしい。
猫クランもサイン会はやったことがないので大人気。美少女に見える美熟女リータとメイバイの下には男が群がり、白猫インホワ、サクラ、ニナ、コリス、リリスの所には子供や女性。オニタには意外にも男の子が並んでいたそうだ。
その他の王族も、わしたちのために犠牲になって、モフられたり握手したり写真撮ったり、サイン書いたりモフられてくれたから、大盛況だったんだって。
「ベティが人気って、ホントにゃ~?」
「本当に決まってるでしょ!」
「ウソなんだよ。みんなノルンちゃん狙いだったのに、ユニットだからって同じ色紙に無理矢理サイン書いてたんだよ」
「なんでそんなこと言うの!? 2人で魔法少女マジカルベティ&ノルンでしょ~!!」
「前に、魔法少女卒業したとか言ってにゃかった?」
どうしてもベティ人気だけは信じられなかったので聞いてみたらこの始末。もうとっくに還暦過ぎているのに、魔法少女は卒業できないベティであったとさ。
アンジェリーヌ激オコの女王誕生祭は、壮大な音楽と光魔法花火で締められたら、来訪者は「なんだかんだで楽しかったね~」と笑顔で帰って行く。
わしたち猫の国組は、今年は映画の撮影がマストになってしまったから暗い顔。「あんなにやらかしておいて~?」っと、アンジェリーヌ、フランシーヌ、さっちゃんの女王連合に笑顔で言われたら逆らえなかったの。
それからしばらく経つと、フランシーヌ女王39歳の戴冠式。今回もわしがド真ん中でカメラを構えているから、貴族たちも「なんで??」って顔。女王に聞いてよ。
そんな中にアンジェリーヌが登場し、続いてフランシーヌが現れる。この模様は、全世界に生放送されているんだって。
新女王フランシーヌが王冠を被ると、この貴族だらけの笑ってはいけない戴冠式は滞りなく終了。場所を移動して、貴族だらけの華やかなパーティーの開幕だ。
「まさか孫の戴冠式まで見れるとはね……」
さっちゃんはフランシーヌを見ながら涙を浮かべているので、同席しているわしはハンカチを手渡した。
「長生きしてよかったにゃろ?」
「ええ。アンジェの時は情けない姿を見せられなかったから、心置きなく泣けるわ」
「だよにゃ~。孫の立派にゃ姿は、一際グッと来るよにゃ~。にゃ~~~」
「シラタマちゃんの孫じゃないでしょ。泣きすぎよ。はい、ハンカチ返すわ」
「それじゃ足りにゃいからタオル使う、にゃ~~~」
「私が泣けないから泣かないでくれない?」
こうして戴冠式のパーティーは、さっちゃんとわしの涙が流れていても、夜遅くまで続くのであった……
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