猫歴29年その8にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。子供の笑顔に勝てるわけがない。
某・ユニバーサルな遊園地で遊び倒し、少し早めに出て大阪の繁華街で食い倒れたら、UFOに乗って東京のホテルに帰宅。
わしはまだやることがあるのでついて来たい人を募集したら、玉藻、家康、ペトロニーヌ、まったくいらないノルンが手を上げた。3人は
「本当に楽しくて、年甲斐もなくはしゃいでしまいましたのよ。死ぬ前に、これほど素晴らしい地に来れて、本当に感謝しかありませんわ」
ここに来た目的は、世界中のマスコミの前で感想を言うだけ。ペトロニーヌの感想に拍手が送られている。
ちなみにその他の感想は割愛。手紙を司会に渡して、あとで発表してもらう。多すぎるもん。時間が足りないから仕方がない。ま、どうせ書いてることは、動画と遊園地ぐらいだしな。
ここで一番人気は、もちろん元征夷大将軍、徳川家康。信長や秀吉といった有名武将の質問ばかり聞かれていたので、わしが割り込んで止めた。
「今まで秘密にしてたんにゃけど、徳川家の史実をまとめた物を天皇家に渡してあるにゃ。後日発売されるから、その日まで待っててにゃ~」
これは、今回の迷惑料。徳川家には歴史をまとめた物を作らせ、わしが直接インタビューした話も載っているから、歴史好きからしたらかなり面白い本になっている。
このわしが超面白かったから、間違いないはずだ。家康には執筆料をけっこう取られたけど……てか、わしは記者じゃないっちゅうの。
記者からの質問が止まったら、やっと家康の感想だ。
「正直言うと、徳川家があそこまで落ちぶれていたことは悲しく思う。しかし、それを超えるほど、この日本は素晴らしかったぞ。これほどの国を作ったこと、天晴れじゃ!」
家康が気分晴れ晴れの表情で褒めると、大きな歓声が起こった。だが、玉藻がマイクを握ったら、その騒ぎはピタリと止まった。
「そう緊張するな。前回のようなことは言わんからな」
そう。前回はめっちゃ日本批判したのだから、記者は構えていたのだ。
「本当は、前回も凄く楽しかったんじゃぞ。不甲斐ない面が多かったから、小言を言ってしまっただけじゃ。じゃがしかし、その小言ひとつでここまで盛り返したのじゃ。さすがは日ノ本と同じ民……
玉藻が拍手で締めると、日本国民は安堵した声から歓喜の声に変わったそうだ。そこにわしがマイクを握ったら、また記者は構えた。玉藻より酷いこと言ったもん。
「ノルンちゃんだよ~!」
でも、ノルンにマイクを譲ったから、ずっこけていた。
「ノルンちゃんが遊べるような遊園地も作ってほしいんだよ~。あと、ノルンちゃんみたいな高性能のロボットも作ってほしいんだよ~。次来る時までにお願いなんだよ~」
「てにゃこと言ってるけど、聞かなくていいからにゃ?」
「邪魔するならブッコロなんだよ~!」
「マスターに攻撃するにゃ~!!」
ノルンのせいで場が笑いに包まれてしまったので、わしがマイクとノルンを握っても記者は構えず笑顔のままだ。
「ま、わしは先の記者会見である程度言ったし短めに……やっぱりこの世界はいいよにゃ~。楽しいにゃ。物で溢れているにゃ。広いにゃ。うちの世界がここまで来るのににゃん年かかるかわからないけど、負けないように頑張るにゃ。いや、追い越してやるにゃ~。にゃ?」
「「おう!」」
わしが同意を求めると、玉藻と家康が力強く返事し、ペトロニーヌは大きく頷いた。ノルンはモゴモゴ言ってる。
「次回来るのは、UFOを使ってやりたいことがいっぱいあるから、たぶんかなり遅くなるにゃ。だからって、いまやってることはサボるにゃよ~? 権力者のみにゃさん。世界中の笑顔が減っていたら、わしはにゃにするかわからないからにゃ~??」
「「「「「また脅し!?」」」」」
「にゃ~はっはっはっはっ」
こうしてわしが大声で笑っているのに、記者たちは苦笑いで記者会見は終わるのであったとさ。
記者会見の帰りの車中では、ペトロニーヌと家康が「前回なにした?」と聞いて来たからとぼけていたら、玉藻に質問が行った。
しかし玉藻もやっちまった感があるのかわしと一緒にされたくないのかとぼけていたら、ノルンが答えたので、めっちゃ怒られた。やり過ぎみたいだ。んなもんわかってるからとぼけてたんだっちゅうの。
そうしてホテルに帰ったら、天皇陛下のお出迎え。わしの会見を見たから本心を聞きたいそうだ。
「ちょっとしたリップサービスにゃ~。今回は褒めたから、それで世界を良くする活動を緩めようとするヤツもいるにゃろ? まだ解決してないんだからふんどし締め直しておいたんにゃ」
「そういうことでしたか。確かにここ最近は、スピードが落ちていましたから必要ですね。何から何までありがとうございます」
「んじゃ、お別れパーティーといきにゃすか」
天皇陛下がここまで来ているのだから、盛大なパーティー……いや、もう夜も深いので、大人たちだけでお酒を酌み交わす。
でも、ララと天皇陛下、めっちゃ仲良くない? スタンプをやり取りする仲なんですか……スタンプってなに? メールみたいなモノって……なんで連絡先知ってるの!?
最後の最後で、2人の話し忘れが発覚。どうやらわしとの関係を怪しんで、天皇陛下がララを呼び出して愚痴を聞いてもらったとのこと。
それからは近況報告ぐらいはやっていたから、わしが来たら居場所を教えるようにと、天皇陛下はララからお願いされていたらしい……
「天皇陛下をメッセンジャーに使うにゃよ~」
「ほら? 今回は秘密裏に忍び込むって聞いてたから……あ、そうそう。あなた、緑綬褒章を頂いていたわよ?」
「にゃ? 日本を立て直したからにゃ??」
「猫じゃないわ。鉄之丈のほう。孫が『なんで?』って顔で立派に受け取っていたわよ。アハハハハハハ」
「どういうことにゃの~~~!?」
まさかそんなことになっていたとは知らなかったので、天皇陛下に詰め寄ったら、わしの前世の功績が素晴らしかったからだとのこと。
これほど多くの人助けしていたのに、人知れずやっていたとは驚きだとめちゃくちゃ褒められたので、恐縮しっぱなしだ。
「てか、にゃんで知ってるにゃ??」
「ララさんから聞きましたよ。フフフフ」
「お前もバレてたにゃ!?」
「これもあなたのせいよ~」
「いや、お前がつきまとったりするからにゃろ~」
この日は、天皇陛下からわしの善行を褒められまくったり、元夫婦喧嘩したりで夜が更けるのであった……
そして翌日早くに、わしたち平行世界人は皇居外苑にて、マスコミに囲まれていた。
「はいにゃ~。これがUFOですにゃ~」
「「「「「おお~~~」」」」」
平行世界9日目は、お別れ会。今まで隠していたUFOを見せてあげたら、集まった者から感嘆の声があがった。けど、わしは天皇陛下と別れの挨拶をしている。
「いろいろ手配してくれてありがとにゃ」
「これぐらいお安い御用ですよ。これで今生の別れとなりますが、また来られる時は天皇家を訪ねて来てください。必ずや力になりますので」
「あ~……そうだにゃ。これで最後だにゃ。最後の日まで、穏やかに過ごしてくれにゃ~」
天皇陛下から口に出されて、わしはもう会えないのだと気付いて涙を浮かべながら握手。そして軽くハグをして離れた。
「最後のワガママにひとついいですか?」
「にゃにかにゃ?」
「皇太子と、その息子をUFOに乗せてあげてほしいのです。いかがでしょうか?」
「それぐらいにゃら……でも、後悔してもしらないにゃよ~?」
「フフフ。それぐらいの覚悟はしてますよ。フフフフフ」
「みんにゃ~。この2人をUFOに案内してやってにゃ~」
「「いや、ちょっと待った!」」
天皇陛下のワガママに応えたら、皇太子殿下と青年から待ったが掛かったけど、2人はリータたちに囲まれてUFOの中に消えて行った。
たぶん、これから何かやらかすと思っているのだろう。天皇陛下も悪い顔で笑ってるもん。
「んじゃ、また夜に戻って来るにゃ~。まずは中国……は、小さくなったんだったにゃ。ユーラシア大陸の東側に行ってから、北半球と南半球に行くからにゃ~? UFOを見たい人は、ネットでどこを飛んでいるか確認してくれにゃ~」
それだけ言ってわしもUFOに入ると、UFOは無音で浮き上がり、大歓声を残して消えるのであった。
UFOが向かった先は、元中国上空。やや低く飛んで横断している。
「にゃはは。みんにゃ笑顔で手を振ってるにゃ~」
地上を映しているモニターには、UFOを見て手を振る人々。ここを飛んでいる理由は、あれだけやらかしたのだからその確認だ。
皆もその笑顔に安心した顔になり、子供たちはモニターに向かって手を振っているけど、皇太子殿下と青年は顔色がめっちゃ悪い。
「大丈夫にゃ?」
「「何しようとしてるのですか!?」」
「にゃ? さっきのは冗談にゃ~。でも、天皇陛下はそれを期待してるみたいだから、どっかの独裁国家をぶっ潰してやろうかにゃ?」
「「潰さなくていいです!!」」
冗談に冗談を重ねただけなのに、2人はマジで受け取っているから笑ってくれない。ララはめっちゃ笑ってるから、皇太子殿下たちの不幸も面白いみたいだ。
その2人の心配を他所に、UFOはゆっくり飛んだり速く飛んだり。チベット自治区や新疆ウイグル自治区の上空で止まり、ウクライナ東部でも止まったら、元ロシアを軽く見てから北上。
北半球の前回飛んでいない地域を軽く回ったら、極超音速で南半球にあっという間に移動。アフリカ上空を蛇行して抜けると、オーストラリアの都市で何個か停止。
北半球を回っている頃には皇太子殿下たちも何もしないとわかってくれたので、緊張も解けてモニター越しの人々の笑顔を微笑ましく見ていた。
そうしてインドネシア近辺の島々の上空を適当に飛びUFOを見せてあげたら、台湾国上空を経由して予定通り夜には皇居外苑に戻った。
ここではUFOは上空に待機し、わしと皇太子殿下と青年だけ光に運ばれて、地上に降り立った。
「長旅ご苦労様にゃ」
「いえ。とても有意義な旅になりました。このご恩、死ぬまで忘れません」
「にゃはは。大袈裟にゃ~」
皇太子殿下と握手を交わすと、わしは青年に手を差し出す。
「次にわしたちが来る時は、君が天皇にゃ。とてつもない重圧があると思うけど、その重圧に負けずに立派にゃ姿を見せてくれにゃ」
「はい。日本国民のため、シラタマ王の期待にそぐわぬ天皇になっていると誓います。次に来られた時は、必ず私がおもてなしさせていただきますね」
「にゃはは。その約束、わしも忘れないにゃ。期待してるにゃ~」
次期天皇陛下とも笑顔で握手を交わしたら、わしはマスコミに体を向ける。
「次はかにゃり遅くなると思うから、わしを知る人はそこそこ亡くなっているだろうにゃ。でも、わしは存在しているにゃ。子供たち……大きくなっても、わしのことを忘れないでくれにゃ。そして、わしの意志を継ぎ、世界を平和にしてくれにゃ。子供を産み、わしの意志を伝えてくれにゃ。さすれば、世界はいつまでも平和でいられるんにゃ~」
テレビカメラに向けて訴えたわしは、お辞儀する。
「では、これでさよならにゃ。短い間でしたがお世話になりにゃした。バイバイにゃ~ん」
その後、笑顔を向けたわしは、手を振りながらUFOから放たれた光の中に消えて行く。そしてUFOは、ここ日本から消え去るのであった……
その日、とあるタワーマンションの最上階……
「ねえ? 帰るんじゃなかったの??」
ララが怒りの表情で誰かに文句を言ってた。
「いや、みんにゃもう1日ぐらいインターネットで遊びたいって言うからにゃ……」
その誰かとは、わし。UFOは日本から消えたのだが、ララをニューヨークに送って行かないといけなかったから家にお邪魔したら、皆から泣き付かれて仕方なく滞在させてもらっているのだ。
「だったら日本のホテルでもよかったでしょ!」
「こんだけ広いんにゃから、ちょっとぐらいいいにゃろ~。ジュマルも久し振りだにゃ~。相撲でもやるにゃ?」
「おう! 今回は前みたいにはいかへんで!!」
「ジュマル~。やれやれ~!」
「エマもこの猫追い出すの手伝ってよ~~~」
というわけで、第三世界滞在は人知れず、もう1日延長してから帰ったのであったとさ。
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