猫歴15年~49年

猫歴15年その後その1にゃ~

 途中まで読まれていた方には申し訳ありませんが、予定通り猫歴15年は別ページに移動しました。

 続きは『アイムキャット!!!~異世界の猫王様、元の世界でやらかす記~』でお読みください。

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 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。猫の国の王様で間違いない。


「「「ゲームは~?」」」

「「「テレビは~?」」」

「ちょっと待ってにゃ~」


 王族全員がわしのことを電気屋さんだと勘違いしてるけど、これでも王様なんじゃ~~~!


 UFOの魔力が溜まったからさっそく第三世界の地球に行き、やらかしまくって数々の技術を手に入れて帰った直後から、皆はあの便利な暮らしを再現したいとうるさいので、わしは忙しい。

 王族居住区で、買って来たポータブルゲームとソフトを吐き出して、子供たちの処理は終了。

 テレビとプレイヤーとゲーム機をセットして、ブルーレイディスクとゲームソフトは山積み。雷魔道具の電圧を調べてコンセントを繋げば、大人たちもこれで満足。


 やっと一息つけると横になったら、さっちゃんに首根っこを掴まれて東の国へ。


 東の国王都のお城、王女殿下の愛の巣にお邪魔したら、ここでもゲームとテレビのセッティング。ブルーレイディスクとゲームソフトはレンタルだ。ちなみにエリザベスたちもここで見るらしい……

 これでわしの仕事は終わったと晩ごはんを食べていたら、女王の登場。さっちゃんは帰還の挨拶もせずに映画を見ていたので、めっちゃ怒られていた。


「シラタマ。私の部屋にもお願いね」

「にゃ~~~」


 そんな最先端技術を見せられた女王も欲しくなって、わしの首根っこを掴んで寝室に拉致。「ごはん食べてたのに……」とブツブツ言いながら各種セッティングをしてあげる。


「それで……平行世界の話を聞かせてくれる?」

「見ての通り、いま忙しいんにゃよ? さっちゃんから聞いてくれにゃ~」

「サティをここへ!」

「はっ!」


 さっちゃんを置いて来たのは失敗と悟った女王はイサベレを走らせる。でも、話すだけならイサベレでよかったのでは? あ、口下手なんですか。そうですか。

 しばらくして女王の寝室にさっちゃんが現れたけど、イサベレの肩に担がれているということは、映画に夢中で拒否ったのだろう。でも、これでわしの邪魔する女王は離れたので、作業に集中できる。


 そうしてセッティングが終わったら、適当な映画を流して晩ごはんの再開だ。


「何これ? 白黒よ? さっきの綺麗な映像は? 壊れてるんじゃない??」

「危ないからテレビに触るにゃ~」


 適当に選んだから古い名作映画が流れてしまったので、女王たちにちょっと説明。


「うちの世界では、まずは白黒映像から始まったんにゃ。音もなくてにゃ。字幕でにゃにを喋っているかを書いていたって寸法にゃ」

「ということは、古い物ってことね。どうしてそんな物を買って来てるのよ」

「選ぶのが面倒にゃから、全部買って来たからにゃ。この作品にゃんて名作だから、上映から半世紀経っても愛されていたんにゃ~」

「「「へ~~~」」」


 皆は納得して男女の出会いのシーンに見入っているが、注意事項を続ける。


「てか、うちは王族居住区に設置してるからオーバーテクノロジーを隠せるけど、2人はどうするにゃ?」

「「隠す??」」

「そりゃ、現時点で誰も作れないんにゃから隠すしかないにゃろ。こんにゃの知られたら、盗まれるかもしれないにゃよ~?」

「「確かに……」」


 今ごろ揉め事が起こると気付いた2人はああだこうだ言ってる。わしは懐かしい恋愛映画を見ながら今度こそ女王の部屋で夕食を。しかし、さっちゃんに高い高いされて邪魔された。


「タワーマンション作って! それで解決よ!!」

「無茶言うにゃ~~~!!」


 テレビを守りたいがために、さっちゃんはビルから建てろと超弩弓のお願い。さっちゃんが女王に説明したら、キャットタワーより倍も高いと知って超乗り気。


「言っておくけど、エレベーターが止まったら、階段を登って家に帰るの大変にゃよ? そのエレベーターも遅いから、最上階まで5分ぐらい掛かるかもしれないにゃよ?」

「「じゃあ、12階で!!」」

「どうしてもうちより高くしたいんだにゃ!?」


 ビル作りはテレビセッティングより大変なのだからわしはなんとか諦めさせようと頑張っていたら、通信魔道具に連絡が入ったので、「作れ~。作れ~」とわしの周りをグルグル回る2人を無視して出てやった。


「にゃんか国で緊急事態発生みたいにゃ。とりあえず、今日はここまでにゃ~」

「「くっ……」」

「えっ!?」


 女王とさっちゃんは国絡みだから折れてくれそうになったが、イサベレは驚愕の表情で大声をあげた。


「にゃ? どうかしたにゃ??」

「テレビ……娘が悲しむ……」

「あ~……すぐに部屋に案内しろにゃ~」


 イサベレのレア表情の理由は、やっぱりテレビとゲーム。わしとの娘が悲しむのでは、セッティングして帰らないわけにはいかない。

 かといってイサベレ親子の部屋は防犯面で心配なので、しばらく女王の寝室の横の部屋を間借りして、テレビやゲームを楽しむらしい……



 各種セッティングが終わったら、わしは転移魔法で直接キャットタワー屋上に転移。少し遅くなったので、慌てて王族居住区に飛び込んだ。


「にゃにがあったにゃ!?」


 わしの声を聞いたリータたちは、ゆっくりと振り返った。


「「「「「ウォシュレット~」」」」」

「にゃ……」


 なんのことはない。緊急事態でもない。ただトイレにウォシュレットが付いていなかったから、第三世界に慣れた皆は耐えられなかっただけであったとさ。



 ウォシュレットはわしも数える程しか取り付けたことがないので、明日やると言ってみたが子供がウルウルしているので、説明書を見ながら格闘。

 このキャットタワーの水は全て魔道具から得ているので、屋上にタンクから作る大掛かりな作業となってしまった。


 土魔法でチョチョイとタンクを増設したら、下の階に移って四苦八苦しながらウォシュレットを設置。何度か試して水漏れもなかったから、なんとか完成。

 しかし、うちのトイレは男子トイレに便器がひとつ、女子トイレに便器がみっつもあるので、ひとつだけでは許してもらえない。


 いちおういっぱい買って来たけど、暇潰しにゆっくり増やして行こうと思っていたのに……


 というわけで、猫の国工房長のたぬき女性つゆに手伝ってもらう。どこにいるのかと探したら、居間で寝転んでせんべいをボリボリしながら映画を見ていた。


「にゃんて高度にゃテクニックを使って見てるんにゃ……」

「ボリボリボリボリ」

「つゆ~。わしが話し掛けてるにゃよ~?」


 つゆはいつにも増して無視するので、隣に滑り込んでスリスリ。これで気付いてもらえたけど、押し返された。


「もういいにゃ! 新しい技術は教えてやらないにゃ!!」

「新しい技術!? すぐ行きます! すいません!!」


 最初から技術を出しておけばすんなり動いてくれたのに、無駄なことをした。わしはウォシュレットの取り付け方をつゆに見せ、一緒に作業を続けるのであっ……


「あのテレビって、どうやって作るのですか!?」

「いまはウォシュレットを付けてくれにゃ~」


 新しい技術を教えろと鼻息荒いつゆを押し返しながらなので、作業は遅れるのであったとさ。



 ウォシュレットは深夜2時に全て設置できたので、第三世界に連れて行けなかったキツネ女性お春と一緒に寝ようと思ったけど、寝室にはいない。同じく残ってくれていたつゆとも一緒に寝ようと思っていたのに、気付いたらどっか行ってた。

 仕方がないのでリータたちと寝ようと寝室のドアを開けたけど、リータだけでなく誰1人いない。なので音が漏れてる居間に入ったら、テレビの前で全員雑魚寝してた。


「にゃにしてるんにゃ~。もう深夜にゃ~。消すからにゃ~」

「「「「「見てるのに~」」」」」

「つゆ以外寝てたにゃろ!!」


 ここでも高等テクニック炸裂。テレビを見ながら眠るお父さんみたいなことを言う皆は、強引にテレビから引き剥がしてお布団に押し込むわしであったとさ。



 翌日は、第三世界から帰ったその日の深夜まで働かされたわしはお寝坊……と、行きたかったが、朝から東の国から緊急連絡が入ったので、眠気眼ねむけまなこを擦りながらお城に顔を出した。


「あっ! シラタマちゃん!?」

「にゃにがあったんにゃ~。ふにゃ~」

「こっちよ!!」


 お城の入口にはさっちゃんが待ち構えていたが、朝の挨拶もなくわしは拉致される。そうしてダッシュで連れて来られた場所は、王女殿下の愛の巣のトイレ……


「ま、まさか……」

「ウォシュレットが欲しいの~。シラタマちゃ~~~ん」

「「おじちゃ~~~ん」」

「「にゃ~~~ん」」


 そのまさか。さっちゃんたちもウォシュレットに慣れてしまったので、わしに取り付けさせようと嘘ついて呼び出しやがったのだ。しかも、子供や猫兄弟まで使ってわしに断らせないようにしてやがる。

 でも、エリザベスさんたちもウォシュレット使っていたのですね……


「しょうがないにゃ~。お兄ちゃんに任せるにゃ~」

「「おじちゃん。だいすき~」」

「「にゃ~ん」」


 子供から大好きと言われるのは嬉しいのだが、何度も言い直しているんだから、いい加減お兄ちゃんと呼んでほしいわしであった。



 ここもタンク設置からの大工事なので外からの作業から始まり、中の作業に移ったら視線が!?


「娘が……」

「あとからやるから待っててにゃ~」


 イサベレが覗いていたから、ウォシュレットをふたつ設置してからそちらのほうへ。そしてまた外から作業して、中のトイレでガチャガチャやっていたら、鋭い視線が!?


「シラタマ……」

「ランチぐらいゆっくり食べさせてくれにゃ~」


 女王も覗いていたので、追加発注。イサベレ親子用のトイレにひとつ設置したら、王族食堂でゴチになる。


「てか、女王はわかって欲しがってるにゃ?」

「食事の席で話せるわけないでしょ」

「あ、わかってるんにゃ……」


 わかっているなら皆まで聞かない。たぶんさっちゃんに使わせてもらったから知っているのだろう。ランチを終えて使い心地を聞いてみたけど、恥ずかしがって教えてくれなかったしな。


 女王の寝室にもふたつウォシュレットを設置したら、3時のお昼寝。夕方前に起こしてもらい、わしは猫の国に帰るのであった。



 それから3日……


 1ヶ月も国を開けていたので、わし1人で各地を回り、市長と10分程度の雑談。たまには顔を出しておかないと、リータたちや市長たちがブーブー言うから大事な仕事だ。

 特に問題らしい問題も起きていなかったので町をブラブラして帰ったら、美味しいベティとエミリのディナーだ。


「にゃあにゃあ?」

「ん?」

「別に怒ってるとかじゃないにゃよ? カレーは大好きだし、美味しいから別にいいんにゃけど、昨日もカレーだったにゃろ? 2日連続同じ料理が出たことがないから、ちょっと気になってにゃ。お弁当も今日は作ってくれなかったけど、やっぱり旅の疲れが出てるにゃ?」

「えっと……うん。疲れたよね~。エミリ?」

「え、うん。そうだよね~」

「それにゃらそう言ってにゃ~」


 疲れているなら仕方がないので休みをあげようとしたら、何故か断られた。ただ、まだ気になることがあるので、お春にも質問してみる。


「にゃんか今日は部屋が片付いていないように見えたけど、お春は調子悪いにゃ?」

「えっと……はい……」

「にゃんか変じゃにゃい?」

「変とは……」

「目を合わしてくれないにゃ~……そういえば、ベティとエミリもわしと目を合わせくれないよにゃ??」

「「「そんなことないにゃ~」」」


 ここでわしは怪しく思い、食卓にいる全員に視線を送ってみたら、漏れなく目を逸らされた。


「ひょっとしてにゃけど……帰って来てからずっと、テレビとゲーム漬けじゃないよにゃ?」


 わしが探りを入れたら、全員肩が揺れた。文字にすると「ギクッ!」て感じだ。


「え~……大人のみにゃさん。食後、ここに残ってくださいにゃ~」


 というわけで、子供が食堂から出て行ったら家族会議だ。でも、玉藻はいつになったら帰るんじゃろ……


「マジにゃ!? 一歩も外に出てないにゃ!?」

「「「「「はあ……」」」」」

「にゃんてこった!?」


 またしても、リータたちは引きこもり状態。第三世界に行っていないお春やつゆまで巻き込んでしまっている。だからこそ、手抜き料理と掃除だったのだ。


「ちにゃみに子供たちは学校に行ったよにゃ??」

「「「「「……あっ!!」」」」」

「それは忘れるにゃよ~」


 さらに子供にも悪い影響が出ているので、ゲームは1日1時間、映画は1日1本までという厳格なルールが、我が猫家に生まれるのであった。


「プラス、ドラマは1時間?」

「プラス、アニメは2時間ニャ?」

「テレビは2時間までに変更にゃ~!!」

「「「「「そんな~~~」」」」」


 生まれた瞬間に、すぐさま変更を余儀なくされるのであったとさ。

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