猫歴13年にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。もう一度月に行く無駄なエネルギーはUFOにはない。
玉藻を連れて行かなかったせいで死ぬほど揺さぶられたわしであったが、なんとか生き残り事情を説明した。
月に日帰り旅行に行ったせいでUFOのエネルギーがかなり減り、わしの元の世界に行くには3年も遅れることになってしまったのだ。いまから月に行くとさらに数年遅れるのでどうするかと聞いたら、唸りながら月旅行は諦めてくれた。
月には何もないと写真にも映っているのだから、発展した日本に行くほうがメリットが高いとわかってくれたのだろう。でも、平行世界旅行のあとに、連れて行くことは約束させられた。
そんなこんなで、玉藻のストレスを発散しに狩りに行ったり、子供たちと遊んだり、女王誕生祭に遊びに行ったり、国の仕事もちょびっとしたり、ゴロゴロしていた1月の中頃……
「にゃ~~~。みんにゃ立派ににゃって~。にゃ~~~」
わしの3人の子供が小学校に入学した。なので、わしは大号泣だ。おめかしした姿も、めっちゃ写真に撮った。皆からは、親馬鹿とめちゃくちゃ呆れられた。
ちなみに3番目の猫耳娘は東の国国民なので、お城で家庭教師に教えてもらう手はずになっている。でも、1人だけ入学式がないのはかわいそうなので、今日くらいは猫の国に連れ帰ったのだ。
子供たちが小学校に通うにあたって心配なのは、立って歩く白猫のぬいぐるみに見えるけど、王族ってところ。戦闘訓練もしていないので、自衛もできない。
しかし、できるだけ普通の子供と同じように勉強してもらいたいので、護衛を雇うことに決めた。もちろん護衛は、最強の猫である、このわしだ。
でも、家族と先生と親御さんの大反対で、1日でクビになった。どう見ても、王様のやることではなかったみたいだ。
かといって、子供の安全を保障するにはそれなりの手練れじゃないといけないので、一般人では到底敵わないエルフ族に頼むこととなった。
ただ、長期勤務になるから呼び寄せるには数日掛かるので、その繋ぎはコリスとオニヒメがやってくれるとのこと。王様はダメで、王女はいいって、なんて不条理な……
というわけで、子育てから解放されたわしは、超ヒマ。仕事もない。やることもない。せいぜいハンターの仕事くらい。最近は週イチくらいしかやってないので、寝るしかない。
「また寝てるんですか?」
「ちょっと最近ダラけすぎニャー」
リータとメイバイに朝からお昼寝してるところを見られてしまったが、昨日は狩りに行ったから見逃してほしい。
「そんなに暇なら、シラタマさんも学校に行ったらどうですか?」
「いいにゃ??」
「子供の勉強の邪魔になるから、小学校は禁止ニャー」
「中学校にって意味に決まってるじゃないですか」
「えぇ~~~」
子供の頑張っている姿を撮りに行きたかったのに、釘を刺されてしまっては仕方がない。隠れて撮ろうと思ったけど、カメラも没収されてしまっては仕方がない。
わしは今日から中学校に通うのであった……
中学校の魔法科2年生は、今日の授業は2時間目は実技をやり、3時間目は座学。3時間目には生徒は教室に戻って来ていたが、自分の席には座らずに仲の良いグループで集まってコソコソと喋っていた。
「なんだ~? もうチャイムは鳴ったぞ。座りなさい」
そこに男の教師が入室して注意を促したが、誰も動こうとしない。そのなかを、委員長をしている猫耳の女子が手を上げた。
「先生。あの子って、ウサギ族の転入生でしょうか?」
「転入生??」
女子が指差した場所には、白いモフモフが色違いの机に突っ伏して寝ていたので、教師は恐る恐る近付いた。
「猫陛下、猫陛下。起きてください……猫陛下!!」
白いモフモフの正体は、もちろんこのわし猫王。生徒は「王様がこんな所で寝るわけないよね?」とコソコソ相談していたが、白いモフモフなんて猫の国王族しかいないので、教師はわしと決め付けて起こそうと揺すりまくっている。
「ふにゃ~……いい気持ちで寝てたのに、にゃに~??」
「「「「「猫王様だ~~~!!」」」」」
わしがあくびをしながら顔を起こしたら、生徒は全員驚きの声。このままでは学級崩壊になり兼ねないと察した教師はわしに問い掛ける。
「こんな所で何してるんですか!?」
「いや、王妃が暇にゃら学校にでも行けとか言うからにゃ。授業を受けようとやって来たら、誰もいにゃかったから寝て待ってたんにゃ」
「王妃様の学校に行けってのは、視察かなんかでしょ! どうして生徒側になってるんですか!?」
「そうにゃの? まぁ授業はどこで見ようと同じにゃし、今日はここから見させてもらうにゃ。みんにゃ~。転校生のシラタマと申すにゃ。仲良くしてくれにゃ~」
「「「「「ええぇぇ~……」」」」」
自己紹介したのに、誰も返してくれない。どちらかというと、わしの行動について来れない教師と生徒であった。
わしが大人しく座っているので、教師も授業しないわけにもいかないので生徒に座るように促し、全員着席したら授業の開始。
わしはノートを出して、エンピツをクルクル回しながら授業を聞いている。生徒はたまにわしを見て、教師もたまにわしを見ているが、授業は続く。
ちなみに猫の国では、小学校は基礎学力と基礎体力と基礎魔力の向上、それと道徳の教育がメイン。
世界中の教科書を集めさせて、信頼厚いトウキン教育長に6年間のカリキュラムを作ってもらったが、元の世界の学力レベルでいったら、いいところ小学4年生レベルだろう。
なので、課外授業が多い。運動したり農業したり、職業見学したり森に行ったり、ハンターの話を聞いたり。言わば、将来的にどんな職業に就きたいかを考えさせる場になっているのだ。
6年間の学習が終われば、中学校に進学。ここでは実技が多くなるので、ほとんど専門学校に近い物になっている。
科目は、普通科、戦闘科、魔法科、技術科、農業科。どの科目も学力向上の授業はあるけど普通科でも中1レベル。その他はそれ以下の学力で卒業になるだろう。
1年目は全てを経験させて、2年目からは自分の合った授業を受け、もしも合っていないとなったらいつでも変更可能だ。
ただし、これらの科目のトップクラスは国からのスカウトがあるから、2年目までに決めていたほうが有利になるので、めったに教科移動はないだろう。
まぁトップクラスに入らなくても、いまならしっかり勉強した者は引く手数多だから、職に困ることはないはずだ。
ちなみに人気の1位と2位は、魔法科と戦闘科。特に魔法科は、お金を払って教えを乞うのが基本なのにタダで教えてもらえるから大人気。卒業後は、兵士、魔道具製作所、その他魔法が必要な職場に就職できるから圧倒的だ。
2位の戦闘科は、なんか男子ばっかり。剣がかっこいいのかな? こちらも魔法の授業があり、卒業後は給料の高い兵士として雇用されるし、落ちてもハンターとして潰しが効くから選ばれていると思われる。
最下位は普通科。この世界にはたいした教科書もないのに授業について行けない者が続出で、職に就けても書類仕事が多くなると聞いて敬遠されている。
わしとしては普通科に多くの子供が集まってほしいのだが、子供たちは手に職をつけたい堅実派が多いみたいだ。
これだけ数々の授業があるのに、わしが魔法科2年生の授業を選んだ理由は、座学が多いし人数もいるから寝ていてもバレないと思って。
わしの子供の頃は、寝ていたら竹刀でぶん殴られていたから怖くてできなかったのだ。だから夢を叶えようとやって来たのだが……
「あの……そんなに堂々と寝られると、子供に示しがつかないのですが……」
「ふにゃ~……頑張ってバレないようにするにゃ~」
「寝るなと言ってるんですよ!」
教師がチョクチョク起こしに来るので寝てられない。隣の女子もわしを起こそうと撫でるので、喉が「ゴロゴロ」鳴ってるっぽい。だから、どんなに寝てないように偽装してもバレるみたいだ。
隣の女子には「撫でないでくれない?」と私語をしつつ授業を受けていたら4時間目も終わり、子供たちの待ってましたの給食だ。
猫の国では子供に関わることは、ほとんど無料。どこぞの子供にお金を掛けないケチな国とはまったく違い、大盤振る舞いだ。
もちろん給食も無料で、ベティが安くて美味しいメニューを考えてくれたのだが、コスト面でもっと下げられないかとホウジツ首相からわしの元へ何度も嘆願が来ているので、いまのところわしの寄付金も入っている。
給食の時間は近くの机の者が4人一組で固まり、給食当番が配膳したら、手を合わせて食事の始まりだ。
「先生~。わしの分がありにゃせ~ん」
しかし、わしにだけ配られないイジメが起こる悲しい事態。
「……あると思っていたのですか?」
「「「「「……」」」」」
「冗談でしたにゃ~」
突然来たのだから、わしの料理があるはずがない。でも、休みの人が1人ぐらいいるかと思って聞いただけなのだから、クラス全員で冷めた目で見ないでくださ~い。
「ちょっとずつ、わしのお弁当と交換しにゃい?」
せっかくだから給食を味わってみたいので、お弁当を売って班の人と一品ずつ交換。極力安い食材の物を出してみたが、それでも子供たちは美味しくて大満足。
わしも給食を食べれて満足だ。でも、帰ってから、ベティにもっとうまい物を出せと文句を言うつもりだ。
給食だけではわしのお腹に溜まらないので、白メガロドンの串焼きをモグモグしながら楽しくお喋りしていたら、給食の時間は終わるのであった。
5時間目も寝ようと思って机に突っ伏していたら、5時間目は実技の授業とのこと。仕方がないのでわしも女子に囲まれて移動。
グラウンドに出たら整列してぺちゃくちゃ喋っていたのだが、教師にわしは呼ばれた。
「せっかくですから、トップハンターの講義をして行ってはどうでしょうか?」
「え~。面倒にゃ~」
「そう言わず、生徒の勉強のためにお願いします。皆も見たいよな?」
「「「「「見た~~~い!!」」」」」
教師が生徒に振るもんだから拍手が起こり、わしも引くに引けなくなってやらざるを得ない。この教師、なかなかのやり手だ……
「仕方ないにゃ~。んじゃ、簡単にゃ魔法を……」
まずは無詠唱で火の玉を浮かべ、生徒に問い掛ける。
「これは火、もしくは炎だにゃ。みんにゃはにゃぜ燃えてるかわかるかにゃ?」
わしの問いに、生徒は無詠唱からわからないとのこと。
「とりあえず、無詠唱は置いておこうにゃ。燃えている理由がわかる人はいるにゃ~?」
「「「「「わかりにゃせ~ん」」」」」
「にゃはは。素直で結構にゃ。燃えるというと現象は、可燃物と酸素が結合し、光と熱を発する現象なんにゃ。例えば……」
わしはわかりやすく説明しているつもりだが、バッタバッタと倒れて行く生徒たち。最後に立っていたのは教師だけであった……
「にゃ……ちょっと難しすぎたかにゃ?」
「はい……でも、勉強になります! もっと教えてください!!」
「君は教える側にゃろ~~~」
わしの講義はレベル違いすぎて、生徒には伝わらず。教師がギリ聞けたぐらいなので、翌日からは違う科目に通うわしであった。
「にゃんか教師ばっかり集まってにゃい??」
「「「「「今日もよろしくお願いします!!」」」」」
違う科目でも講義で何度もやらかしてしまい、別の科目だというのに教師が集まる事態となって授業に支障が出たので、トウキン教育長から中学校から追い出されるわしであった。
「また寝てる~」
「学校はどうしたニャー?」
「にゃんか、もう来るなと言われたんにゃ~」
「「なにしたの!?」」
「講義をしただけにゃ~」
こうしてわしは、リータとメイバイに理由を説明して、またお昼寝生活に戻るのであったとさ。
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