猫王様の千年股旅
@ma-no
猫歴4年~14年
猫歴4年2月22日にゃ~
我輩は猫である。名前はシラタマだ。猫の国で王様をしている。できれば辞めたい。
年が変わり、新年明けましてからダラダラしていたらあっという間に月日が流れ、わしの6歳の誕生日となった。
首都である猫の町で、わしのことを神のように崇めている住人に誕生日がバレてしまうとどうなるかわからないので、例の如くお隣の東の国にある別宅に前乗りしている。
猫の国からの誕生日会出席者は、ショートカットがかわいくて耳が横に長いリータ17歳。西洋風の顔立ちをしているが、元は転生者。それも、岩からの転生という奇特な人物だ。
猫耳と尻尾がかわいいメイバイ19歳。こちらは黒髪のアジア系の顔。メイバイも転生者と言い張っているが、真っ赤なウソ。わしとリータが同じ秘密を抱えているので、仲間に入れてほしいらしい。
この2人は、2人ともわしの妻。つまるところ、猫の国の王妃様だ。
猫は2歳ともなれば大人なので、結婚しても大丈夫。ていうか、こんな化け猫と結婚するほうが個人的にはおかしいと思う。
二足歩行で歩くし喋るし、丸い体型だし肉球があるし、喋ると「にゃ」がつくしとぼけた顔をしてるし……
本来の姿は雪だるまみたいな猫だし尻尾が三本もあるし……
言ってて悲しくなるのでこの話は置いておいて、王女も2人いる。王妃が産んだのではなくどちらも養子なので、まだ一線は越えていない。元が百歳オーバーのジジイだから、若い子とそんなことをするのが踏ん切りがつかなくて……
第一王女は、コリス。推定年齢、103歳。体長2メートル以上ある二尾の白リスだ。猫が王様なんだから、四の五の言わないでくれ。体長10メートルを超えるリス夫婦から預かっているだけなのだ。
第二王女は、オニヒメ。推定年齢、302歳。名前の通り、額から一本の角を生やしている。302歳となっているがつい最近まで眠っていたので、体年齢は12歳前後の少女。髪の毛が白いのは体質だと思われる。
……と、猫、エルフ、猫耳、巨大リス、鬼とバラエティに富んでいるが、これが猫の国の王族なのは間違いない。
その他、猫の国からの誕生日会出席者と共に飛行機で東の国に移動し、王都にあるわしの別宅に入ると、勝手に住み着いているアダルトフォーと呼んでいる女性たちと誕生日会の前夜祭。
この4人はけっこう歳はいっている女性なのだが、いまだに独り身……
「「「「あ゛っ!!」」」」
めっちゃ睨まれて怖いので、今度お見合いを開くと嘘を言って命は助けていただいた。それで気分よくなったアダルトフォーと飲み明かし、前夜祭は終わるのであった……
そして翌朝……
「ぎゃああぁぁ~~~!!」
誰かの悲鳴と「ドオォォーン!」という音と共に、別宅に激震が走った。
な、なんじゃ? リータの声だった気がしたんじゃけど、どこにおる?? てか、なんでわしは外で寝ておったんじゃ??
わしはキョロキョロと辺りを確認すると、別宅の庭で寝転んでいた。不思議に思ってさらにキョロキョロしていたら、別宅の2階に大穴が空いており、そこから猫ファミリーが浴衣のまま飛び下りて来た。
何やら全員殺気を放ちながらわしに近付くので超怖い。なので後退ってみたが取り囲まれてしまった。
わしが恐怖に震えながら何が起きているのかと考えていたら、リータが口を開く。
「君……なんで布団の中で寝てたの……」
え……布団の中で寝てただけで怒ってらっしゃるの!?
「なんでって……普通に寝てただけじゃ」
「君の家はここじゃないでしょ!」
はい? リータは何を言っておるんじゃ??
わしがリータの発言に戸惑っていたら、メイバイが会話に入る。
「リータの胸に埋まって寝てたらしいニャ……子供でも、許可なく触ったら犯罪ニャー!」
「えっ……だめなの!? いつもそっちから押し付けて来るんじゃけど……」
「誰が知らない子供にそんなことするニャー! さあ、リータに謝るニャー!!」
「ご、ごめんなさい……」
わしはわけもわからないが、謝っておけば穏便に済むかと思い土下座していたら、他のメンバーも集まって来た。
「なんかすんごい音が鳴ってたんだけど、どうしたの?」
「この子が……」
カーリーヘアの幼女ベティの質問に、リータはわしが夜這いしたかの如く被害者ぶるので自己弁護する。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。わしたちは夫婦じゃ。なのに、なんでわしは責められておるんじゃ??」
「「「「「夫婦~~~??」」」」」
わしの反論は火に油。何故か皆の怒りに拍車が掛かってしまった。
「私はシラタマさんの妻です! 君のような子供は知りません!!」
「私もニャー! てか、シラタマ殿はどこにやったニャー!!」
「わしがシラタマじゃ!」
「そんなわけないでしょ!!」
「シラタマ殿は、もっとかわいいニャー!!」
わしが叫ぶが、何故かリータとメイバイは信じてくれない。そこに救世主が……
「プッ……きゃははははは」
いや、オニヒメが大笑いしてる。
「「「「「にゃ~~~?」」」」」
「な、なんじゃ?」
オニヒメの大笑いはレアなので皆は一斉に首を傾げ、当然わしも首を傾げている。
「なんで笑っているの?」
「それ、パパだよ」
「どこが……」
「耳と尻尾の数を見て」
「猫耳族みたい……」
リータが質問すると、オニヒメはわしを指差してそう言うが、皆は言っている意味がわからないようだ。もちろんわしもわからないので質問するしかない。
「いったいぜんたい、皆は何を言っておるんじゃ? なんでわしを他人みたいに言うんじゃ??」
「パパはいま、人の姿になってるの。日ノ本で会った鉄之丈君みたいだよ」
「へ??」
オニヒメから具体的な名前を出されたわしは、次元倉庫から鏡を取り出してまじまじと自分の顔を見る。
マジじゃ……子供の頃のわしの顔じゃ。どうなっておる?? そういえば、今日は6歳の誕生日。
3歳の誕生日は尻尾が一本増えて驚き、4歳と5歳は何もなくてホッとしたけど、6歳は人の姿になったのか!? いや、変身魔法を使っている感覚があるから違うか~……あ、変身魔法の年齢制限!
そうか! 6歳になったら子供には変身できるんじゃな!! 耳と尻尾は顕在じゃけど、やっと猫脱却じゃ!!
「リータ、メイバイ! やったぞ! ひゃっほ~~~……ムギュッ!」
わしは嬉しさのあまりリータに抱きつこうとしたが、頬を片手の指で挟まれて顔が歪む。
「む、むんご~??」
「なんでと言われても……なんかイヤなんですぅぅ」
「元の猫に戻ってニャー。お願いニャー」
「む、むご……」
「「「「「シラタマ……カムバーック!!」」」」」
見慣れない人間の姿は、皆に大不評。リータとメイバイは泣きながらお願いし、皆も猫のわしに「帰って来て~」と泣くので、渋々変身魔法を調整して、立って歩く白猫に戻るわしであった……
わしの悲願が~~~!!
こうしてわしは、せっかく人間に変身できるようになったのに、皆からの大反対にあって、元の丸々した歩く白猫で生活するのであったとさ。
ちくしょう!!
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予定では、一ヶ月ほど毎日連載してキリのいいところから週一回の連載に切り替える所存です。
ではでは、新たな猫さんの旅をお楽しみください。
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