第8話 大きな掌の鬼 その4
鬼「なっ?! いつの間に!」
鳩「白鳥使いさん!!!」
P「白鳥使い殿ぉ^^!(汗)」
Pが白鳥使いのもとへ駆け寄り、安否を確認する。
P「無事でありますかぁ~! ゔっ!! 酒臭っ!!
お二人ともぉ~ 息はしておりますぅ~!」
息はあった。というかいびきをかいていた。どうやら、背後から忍び寄った取り巻きの鬼の1匹に酒を飲まされてしまったようだ。白鳥使いは憎たらしいほど気持ちよさそうに爆睡していた。
白「zzz...」
鳩(白鳥使いさん... また背後とられたのか...)
酒「ケケケ、まず1人」
鬼「...拙いな。この人数では...」
ただでさえ数的不利であったにもかかわらず、不意打ちで白鳥使いが戦闘不能になってしまったことで、事態はより深刻なものとなった。背中叩鬼は必死に打開策を練るため思考を巡らせる。
その時、Pが叫んだ。
P「ワタクシに^^!! お任せを^^!!!!!」
鳩「...!! この状況を打破する奇策があるんですね!」
(正直あまり期待はしていないが...
...というか、むしろ物凄く嫌な予感がする!)
P「ワタクシを誰だと^^ 見ての通り一流の魔人ですゾ^^!」
鳩・鬼「...見ての通り???」
P「それではご覧に入れましょう^^!! ワタクシの最強たる所以を^^!!
『弱体魔法:元気吸い取りの術(仮)』!!!!!」
詠唱しながら、Pは天に向けて魔法の杖(?)を掲げた。その杖(?)の先端にはとぐろを巻いた便のような金のオブジェが付いている。ブリーフ一丁でジョークグッズを天に掲げる様はあまりにも滑稽で、ふざけているようにしか見えない。鬼たちは嘲笑したが、皆すぐに身体の力が抜け、充電が切れたように膝から崩れ落ちた。
酒「ぐおおおおっ... 何だぁ... 体中がだるくて立っていられん...」
P「ハッハッハ^^ どうだ^^! 見たか^^! これがワタクシの実力なり^^!!」
Pの弱体魔法は効果抜群で、すぐさま形勢は逆転したかに思われた。しかし、
鳩「あぁ... 全身から力が抜けていくぅ...」
鬼「儂らまで巻き込んでどうする... 馬鹿野郎...」
P「あぁっ^^?! お二人ともぉ^^!! ワタクシとしたことが^^!!
あぁ... 何だかワタクシも元気が...」
Pは自身の魔法の範囲を見誤っていた。敵味方関係なく揃いもそろってうなだれへたり込むその様はまさに地獄絵図である。
泥沼化した戦いの中、背中叩鬼は考える。
鬼(白鳥使いは皆を集めてくれた。鳩使いは酒盛鬼達を見つけ、Pは奴らを弱らせ、動けなくした。だが、儂は何も...!)
弱体魔法の影響か、気分まで落ち込んでしまった彼は自己嫌悪に陥っていた。
(どうやら儂には、背中を叩いて人を元気づける力があるらしい)
鬼(...! まだ、儂にはこの力が残っている! 思い出せ! 儂の原点を! 儂の大きな掌は何の為にある? 決まっている。他者を元気づける為だ!!!)
そう思い出すと同時に、自己嫌悪は消え去っていた。凄まじい倦怠感によって悲鳴を上げる自身の身体に鞭打ち、鳩使い、Pの背後に立った。それから2人の背中をその大きな掌で思い切り叩く。
鬼「頼んだぞ、2人とも...」
鳩(...凄い! 疲れがみるみる消えてゆく!!)
P「Foooooooooo!! ワタクシ! 完! 全! 復! 活!」
すっかり活力を取り戻した2人は、再び酒盛鬼一行と対峙する。
鳩使いは木製の散弾銃のようなものを取り出し、鬼達に照準を合わせた。
鳩「鳥術鳩流奥義:豆鉄砲乱れ撃ち!」
鳩使いは鬼達目がけて硬い豆を発砲した。しかし所詮は豆、決定力に欠ける。
「何だよ、地味に痛いだけ―――――」
鳩「油断は禁物ですよ。この奥義は2度刺します」
撃った豆はすぐさま発芽し、その蔓は鬼達をがんじがらめにした。
酒「があぁぁ 動けん...!」
P「ワタクシは最強^^! 故に攻撃魔法も扱えますゾ^^!
くらえ^^!『攻撃魔法:ピカピカ光線(仮)』!!」
酒「クソがぁぁぁぁぁ!!!!!」
Pが攻撃魔法を放った直後、深夜の夜空が閃光に包まれ鬼達は皆気を失った。背中叩鬼達の勝利だ。
P「背中叩鬼殿、立てますか^^?」
弱体魔法から完全に回復しきっていない背中叩鬼に、Pは手を差し伸べる。
鬼「ああ、すまねえな」
鳩「ありがとうございました。背中叩鬼さんのおかげで皆無事で済みました」
鬼「礼を言うのは俺の方だ。お前達のおかげでケジメをつけられた。
...ところで、アイツどうする?」
背中叩鬼が指さした方には、未だ眠りこけている白鳥使いがいた。何だか先ほどよりうなされている。
鳩「...全くあの人は... 僕が介抱します」
白「うわあぁ!! 8本足の鳩使いが!!
...何だ夢か」
鳩「どんな夢だよ...」
白鳥使いは大声をあげて目を覚ました。2人は今鳩使いの部屋にいる。
白「鬼に会ってからの記憶が無いんだが、どうなったんだ?」
鳩「僕ら3人で片付けましたよ、事件は無事解決です。」
白「そうかそうか、そりゃよかった。
...どうしたハト、顔怖いぞ」
鳩「白鳥使いさん、貴方に訊きたいことがあります」
白「...おぅ、何だ急に改まって?」
鳩「『鳥術の聖地へ行く夢を諦めた』って話、
あれ、嘘ですよね」
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