大人になって初めて会いたくて震える意味がわかった気がする、

@sakura_saku39

第1話

     

 最初に言っておく。きっとこれは七七億人いるこの世界でのよくある、ありきたりな恋模様だろう。

 

 -----瀧川さえ-----

 私が最初に人を好きになったのは幼稚園の頃だ。同じすみれ組の亮太郎君。多分幼稚園の頃の私にはとてもかっこいい人に見えたのだと思う。

「亮太郎君、チューしていい?」

「いいよー、チューしよう」

 これをファーストキスと言っていいのか分からないが、これが初めての恋だ。子供の頃は単純だった。好きなら好きと言えて、キスをしたいと思えば言う。純粋だったのだろう。成長して大人になっていくにつれて、思った事を口に出す事が難しくなっていく。なんて複雑な生き物なのだろう。小学生に上がると、また違う好きな人ができた。同じ地区に住んでいる祐介君だ。私は小学校を卒業するまで六年間ずっと同じ人を好きだった。祐介君は足が速く、みんなの前で戯けて見せたり、とても面白く人気者だ。そんな彼を好きになった私は、あまり話すことも出来なかった。話そうとすぐ顔を赤らめる程、ドキドキする感情を覚えた。ゲームで言うと、レベルがワンランク上がった様な感覚かもしれない。不思議な感覚だった。この時も、六年間片思いをして自分の感情を伝える事もできずに終わった。中学生に上がると、またまた別の好きな人ができた。バスケ部の聡君だ。私の中学校はバスケが強くて有名だった。聡君はバスケ部に入りたくて別の中学から転校してきた人だった。見た目は、今流行りの塩顔という感じだ。ボールをゴールへシュートした時が一番かっこよかった。昼休みになると聡君は体育館へ毎日バスケをしに行く。わたしは友達とバレーボールをしに行くという言い訳を作り、横目で彼を見ている事が幸せだった。少し気持ち悪いかもしれない。そんな自分を嫌いになる事もあった。高校へ進学すると、好きな人は全く出来なかった。共学だったが、勉強、部活と忙しかったのだろう。でも、心のどこかでは忙しいから恋愛どころではないという言い訳を作っていたのかもしれない。そんなこんなで特に青春することなく私の学生生活が終わりを迎えた。

 

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