第三話 調査開始
翌朝、僕は目覚めた間宮に調査することを伝えると、関係者が集まりそうな時を聞いた。
「そうか……やってくれるか。ありがとう。
集まるのは普通に考えれば葬式だと思うけど……今、遺体は警察だからいつになるかな?」
ミステリー好きの彼が言うには、事件性のある遺体は警察で検死されるらしい。それにかかる日数はバラバラだと言う。
「それに……先輩の実家に電話して聞いたら、葬儀は内々で済ませたいらしいし……」
家族葬というのか、身内だけで済ませるから、極力葬儀には来ないでほしいと言われたそうだ。
おそらく、目立つのが嫌だったのだろう。動物殺しがとうとう人殺しになって犠牲者が出た――マスコミの格好の餌だ。大々的に葬儀を行えばそう言った輩も出入りするに決まっている。
「それじゃあ、大学周辺を回ってその人の知り合いに話を聞くぐらいか」
「おいおい、それじゃあ先輩の知り合いが病的なシリアルキラーだって言うのか?」
「まだ分からないよ。その人に何らかの恨みがあって、動物殺しは無差別殺人に見せかけるカモフラージュの可能性もある。殺された時間は――」
「警察に聞かれたのは、午前一時ごろのアリバイだった」
「午前一時に、何の用もなく大学に居るか?」
「あ……そうか! 犯人が呼び出したのか! でなきゃ遺体を運んだのか、だな」
死んだ人一人を運ぶのは大作業だ。長距離の場合なら車等も要る。だから、他の場所から遺体を運んだのではなくキャンパス内で殺された可能性が高い。
もっとも、夜の一時なんて普通の大学生は居ることは少ない、犯人が呼び出さなければ。そんな時間に赤の他人の呼び出しに応じるはずはないから、必然的に知人になる。
「とりあえず、その先輩と親しかったと思われる人と会わせてくれ」
「親しかったのは……ミステリーサークルの連中だな」
こうして大学三年の山崎先輩、
校門に着くと、一人の女の子が出て行く所だった。うつむいた顔は見えない。
「あれ、綾瀬!?」
間宮が声を掛けた。
「ま、間宮先輩……あの……」
驚いて顔を上げた彼女は、少女と言える程に幼さの残る顔だった。
「こいつは
僕に彼はそう紹介する。
「綾瀬です。間宮先輩のお友達……ですか?」
「ああ、こいつは岩瀬芳樹。例の事件ことを調べてもらおうかと――」
「あのっ! 失礼します! すいませんがサークルの方、しばらくお休みさせてください!」
彼女は言葉を遮って強引にそう言うと、走り去った。
「あの子……」
「まあ、あんな事件があったんじゃ仕方ない。先輩と仲良かったからな」
彼は自分を納得させるかのように言った。
「で、どこから調べる?」
「そうだな……まずは講義が終わったら、ミステリーサークルを中心に関係者に会ってみる」
「了解」
■ゲームシステムの説明
ここからは、探索パートとなります。
探索パートでは、自由に大学構内を歩き回ってキーワードについて話を聞けます。
主人公は二つの視点を自由に切り替えることができます。(イベント中除く)
これを「通常視点」と「イデア視点」と呼び、通常視点では当たり障りのないことしか言わないキャラもイデア視点では意外なことを言う場合も?
※ここからは小説形式に戻りますが、通常視点での会話を「」、イデア視点での会話を『』で表記します。
以下例、グラウンドで走り込んでいる道着を来た男二人。
「気合いだ! こんな暑さ気合で乗り切れ!」『くう~、俺最高にかっこいいこと言ってるぅ~』
「はい! 先輩、頑張ります!」『めんどくさいなあ……。一歳年上なんて社会人になったら大差ないのに、先輩風吹かせやがって』
講義が終わると、僕たちはミステリーサークルの部室を訪ねた。
居たのは二人。太った男と痩せた男。
「こっちは四年の
太った男を加藤、痩せた男を佐々木と紹介された。
「なんだ? こんな時に新入部員か?」『人が死んだのに、どうかしてるぜ』
加藤は不審そうに僕を見た。加藤はイノシシの姿に見えた。薄汚れて荒々しく、体臭まで漂ってきそうだ。
「違う違う。こいつに事件について調べるのを手伝ってもらってる」『手伝うというよりもこいつが主体なんだが……まあ、説明したところで分からないからいいか』
ちなみに間宮は気まぐれそうな黒猫だ。
「調べる? これはお話じゃなくて現実に起こった事件なんですが……」『コイツ……とうとう身内のことまでネタにしやがった。まあ、俺もこれを基に小説賞を狙ってるんだが』
佐々木は神経質そうなサルに見える。
「まあ、警察が捕まえてくれればいいんだが、これまでの動物殺しで捕まってないからなあ……」『あーもう、ごちゃごちゃ言わず協力しろよ!』
「それは、確かにそうですが……」『だからと言って、自分で調べるのは危ないと思うが』
佐々木は渋々同意した。
「で、何を聞きたいんだ?」『まあいい……何かしてないと気が滅入るから協力してやるか』
加藤は一応協力してくれるようだ。
「突然ですが、殺された山崎さんについて聞かせてください。どんな人でした?」
「どんなって……普通に面倒見の良い先輩でしたよ。書くミステリーもトリックが結構凝っていて面白かったです」『あの人の書くもの、やたらグロいんだよな。普段は良い人なんだが、その分小説の世界で殺しまくりって言うか……』
佐々木は平然と答えた。
「才能は、あったと思うな。ただちょっと、人を選ぶ作品を書くというか……あ、悪い奴じゃなかったよ」『まあ、俺には到底及ばない才能だがな。素人にしては良く書けてた部類だ。いつだったか死体の画像ばかりのサイトをパソコンで熱心に見てたな。ちょっと危ない奴じゃないかと思ったけど、本人はリアリティが必要だからだと言ってたな』
加藤はそう言うとため息を付いた。
やはり身近な人間が死んだというのはそれなりに重みがあるのだろう。
「事件のあった晩の午前一時ごろは何をしてました?」
「寝てた」『怪しまれるかな……まあ、夜中にアリバイなんてあるはずないし普通だよな』
今度は加藤が先に答えた。
「レポートの宿題があったので、ラジオを聞きながら書いてました。ラジオの内容は覚えてます」『ラジオなんて録音や後からでも聞けるサービスもあるからアリバイにならないが、無いよりマシかな』
佐々木はハッキリと言った。
「最後に一つ。殺される犯人や動機に心当たりは?」
「いや、殺される程酷い奴じゃなかったと思うが……サークル外で何をしてたかまでは分からないからな」『「殺される」は無いけど、「殺す」は多少してたようだがな。小さい頃から虫とかカエルとかとよく殺してたと武勇伝みたいに言ってたな』
加藤は少しだけ口ごもった。
「そんな物騒な動機なんて、正直思い当たりませんよ」『サークルの集まりで飲んだ時に昔、捨てられてた子犬を踏みつぶして川に捨てたとか言ってたな……でも、もう時効だって。なんていうか、そういうことを今でもしてたら誰かに恨まれてるかも』
佐々木はどことなくおどおどしながら答えた。
「ありがとうございました。他の人にも聞いてみます」
僕たちはそう言うと部室を後にした。
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