第7話死ぬって軽いな

「誰とも関わらないか死ぬか」


小鳥遊先輩はあの後早退したと聞いた。LINEには学校には行くのやめるとだけ送られていた。


先輩はそれが残された選択肢と言っていた。

解決も解消もできない。そんな諦め方できないはずなんだ。だって今まで先輩は学校に来ていたじゃないか。ふざけんな、何してんだよあの人は。


次の日もその次の日もやっぱり学校に来ることはなく、LINEを送っても既読の文字だけが浮かぶ。

勝手な人だ。こっちは時間がもうないってのに

なんとかしないとな。


もう、3日ほどしかないのに呑気なもんだなと自分で笑ってしまいそうになるほど落ち着いていた。


ー小鳥遊清麗ー

「やっぱりダメね」


心歪病の話を聞いたら何か変わるかもしれないかと思ったけれど、私にはその頃のものは何も残ってない。結局彼からも逃げてしまった。外には出たくない。でもお腹は空いた。まだ、パジャマのままでだらしくない姿だ。少なくとも女優時代にはなかったことだ。


金曜日の午前中いつもなら学校で授業を受けている。だからデリバリーハピネスを利用した。蟹蟹蟹蟹蟹尽くしクリームピザの文字が見えて頼んでしまった。30分ほどしたインターホンが鳴った。デリバリーパピネスと低い声で訪問した男は帽子で顔がほとんど見えなかった。ドアを開けると男はドアを掴んでニカッと笑った。


「お久しぶりです。小鳥遊先輩蟹蟹蟹蟹蟹尽くしクリームピザお持ちしましました」


***

小鳥遊先輩は動揺していた。そりゃそうだ。学校にいるはずの後輩が家に現れたんだ。注文した商品を持って。


「どうして、学校は」

「それは小鳥遊先輩もそうでしょう。てか中入りますね」


否応なしにずけずけと僕は勝手に家に上がった。


「何しに来たの」

「責任を取ってもらいに」

「結婚なんてしたくないのだけど」

「そんなこと一言も言ってないから!」


先輩は怪訝そうな顔をして、ピザを片手に言った。


「違いますよ。僕と出かけて最後の思い出作りに付き合ってください。そしてちゃんと僕の最後見届けてください」

「見たくないわ」

「知ってます。だから学校来ないんでしょ」

「違う。誰とも関わらないことを選んだだけ」

「じゃあどうして、デリバリーパピネスで蟹蟹蟹蟹蟹尽くしクリームピザを頼むなんて中途半端なことしたんですか」


先輩は押し黙った。心の奥底を覗かれたようなそんな顔をして。心歪病になったものだけがわかるのかもしれない。距離を置くくせに本当は近ずいて欲しいと願ってる。


「付き合ってくれますよね」

「……」


先輩は僕を強く押し出した。すっかりいけると思っていたものだから簡単に玄関の外に追いやられた。

ただ、すぐに帰ることは出来なかった。まだ、料金払ってもらってないし。そのまま20分くらい体育座りで待機していたと思う。ガチャとドアが開く音がする。


「小鳥遊先輩!!」

「そんな驚いた顔をしてどうしたの」

「だって、行かないのかと思ったから」

「パジャマでいけるわけないでしょ」


どうして一言言ってくれないんだ。って思ったが思うだけにしといた。小鳥遊先輩にそんなこと言ったら次はもう出てきてくれない気がした。


「どこに行くの」

「原宿とか」


あからさまにうぇーとした顔をしていたが無視をして、手を引っ張った。3日間しか残りがないと思うと不安が勝るかと思ったがふっと体が軽くような感じがした。後のことは考えなくて良い。たとえ誰に嫌われようが気にする事はないのだから。




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