第8話原宿って何すんねん
「原宿に行ってなにするの?」
「クレープとか食べます?」
「何も考えてないのね」
だからモテないと言われてるような感じがする。
原宿とかほとんど来たことないしな。竹下通りくらいしかわからない。
「私、タピオカ飲んだことないのよね」
「じゃあ飲んでみません」
さらっとやることを提示してくれる小鳥遊先輩はモテるなーと敗北感を味わいつつ出店でタピオカミルクティーを頼んだ。甘さのパーセントなんて初飲みでわかるわけもなくとりあえずおすすめされた50%にしといた。
「おいしいですか」
「タピオカって飲みにくいわね。苦手だわ。この独特な感触飲みにくい。ミルクティーで良かった」
「そうですか、僕は結構好きですよ。ただもうちょっと甘いのでも良かったですね」
「代わりと言ってはあれだけど、クレープでも食べない」
男だからなのか、男友達ばかりのせいなのかわからないけどクレープもそんなに食べることもない。
だからこんな風に美人な先輩と学校をサボってクレープとかタピオカとか高校生っぽいものを食べたり飲んだりするのは非日常みたいで楽しい。
「先輩僕の服選んで貰えませんか」
「どうしたの突然」
「いえ、僕の服装はこの通り白に黒で書かれた文字Tシャツにベージュのパンツとなんとも言えない感じじゃないですか、せっかくならオシャレしてみたいと思いまして」
「加えて言うならシャツはシワだらけパンツのデザインはあってない。確かに隣を歩かれたら恥ずかしいわね」
「何も言い返せないです」
先輩に連れてかれた服屋は値段帯は3000円から6000円くらいのプチプラの店だった。お財布に配慮してくれて助かります。
「男の子の服ってあまりよく知らないけど音無くんは細身だし、身長も高めだから無難に白シャツとデニムパンツと小物を身につければそれなりになると思うわ」
「そうなんですね」
そんなものなのかなと思いつつ小鳥遊先輩の選んだ服とズボンを試着して合わせていく。最終的にグレー寄りの白のオーバーサイズのシャツに明るいデニム。中のTシャツはくすみ水色だ。そこに黒の二重巻きレザーブレスレットとチェーンネックレスを身につけた。
「色味は特別なことないのにこんなにきれいにまとまるものなんですね」
「当然でしょ。Tシャツやパンツにしたって形や素材が違うのだからどんなイメージにしたいかがないとまとまらないわ。逆に言えばイメージさえあれば直感で個々を選ぶより格段によくなる。」
「パズルみたいなものですか」
「どちらかと言えばキャンパスで絵を描く方が近いかしら。レイアウトなしに描けば慣れてない人ほど全体のバランスが悪くなる」
もっと前にこのことを知りたかった。死ぬ3日前とかこれが最初で最後じゃんか。まぁ小鳥遊先輩と関わらないと一生知らなかったんだけどさ。
「この小物にはどんな効果が」
「見た目が良くなることを置いておくなら周りとの差をつけたり、印象を高めることに繋がるんじゃないかしら。」
「印象と周りと差をつけるってどこに違いがあるんですか2つとも同じことじゃないですかね。つけてる人とつけてない人で差が出るんですから当然印象も良くなるはずじゃないですか」
「その場ではそうね。ただ、印象が高くなるのってその後にも繋がることなのよ。オシャレだと思われてればその人が着てる服はオシャレだと認識してしまう。だからより良く見える」
「なるほど。ためになりました」
確かに小鳥遊先輩が着ていればどんな服もオシャレだと思ってしまいそうだ。新しい知識も役に立てられないと思うと虚しいものだな。
「あとは髪の毛もさっぱりさせたいわね。そしたらかっこよくなる」
「そうですかね」
「そうよ。私が言うのだから間違いないわ」
僕かっこよくなれるんだなぁ。もしかして地はイケメン素材がいい的な。モテモテになっちゃうみたいな。
「別にモテるとは言ってないけど」
「冷静に心読むのやめて貰えません?心歪病レベルの事なんですけど」
「それでまだ時間は十二分にあるけど」
「スルーですか。でもまぁ適当に色んなことしましょう」
その日は何も考えずに自由に遊び回ったゲーセンでぬいぐるみをとったり、プリクラしてみたり、山手線を一周してみるとかよく分からないことをして楽しく過ごした。本番は明日からだ。
「小鳥遊先輩明日泊まりの準備しておいてくださいね」
別れ際それだけ伝えて逃げるように去ろうとした時背中に声をかけられた。
「音無くん、ありがとう。私を見捨てないでくれて、命をかけてくれて」
振り返るのは少し違う気がして、聞こえてないふりをして、その場を去った。明日は海を見に行こう。もしかしたら秋内さんにも会えるかもしれない。僕がダメだった時お願いするために。小鳥遊先輩の希望を繋ぐために。
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