魔法少女、バレちゃいました!?『あなたの心を離さない“魔法少女な”あの子』

ざとういち

第1話 魔法少女、現われちゃいました!?

(昨日の魔法少女テェテーナ良かったなぁ。)


俺は、昨日観た深夜アニメがとても

面白かったという充実感で頭の中が

いっぱいになっている、ごく普通の

アニメオタクの男子高校生だ。


俺はこれから、そんな素晴らしい

二次元の世界とは程遠い、現実の学校に

行かなければならない。


『 ボ ッ カ ー ン ! 』


「な…なんだ…?」


憂鬱な気持ちで歩いていると、聞き慣れない衝撃音のような音が聞こえた。


恐る恐る音の方向に近付いてみると、

そこは真ん中に噴水がある少し大きめの

公園だ。俺も昔から馴染みのある公園。


そんな馴染みのある場所に、

全長5メートルは超える、

巨大な魚に手足が生えている化け物が、

二本足で立っている。

何を言ってるか分からないと思うが、

俺も分からない…。なんだあれは…?


「 ギョ ギョ ギョ ー ッ ! 」


突然、魚の化け物が奇声を発すると、

木を薙ぎ倒し、地面のコンクリートを破壊し

暴れ始めた。公園に遊びに来ていた

親子連れが顔面蒼白で逃げ惑っている。


俺はだいぶ離れた林の中から様子を

伺っているので、怪物の攻撃範囲には入っていないが、これは俺も早く逃げるべきでは…?


「あ、あれは…!」


「結心!急ぐプニョ!」


俺が林の中から怪物の様子を伺っていると、

一人の少女の姿が俺のすぐ近くに現れた。

俺は林の中に隠れているので、彼女は

俺に気付いていないようだった。


よく見るとその少女は、俺と同じ学校の

制服を着ている。その少女は、同じクラスの

甘崎 結心(あまさき ゆい)さんではないか。


俺の席の前が、彼女の席なので、

当然よく顔を合わすが、本当にそれだけの

ただのクラスメイトだ。特に会話をすることもない。何故なら俺は陰キャだからだ…。


彼女は正直かなり可愛いし、出来れば仲良くなりたいとは常々思っているが、無理だ。

陰キャだからだ…。仲良くなるどころか、

嫌われていないか心配になるくらいだった。


「結心!変身だプニョ!」


甘崎さんのそばには、丸いプニョプニョ

した奇妙な生物が、フワフワと浮遊

しながら何か言葉を喋っている…。


次から次へと現れる不可思議な存在に、

俺の頭は完全にパニックを起こしていた。


「うん!行くよプニョ!」


すると、甘崎さんはパステルカラーの

ステッキのような形状のオモチャを取り出して、何やら叫んでいる。ま、まさか…。

これはどう見てもそういうあれじゃ…。


「マジカルチェーンジッ!!」


甘崎さんが叫ぶと、ぶわっと風が舞い、

彼女の体が光に包まれる…。


甘崎さんが光り輝きながら宙に浮いているのを呆然としながら眺めていると、

彼女の着ている衣服がはじけ飛んだ。

って、えええええええ!?


彼女のボディラインが浮かび上がる。

程よくデカい。程よく細い。そしてまた

程よくデカい…。

肉付きは良いのに、細身で小柄な身体。

(たぶん)男子が想像する理想的な女の子の

身体だった。

あまりの光景に思わずゴクリと唾を飲み込む。


残念ながら光り輝いているのでよくは

見えないが…。それでも、同級生の女の子が目の前で裸になっているのだ。

とても刺激的な光景に変わりはなかった。

俺はその光景に釘付けになっていた。


魚の怪物も彼女の姿に気付いていたが、

攻撃する様子はなく、俺と同じように

ぼんやりと変身する様子を眺めている。


魔法少女の変身中に敵が攻撃して来ないのは、まさか、俺と同じように鑑賞している

からなのだろうか…?などと、勝手に

納得しそうになっていると、全裸の彼女は

フリルの付いた可愛い衣装を徐々に身に

纏っていく。


「甘い香りでも甘くない!!」

「魔法少女マジカルスイート!!」


元気いっぱいに可愛い決めポーズを取る

甘崎結心さん。いや、マジカルスイート。


同級生は魔法少女だったのだ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る