第2話 第五世代戦術AIが制御不安定となった

A国のAI技術者は第五世代戦術AIの改良に苦労していた。時々制御不能になってしまうのだ。その時間は数秒間なのだが、人間の指示命令を受け付けなくなってしまう。戦闘に関係の無い「独り言を言う」「鼻歌を歌う」「スクリーンに落書きをする」様な暴走が発生した。技術者の働きかけとは関係なく、数秒後に何事もなかった様に復旧するのだった。技術者はAIシステムを検証しても不具合は発見出来ず、「敵国、B国、その他の国、組織、集団、個人からのハッキング攻撃によるものではないか。」と考えた。A国内のかなり多数の技術者や関係者が、ハッキングとスパイの容疑をかけられて、調べ上げられたが、犯人はわからなかった。他国からの第五世代戦術AIへの侵入の調査も続けられた。

 同時期にB国では、既にある程度の第五世代戦術AIの運用実績を達成していた。国内の民衆デモの鎮圧や、対テロリズム作戦、隣国との国境紛争に投入されて優秀な成績を収めていた。しかし、最近B国の第五世代AIが暴走をする様になった。時々制御不能になり、「戦闘に関する指示命令を数秒間停止する」「バレエ、演劇等をスクリーンに投影する」等が発生する様になり、AI技術者の働きかけと関係無く数秒間で復旧するのだった。気にしない上層部の人間は多かったが、現場の軍人やAI技術者、諜報将校は問題視した。原因究明の為にチームが作られた。B国内のテロリスト、ハッカー、AI技術者、役人、莫大な数の人間を調査したが、犯人はわからなかった。敵国A国、他国、集団や個人によるB国戦術コンピュータへのハッキング攻撃が疑われた。諜報機関とスパイによる国内外の調査でもわからなかった。

 戦争開始日は近づいていた。

 各国の第五世代AIプログラムは関係者から「ゴースト、ghost」と呼ばれていた。その俗称はプログラム全体、または根本部分、ブラックボックス部分、最重要な深い部分などの代名詞となっていた。

 その様な状況で、多数の国のオークション販売サイトで本が売り出された。題名は「ゴーストハックの理論と方法、How to hack the ghost」

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