実は社長代理ってかなり遊んでるんじゃねのこと





 ハルヴィエドは童貞である。

 女性とのお付き合いも沙雪が初めてで、初体験は海の見えるホテルの最上階でお前が好きだっ! お前が欲しい! をしたいと考えていた。

 出会ってからの期間は短いが気分的には一万年と二千年前から恋をしているし、ガロティファは至高なので私も神様信じる。

 つまり彼は赤いバラの花を部屋中に敷き詰め、シルクのベッドで朝まで愛し合いタイプのぴゅあj民だった。

 にも拘らず、沙雪以外を母に持つ娘が未来からやってきた。

 沙雪に一途を自認していた彼からすると複雑な心境だが、クリスマスプレゼントは毎年どころか年四回くらいは贈る心算である。


「うふふ、ハルヴィエドさんは大変ですねぇ」


 社長室で茜たちを待っている途中、第一秘書であるレティシアがからかってきた。

 もともと友人だけに周囲に誰もいない時はお互い砕けた態度で接している。


「レティ、あまりからかわないでくれ」

「でも沙雪ちゃんは勿論、他の子達も大切に思っているのでしょう? 私からすると、未来がハルレムでもそれほど不思議ではないんですよねぇ」

「ハルレムて。そういえば、いつの間にか沙雪ちゃん達の呼び方が変わったな」

「今ではあの子達とも仲良くしていますから」


 レティシアはハル娘ラッシュの現状を見ても責めるような真似はしない。

 そもそも彼女自身が一夫多妻を推奨しているので、複数の娘に対しても嫌悪感がないのだろう。

 代わりにとても楽しそうだ。


「沙雪ちゃん、茜ちゃん、ヴィラちゃん、ミーニャちゃんに萌ちゃん。次はリリアちゃんのお子さんですね。きっと美人ですよ」

「許してくださいレティシア様」

「は~い」

 

 一頻り弄った後、レティシアはコーヒーを淹れてくれた。

 香り高く酸味は弱め。好みまでしっかり把握している有能な秘書だった。


「うん、美味しい」

「よかったです。ああ、それと。突発的な休みにも対応できるようスケジュールは調整してあります。他社とのミーティングは極力少なくし、葉加瀬社長代理を通さなくても問題ない業務は私やヴァシーリエヴァ第二秘書ら補佐役で片付けられるよう手配しています。あと娘さんたちの状況は分かりませんが、一応レングさんに連絡して現代で生活する上での住居も確保済みです」


 つまり未来からやってきた娘関連に時間を割けるように、前もって準備をしていたらしい。 


「抱え込むなと言って聞く貴方ではありませんから。負担を分散できるよう先に手は打たせていただきました」

「ありがとう。なんともまあ、有能な秘書だよ」

「お褒めに預かり光栄です。付け加えれば、普段からもっと頼っていただけると、友達想いの第一秘書も貴方を大好きな第二秘書も喜びます」

「……善処します」

「そうしてくださいね、社長代理」


 演技じみた振る舞いでレティシアはお辞儀をした。

 それが妙に面白くて、お互い顔を見合わせて笑った。




 閑話休題



 平日の昼前。

 合同会社ディオスの社長室は非常に微妙な空気が漂っていた。

 ハルヴィエドの前では、結城茜が申し訳なさそうな顔で小さくなっている。


「わあ、若い頃のパパだ……」

「すっげー。なんか妙な感動があるよな。あれ、だけど見た目そんなに変わんない?」

「ほ、ほら。向こうの人は若い時期が長いって美衣那叔母さんが言ってたし」

「あー、確かに。みゃー叔母ちゃんもムチャクチャ若いもんな」


 茜は昨日の電話の通り、魔法少女を会社に連れてきた。

 ただし、二人だ。

 

「あぁ、ひとまず。私から挨拶をさせてもらおうか。私は、ハルヴィエド・カーム・セイン。日本では葉加瀬晴彦と名乗っている」

「うん、知ってる!」

「だ、駄目だよ、ユエちゃん。こっちのパパは、初対面だから」

「あ、そうだった」


 魔法少女まじかる☆ユエと魔法天使らぶりー♡みそら。

 最近巷をにぎわせている少女達は、それぞれしっかりと挨拶をする。


「うっす、若父ちゃん! オレは葉加瀬夕映! 12歳です!」

「は、初めまして……パパ。私は神無月美空。12歳です」

「うん、しっかり挨拶ができるのはいいことだ。よろしくね、夕映ちゃんに美空ちゃん」


 ハルヴィエドがにこやかに応じると、二人とも嬉しそうな顔をした。

 元気な夕映と大人しい印象の美空。色々な背景を考えなければ、素直ないい子にしか見えない。


「ごめんなさい……」

「いや、構わないよ。でも茜ちゃん、いったいどういう流れで?」

「実は……」


 茜は昨夜偶然にまじかる☆ユエと共闘した時に「オレの母ちゃんは茜」発言を受け混乱し、ハルヴィエドに助けを求めたのだという。

 ただ夕映は既に美空と知り合いだったらしく、当日になって急に連れてきたのだとか。

 意図しない形で迷惑をかけることになり、茜はとても気落ちしているようだった。


「あの、ボクどうすればいいのか分からなくて。誰か頼れる人って考えたら、ハルヴィエドさんしか思い浮かばず……」

「まあ、私が騒動の元凶みたいなものだしな。それに、頼ってもらえるというのは嬉しいものだよ」


 ハルヴィエドは意識して普段よりも優しい声で慰める。

 そして改めて子供達と向き合った。


「さて、二人とも。できれば少し話を聞かせてほしい。君達は未来からやってきた、私の娘だという。それに間違いはないか?」

「あったりまえじゃん! なんだよ若父ちゃん、疑ってんのか?」


 少し不機嫌そうに夕映がジト目で見る。

 それに比べると美空の方は幾分冷静なようだった。


「え、えと。パパ……私は、19年後の未来からきました。その、ママは神無月沙雪、です」

「……そ、そうか、うん」


 予想はしていたが、想い人との間に出来た娘だと知ると妙な心地になる。

 真偽のほどは分からない。だから彼女達が実の娘であると仮定して、ハルヴィエドは話を進めた。


「その口ぶりだと、君達がいたのは別の未来だと思ってもいいのか?」

「はい。パパと結婚してるのはママだけです」

「オレんとこも、愛してるのは母ちゃんだけだって言ってたぞ」


 ちょっとだけほっとする。

 でも茜ちゃんの目の前でそういうのやめてください。

 ほら、このボクっ娘ってば「はわわわわわ……!?」状態になってるじゃない。


「愛……愛っ!? は、はるひれほさんがボクを愛っ!?」

「お、落ち着いて、茜ちゃん。あー、それで、君達は私を救いに来たらしいがつまり、君達のいた未来では私が何らかの危機に巻き込まれた、ということか?」


 ハルヴィエドは本題に切り込む。

 しかし返答は思っていたよりも軽かった。


「え、ぜんぜん?」

「私の方も特には……。その、ママと一緒にお風呂入ったり、いってきますのちゅーと、おやすみなさいのちゅーで、毎日二回はちゅーするくらい元気だしママと仲良しです」


 何をやっている、未来の自分よ。


「うちの父ちゃんも母ちゃんと仲良しだぞ。映画見る時は基本お膝だし、よくプロレスごっこもしてるからな」


 何をやって以下略。

 あと悶えてる茜ちゃんへのフォローは話が終わった後までちょっと待ってください。


「それでは、君達が言う。“私を救う”とはいったい」

「ああ、と……よく分かんないんだけど、とにかくオレらのいる現代がピンチなんだ! で、それをどうにかするのに過去に来たんだよ」


 要領を得ない夕映の説明を、今度は美空が引き継ぐ。


「私は、こっちから見た未来で、魔法少女をやっています。ママ達も妖精姫だけど、魔力が弱くなっちゃったから……」


 19年後なら、沙雪さんじゅうろく歳。

 魂は架空器官とはいえ臓器だ。加齢によって衰える。

 それでも戦えはするが、以前のような万全の態勢は整えられないのだろう。

 

「私の未来では、強い敵が暴れて大変なことになってます。だから私達は、それを倒すきっかけをつかむ為に、過去にやってきました」

「そうそう、すげー大変なんだよ!」

「……ん? 君達は別の未来から来たはずではなかったのか?」

 

 ハルヴィエドの問いに、二人は困ったような顔をした。

 隠し事や騙そうと言った雰囲気ではない。まだ幼い子供達だ、説明しあぐねていると言った様子だった。


「あー姉が教えてくれたんだけど、なんて言えばいいんだ? ……美空、任せた!」

「えっ、私? あのその、えーと。まず、アリサさんは私達のリーダーで。あっ、葉加瀬アリサ……花嵐のアリスっていう妖精姫なんですけど」


 その名前には聞き覚えがあった。

 スレでもまとめられた、朝比奈萌とハルヴィエドの娘だ。

 やっぱり葉加瀬姓なのがちょっともにゃる。


「私達が戦うのはクピディタース・ラディクスっていうおっきいモンスターです。私のところも、夕映ちゃんのところも、アリサさんのところも。どの未来でもそれが出るって、アリサさんが言ってました」

「……全ての並行世界に現れる同一存在、なのか?」

「どういつ?」

「ああ、ごめん。美空ちゃん、続けてもらえるかな」


 クピディタース・ラディクス。

 ここで明確な敵が出てきた。

 しかも分岐したどの並行世界でも現れる化物が存在しているのだという。


「はい。だから、萌さんがそれをどうにかするために、私達を過去に送ってくれたんです」

「萌ちゃんが?」

「萌さんはパパの一番弟子さんで、一緒にたくさんの発明をしたすごい研究者さんなんです」

「あ、それオレんとこも同じ。父ちゃんと並んでテレビ出ること多いから、母ちゃんがよくぐぬぬしてる」

「ウチのママはしばらくパパをぎゅーっとします」


 ちなみに余計な情報が零れるたびにハルヴィエドの精神は削られている。

 後ろに控えるレティシアが「あらあら、ハルヴィエドさんってば」とすっごいニマニマしていました。 

 茜ちゃんは「ふぉぉぉぉお……!?」ってなっています。この状況すごく精神に悪いです。


「えーと、それでですね。ラディクスを倒すためには? この時代に来なくちゃいけなかったんです」


 そんな過去の者たちの悶絶には気付かず、美空が魔法少女たちの本当の目的を告げる。


「プロフェッサーY。いつかそう呼ばれることになる人が、将来クピディタースを造ることになるそうです。過去を変えても未来は変わらない? とからしくて、私達は過去を変えるんじゃなくて。それぞれの未来のために、どうやってクピディタースが生まれたのかを知るために来たんです」


 聞かされた情報をハルヴィエドは情報を整理していく。


 1.魔法少女はそれぞれ別の未来かの来訪者であり、過去改変による消滅は起こらない

 2.クピディタースは本来なら現段階では存在しない、未来で造られる化物

 3.魔法少女を過去に送ったのは神霊工学者となった朝比奈萌

 4.リーダーは萌の娘であるアリサ(花嵐のアリス)

 5.彼女達の目的は過去改変でなく、失われた情報を獲得し、未来で問題を解決すること

 6.事件の元凶はプロフェッサーY


 そこまで聞いても、ハルヴィエドを救うことには繋がらない。

 だが美空からの又聞きではこれ以上の情報は得られないだろう。詳細を知るにはアリサなる少女と接触しないといけない。

 それでも知る限りのことを教えてくれた子供に感謝を伝える。


「そうか、ありがとう。よく話してくれたね」

「……は、はいっ!」

「ちなみに、未来の世界は壊滅な打撃……いや、危ないことになってたりするのか?」

「オレんとこはそこまでじゃないぞ。オレも戦ってるし、ヴィラちゃんもみゃー叔母ちゃんも頑張ってるから」

「私のところもです」


 滅びの一歩手前まで追い込まれていると思ったが、そうでもないらしい。

 ただ危険なモンスターが街を闊歩している状態ではあるようだ。

 それはそれとして12歳女子からもヴィラちゃん呼びなのマジ首領。


「それに、ピンチの時はタキシードハカセ様が助けに来てくれるんです」

「そうそう、正体は分からないんだけど、強くてカッコいい謎のイケおじ!」

「………………そっかー」


 この話は掘り下げてはいけない。

 訳もなくそう察した。

 とりあえずある程度の事情は把握した。あとは、この子たち自身のことか。


「さて、夕映ちゃんに美空ちゃん。現代での住居はどうしているんだ? もし困っているなら、なにか援助をさせてほしい」


 申し出は二人におって意外だったらしい。

 特に美空の方は、予想外のことにオロオロしている。


「じ、実は、未来の娘だと言っても、パパに信じてもらえないんじゃって、思っていました」

「ああ、いや。申し訳ないが、親娘だという自覚は薄い。君達にとっても親は私ではなく、一緒に日々を過ごした未来の私なんだろう。だが父と呼んでくれた以上は、報いたいと思う」


 ハルヴィエドは血の繋がらないミーニャを家族だと思っている。

 相応の時間を共に過ごし、お互いに心を通わせたからだ。

 だからこそ夕映や美空に対して、父として振る舞うほど厚かましくはなれなかった。

 それでもこの子達の中にある父親の姿に泥を被せるような真似もしたくない。


「今は傍にいられない父親の代わりに、とまでは言えないが。未来に戻った君達がお父さんを嫌いにならない程度には格好を付けさせてくれると嬉しいな」


 つまり親心よりも大人の責任だ。

 困っている子供を見捨てるようなことはしたくない。

 その程度の気持ちだったが、二人はとても喜んでくれたようだ。


「へへ。やっぱり、若くても父ちゃんは父ちゃんだ」

「うん。すごくパパらしいです」


 どうやら未来のハルヴィエドもあまり変わっていないらしく、少しだけ安堵する。

 


 うんまあ、そこで終わっていればよかった。

 しかしテンションが上がった夕映の一言により、穏やかな空気が一変した。


「きっと母ちゃんも、そういうところが好きになったんだな! 昔っからラブラブみたいだし!」


 いきなりブッコみに、茜が大口を開けて驚いている。


「らっ、ラブラブ!?」

「うん。娘のオレが恥ずかしくなる勢いじゃん」


 じゃん、って言われても今の茜は知らないことだろうに。

 しかし夕映は機嫌よく話を続ける。


「それに、なんかあったらすぐ父ちゃんに連絡だし。オレでも分かるって!」

「なにが!? ボクはただ、こういう時はハルヴィエドさんが一番頼りになるから!?」

「つまり大好きってことだろ?」

「そうじゃなくてぇ!?」

「結局父ちゃんと母ちゃんはお似合いのラブラブ夫婦なんだって」


 茜ちゃん、未来の娘に負けてる模様。

 それを見ていた美空が、ぷくーっと頬を膨らませている。


「……ママの方がお似合いだもん」


 こちらは神無月沙雪の娘、つまりハカフィオ派。

 夕映のハカエレ発言が引っかかったらしい。


「なに言ってんだよ。父ちゃんは母ちゃんのことが大好きなんだよ」

「パパはママが大好きなの」

「それにー? オレが陸上で一等賞とったら、いっつも高い高いして喜んでくれるんだぜ? さすが夕映だーって」

「私がピアノの発表会の時は、こーんなにおっきい花束貰った!」


 別ルートからの逆行ゆえに起こった不具合である。

 パパは自分だけのパパ。その認識から、別ルートのハルヴィエドの妻や娘が、なんか間女チックに見えてしまったのだ。


「かちーん。オレなんてさ、前の冬休み一緒にスキー行ったし! 母ちゃんも運動得意だからすげー盛り上がった! 父ちゃんと母ちゃんは揚げ鳥夫婦なんだよ!」

「あ、淡路の別荘に毎年行ってるよ! パパとママと一緒に温泉入るの!」

「あの、二人とも落ち着いてくれないか?」


 ハルヴィエドにダメージ。


「オレ、愛してるって言われた!」

「私だって愛してるって何度も言われてるもん!」

「うん、だからね」


 ハルヴィエドにダメージ。


「父ちゃんと母ちゃんは社長室でもイチャイチャラブラブしたんだぞ! 二人とも素っ裸で寝ちゃって風邪ひいたって母ちゃんが言ってた!」

「その話ボク知りたくなかったなぁ!?」


 流れ弾で茜ちゃんにもダメージ。

 真っ向からにらみ合う夕映と美空。

 その様子をあまりにもにこやかな笑顔で眺めるレティシア。


「わあ、ハルヴィエドさん、娘さんに愛されてますねぇ」

「ねぇレティ? 何で物凄い勢いでスマホをポチポチしてるんだ? 私は君をとても大切な友人だと思っているよ?」

「嬉しいです。私も貴方を尊敬すべき先輩で、大切な友達で、すっごく面白い人だと思っています」

「ありがとう。本当にありがとうだから一度スマホを置こう?」

「ああ、私の素晴らしい友達の楽しいところをみんなに知ってもらいたい……! 貴方がどんなに素敵なのか、心の赴くままに実況したいんです……!」

「もう実況って言っちゃったよね!?」





 ◆




710:せくしー

 【緊急速報】未来のハカセさん情報を入手!!!!


711:名無しの戦闘員

 おお、せくしーちゃん


712:名無しの戦闘員

 今日まじかる☆ユエちゃんがハカセの会社に来るんだったか


713:せくしー

 とりあえず詳しいことは後で説明するので大まかに

 

 まじかる☆ユエ→ママはエレスちゃん、未来で結婚していると確定!

 らぶりー♡みそら→ママはフィオナちゃん、未来で結婚していると確定!

 それぞれ別ルートの未来からのタイムトリップなので、なにかの拍子に彼女達が消えることはないでしょう


714:名無しの戦闘員

 それは一安心


715:名無しの戦闘員

 つまりフィオハカの可能性もエレハカの可能性も同時に存在しているということか


716:名無しの戦闘員

 シュレーディンガーのハカセ


717:せくしー

 まあ他にも色々聞けたのですが事件の元凶は後でいいですね

 今日はまじかる☆ユエさんだけでなく、らぶりー♡みそらさんも我が社を訪れました

 話し合いは進みましたが、別ルートからの来訪者だけに少し諍いが起こりました


  ユエ「父ちゃんが好きなのは母ちゃん(エレス)!」

 みそら「パパが、す、好きなのはママ(フィオナ)です」


 という魔法少女同士のバトルが始まっています

 それが面白くて……思わず実況をしてしまいました!


718:名無しの戦闘員

 さすがせくしーちゃん、相変わらずの模範的にゃんj民w


719:名無しの戦闘員

 駄目だこの子……でも何とかしたら俺らが楽しめないから放置で


720:せくしー

 みそら「パパはね、日本に侵略に来た時初めて会ったママに一目惚れしたの。でも首領ちゃんも大切で、悪の科学者な自分に悩みながら、色んな人の力を借りて恋人同士になって結婚したの。すごーく、すごーくママのことを愛してるんだよ」


  ユエ「母ちゃんは高校の時に夢がなくて悩んでて、それを手助けしてくれた父ちゃんに惚れたんだって言ってた。戦いとか特別なことじゃなくて、素の優しい父ちゃんを好きになった母ちゃんの方が凄いんだ!」


 お互いハカセパパが大好きで、ママのことも大好きなんでしょうねぇ

 ぐぬぬしつつ、いかにパパとママを愛し合っているかを語っています

 なおその度にハカセさんに羞恥ダメージが入っている模様


721:名無しの戦闘員

 身に覚えのない自分のloveエピソードを流されるのは恥ずかしすぐる


722:名無しの戦闘員

 そらダメージデカいわw


723: 名無しの戦闘員

 やったぜ、パラドックスとか深刻な話から一気にいつものハカセだ!


724:せくしー

  ユエ「オレと一緒にいる時間は、少し幸せ過ぎて困る。お嫁さんに出す時が怖いなぁって! だから父ちゃんのお嫁さんになるって言ったら抱っこしてくれたぞ!」

 みそら「か、会社のことは考えなくていいから、好きに生きればいい。地位もお金も、私ほど大切なものじゃないよって頭を撫でてくれました……」


 あら、今度はパパに言われて嬉しかった語録に移りましたね

 自分の方がハカセさんに愛されてるんだアピール合戦です

 子供同士だと微笑ましいですねぇ


725:名無しの戦闘員

 成人してその手の争いはだいぶ醜いからな


726:せくしー

 あ、ハカセさんがいきなり電話をはじめました


 ハカセ「ああ、ごめんねフィオナちゃん。君の声が聞きたくて。君が好きだって、噛み締めたかったんだ……」


 あれ?

 ハカセさん(現代ver)もわりと恥ずかしいのでは?


727:名無しの戦闘員

 打たれ弱えw


728:名無しの戦闘員

 そういやエレスちゃんは?

 ユエちゃん連れてきたのはエレスちゃんなんでしょ?


729:名無しの戦闘員

 もともとハカセはポエミー気質だし


730:名無しの戦闘員

 ラストバトルの時を見るに芝居じみた振る舞い絶対好きだぞアイツ


731:せくしー

 >728

 エレスちゃんならユエさんに暴露された、


「ハカセさんを喜ばせようと裸エプロンで帰宅を待ち構えていたら、偶然同じタイミングで遊びに来た猫耳ちゃんと首領ちゃんに“お帰りなさいダーリン♡”してしまいドン引きされた」


 というエピソードのせいで膝から崩れて床に転がっていますね


 エレス「ボクは、なにをぉぉぉ……!?」


732:名無しの戦闘員

 エレスちゃんのダメージもわりとでけえwww


733:名無しの戦闘員

 とんだ流れ弾じゃねえかw


734:名無しの戦闘員

 よかったね、フィオナちゃんがいなくて


735:せくしー

 代わりに様子を見に来たLリアちゃんはいますよ

 

 Lリア「裸エプロンですか……。貴女は、そういうことをするのですね」


 あれほど無表情な彼女は初めてです


736:名無しの戦闘員

 マジなハカセ信奉者だからな、あの子


737:名無しの戦闘員

 売春組織に売られそうなタイミングで救うとか

 悪の科学者ポジなのにヒーロームーブが板につきすぎ問題


738:名無しの戦闘員

 エレスちゃんキラー再臨だ!


739:せくしー

  ユエ「じゃあ、オレはエースカードを使うぜ。父ちゃんのプロポーズのセリフだ!」

 みそら「私も、負けない……!」

 ハカセ「それは本当に止めてくれないかなぁ我が娘達よ!?」


 あ、全力で止めに行きました

 ここでそのセリフを聞いたら心情的に二度と使えなくなりますから仕方ないですね


740:名無しの戦闘員

 未来のハカセ一家そんなのまで知ってるのかよ


741:名無しの戦闘員

 明け透けで壁のない仲のいい家族ですね


742:名無しの戦闘員

 ただしダメージは若ハカセに行く


743:せくしー

 とりあえず現状ではそれほど致命的な事態でないと判断できます

 クピモン関係も少し解明できそう、といったところでしょうか

 多少の余裕は生まれたような気がしますね


744:名無しの戦闘員

 つまりハカセに任せときゃ大丈夫ってことだ


745:せくしー

 そこはハカセさん達に、と言っていただければ

 私もサポートを怠るつもりはありませんから

 ただ、現状クピモンがそこまで脅威には見えません

 なのに花嵐のアリスさんが妙に拘っているというのは気になる点ですね……




 ◆





【戦闘員でもにゃんj民でもない一般社員から見る葉加瀬社長代理のこと】


 起業から三年と少しで急成長を遂げた合同会社ディオス。

 俺は設立から一年後に新卒でディオスに入社し、今は営業部で働いている。

 社会人になったばかりの頃は緊張していたが、今はのびのび。

 給料がいい、福利厚生も充実、休みには保養施設を利用できる。

 ブラック企業に入ってしまった大学の同期からは嫉妬されるレベルの優良企業だ。


 それもこれも社長代理である葉加瀬晴彦さんの経営手腕のおかげ。

 顔も頭もよくて地位も金も持ってるのに、社長代理は清掃のおばちゃんも見下したりせず穏やかに接する、出来過ぎたお人だ。

 休憩時間には俺ら男連中とカップラーメンを一緒に食べる気さくさもある。 

 俺にとっては尊敬する人なんだが、社員の中には「いや、社長代理の中身はただのぽんこつンゴ」とか言い出す奴もいるので少しムカっときたりもする。


 一つ気になる点があるとすれば、社長代理の女性関係だろうか。

 実は社長代理、冷徹な腹黒という噂がある。 

 いや、社員はそんなことはないと知っている。だけど出入りの業者の中には、そういう目で見る人も多かった。

 というのも、社長代理が恋愛的な意味で親しくしているのは、まだ17歳の神無月沙雪という女の子である。

 彼女は、高級百貨店を中核とした巨大グループ企業、【杵築・大国屋ホールディングス】の代表取締役の娘さんだ。

 美麗だけどどこか冷たくも映る容姿をした社長代理は、この神無月さんに対しては優しく甘い言葉を囁いている。

 つまり、政略的な意味合いで神無月さんを口説き落とそうとしているのだろう、と邪推する人が結構いるのだ。 


 社員である俺らからすると、そもそも年下には滅茶苦茶甘いってだけなんだけど。

 俺の弟に対しても「偶に遊びに来るといい」なんて笑顔で言ってくるんだよ、あのお人は。

 だから俺は社長代理は、いずれ普通に神無月さんと結婚するのかなー、そうしたらウチの社も安泰だなー、くらいに考えていた。


 そんなある日、事件が起こった。


「パパ、今日はありがとう」

「父ちゃん! またな」


 会社のロビーで、二人の小学生くらいの女の子が社長代理を父親と呼んでいるところを見てしまった。

 俺だけじゃなく、結構な数の社員が。

 ざわざわと騒ぐ社内、その状況で社長代理の対応はというと。


「(社員の視線が集まってる。だが、ここで父親呼びを否定すれば二人が傷付く。私の評判と子供の心。守るべきは)……ああ、君達に会えてよかったよ。いつでも遊びに来てくれ、夕映ちゃん、美空ちゃん」

「なー、父ちゃん呼び捨ててくれよ。なんか距離あって寂しいじゃん」

「わ、私も。美空って呼んでくれると嬉しい、です」

「分かったよ。夕映、美空。これでいいかな?」


 …………否定しなかった!?

 今のやりとり、一緒に住んでる訳じゃない?

 でも社長代理は結婚してない……別れた前妻に引き取られた娘!?

 いや、隠し子!?

 社内に衝撃が走る。いやいやいやいや、あの社長代理がまさか。

 俺だけでなく他の社員もかなり動揺している。

 そんな中で、十数名の社員は何故かニヤニヤとしている。そのうち一人は「ンゴンゴンゴンゴンゴwww」と笑い転げていた。なんなんだあいつら。

 この衝撃的な光景は、少なくない社員の心に刻まれただろう。

 社長代理の私生活は一体どうなっているんだろう。しばらく社内はそんな話題で持ちきりだった。


「……………………」


 あと二人の小学生女子を眺める第二秘書リリア・ヴァシーリエヴァさんは笑顔だったが、目からハイライトが消えていたことをここに記しておく。





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