10、大会の名前が長い。王子もノリノリなのか?
「で」
「‥‥‥で?!」
一回戦当日。
会場である学園に向かう馬車の中。
俺を睨みつけながら突然奇声を発するご主人様。
凄く久しぶりに口を開いたと思ったら、たったの一文字ですか?
───‥‥‥何の暗号だ?!
コレはかなりの難問だな‥‥‥。
めっちゃ睨まれてるから、この問題を外すと殺されるかもしれない。
───考えろ。
『で』とは何だ‥‥‥。
「どうなの?」
俺から視線を外す事なく、また突然口を開くご主人様。
───‥‥‥あっ!
『それで』の『で』みたいな、接続語的な意味だったのか?!
それにしても‥‥‥続く言葉を話すのが遅すぎるって‥‥‥そんなのわかるかよ‥‥‥。
「どうとは、何がでしょう?」
「一回戦。察しろバカッ」
「‥‥‥なんか、今日は暴言がストレートですね」
『バカ』とか普通過ぎてつまんない。
ボキャブラリーのかけらもない。
「うるさい」
「せめてもっと
「欲しがるな‥‥‥バカッ‥‥‥」
なんだそれ?!
───ただのツンデレみたいじゃん‥‥‥。
「なんか調子悪いですね、大丈夫?」
そういや顔も赤い気がする‥‥‥。
体調でも悪いのか?
風邪?
「‥‥‥もういい」
「はい」
そっぽを向かれました。
馬車の窓から外を眺めておられる。
‥‥‥それにしても、一緒に居て睨まれてないのは珍しい。
───やっぱりコイツ今日変だな‥‥‥。
「‥‥‥勝てそう?」
窓の外を見たままのご主人様。
───なるほど。
大事な大会が始まるから、緊張して言動が変なのかもしれないな。
「善処します」
「そう」
善処するとは言ったものの、本音を言うと1位は諦めてます。
リディアのとこの超美麗ネロさんには、今回は多分勝てないと思う。
だって一回戦は主人公リディアが絶対勝つチュートリアルだもんな。
狙うなら2位かな‥‥‥。
今日から始まる大会『王子争奪戦〜俺のハートをキャッチしろ杯〜』は俺たちを含む4チームで争われ、勝ち点方式で各競技1位3点、2位2点、3位1点、4位0点がもらえる仕組み。
最終的な順位は総合得点で決まる。
今日1位を取れなくても次戦以降で巻き返す事が可能なので、仮に優勝を目指すとしてもそんなに慌てる必要はない。
───優勝を目指すならね‥‥‥。
「ローズは、やっぱり王妃の座を狙ってるんだよな?」
ここぞとばかりに、昨日聞けなかった疑問を投げかけてみた。
ご主人様が弱ってる今ならいけるんじゃないかと思ったわけなのだが‥‥‥もちろん華麗に無視されました。
そして物凄い形相で、再びコチラに冷たい視線を向けてくるご主人様。
───おお、睨んでる睨んでる‥‥‥。
当たり前な事聞くなってか?
暫く沈黙。
「ア‥‥‥‥‥‥んた」
「は、はい」
やばい、めっちゃ怒ってる‥‥‥。
うつむき下を向くご主人様。
「‥‥‥出て行きなさい」
「‥‥‥は?」
「今すぐその扉を開けて、馬車から落ちていなくなれ」
「‥‥‥死んじゃいますって」
「うるさい、早く出てけ!」
そう言って顔を上げてコチラを向くご主人様。
その顔は───
「あの‥‥‥顔、真っ赤っかですよ‥‥‥病院行った方がいいのでは?」
元々透き通るような白い肌なので、赤くなると凄く目立つ。
そしてうつむいていた体勢からの上目遣い。
その目は何故か涙で少し潤んでいた。
何コイツ。
───‥‥‥なんか‥‥‥めっちゃ可愛い。
コレが、容姿100の実力かっ!
「‥‥‥こっち見んな、ウジ虫! クソ虫、ダニ、ナメクジ、単細胞生物! 今すぐ馬車から叩き落としてあげるから、生きてられたらウニョウニョ走ってついて来るといいわ! もう、2度と這い上がってくるな。‥‥‥馴々しく名前まで呼んで、責任取れるんでしょうね?! 消滅しろ、絶滅してしまえ!」
その後、ご主人様によって勢いよく開けられた馬車の昇降口。
俺はグイグイと押され、そこから本当に叩き落とされそうになったのだった。
───本気で死ぬって‥‥‥。
まさに狂気!
ごめんなさい‥‥‥やっぱりコイツは怖かった。
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