2 与えられた勇気 そして 交戦
ふと目にしたパネルには何人かの男性が避難する姿が写っていた。
その中にはメルフィーアがよく知っている顔もあった。
ーーーー良かった!これで戦える!!!
「ありがとうございます!さえずりさん、これで心置きなく戦えます!」
メルフィーアはどこかにいるであろうさえずりに頭を下げた。
ーーーー大丈夫ですよ!勇者様!やっちゃってください!
頭のなかで響く女性の声にメルフィーアは勇気付けられた。
「ジェネシス!行くわよ!」
『ワカッタ。サポートハ任セロ』
メルフィーアはレバーを強く握り、巨大なクリムゾンドラゴンを目的のところまで走らせた。
「いけぇぇぇぇ!!!」
メルフィーアはレバーを操作しながら、叫んでいた。
ーーーードコォォォォン!!!!
道中で石の化け物を拳で砕きながら、目的地にたどり着く。
ビル街を破壊している化け物は丁寧に鎧兜を纏い、大きな剣を振り回していた。
どこからどう見てもこいつがボスである。
ーーーーどうする?ここからだ正念場だ。
「第十二楽章!牙雨(きばさめ)!!」
ヒュンヒュン!!!
刃の雨が化け物に注ぐ。
ビルの合間を跳びながら、化け物に攻撃している影がメルフィーアの目に入った。
「・・・・・あの男の子は?」
彼女は自分の疑問を口にした。
『・・・・知ラナイ。独リデ闘ウ勇敢ナ存在デアロウ』
声の主はわかる限り彼女の疑問に応えようとしたのだろうか。
少し考え込むような音が聞こえた。
☆★☆★☆★
「だぁぁぁ!!!兄さん!どこで油売ってんだ!?」
黒髪の少年ーーーーアラトは叫んだ。おそらく彼は少年と呼ぶにしてもガタイいいだろう。
しかし、彼はまだ13歳にもなってないのだ。
ということで少年である。
彼は生まれつき身体が大きいのだ。
ビルの合間を跳びながら、隙を伺う。
ーーーーさっき、お偉いさんたちも逃げたのを見たし、兄さんと連絡つかないし・・・・このあと、どうしよう?
ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!
地面が響く音が聞こえた。
駆け込んでくるのは赤と銀を基調とした巨大な何か。
巨人と言えばいいのかロボットと言えばいいのか悩むところであろう。
しかし、アラトには正義の巨大ロボットにしか見えなかった。
幼いときに見せられた映像作品巨人ロボットと目に前にいる巨人の動きが一緒だ。
不器用ながらアラトが攻撃を仕掛けている石人形と同じものを粉砕しながら走っている。
事態が理解できないまま、アラトは巨人を見上げた。
ーーーー大丈夫。彼女は味方よ。
アラトの頭の中で優しい女性の声が響いた。
「今のはさえずりさん!?・・・・そういうことか。わかったよ」
アラトは納得したのか大きく手を振りながら大声を放った。
「巨人さーん!後はお願いします!オレは安全なところへ逃げますんで~!!!」
アラトは印を結び、術を整えると腰に差した刀を抜いた。
「第九楽章!空前絶後!」
そして、目の前の空間を切り裂くとアラトは自分の作った裂け目に飛び込んだ。
「・・・名はクリムゾンドラゴンだ。少年、覚えておいてくれ」
メルフィーアは優しく呟いた。
『メルフィーア、クリムゾンブレイドノ用意ガデキタ』
機械的な音声が流れた。
「わかった。ジェネシス。やるよ」
メルフィーアはレバーのスイッチを押し、そして豪快に操作した。
「クリムゾンブレイドー!!!!」
メルフィーアが天に掲げた剣と同じ模様の巨大な剣がクリムゾンドラゴンの前に姿を現した。
「でやーーーー!!!」
クリムゾンドラゴンはがむしゃらにそれを振り回し、大物にダメージを与えた。
ーーーーーバン!バン!バーン!!
しかし、それは致命傷には至らなかった。
『メルフィーア、クリムゾンインパクトヲツカエ』
「了解!やってみるわ!!」
メルフィーアはレバーとスイッチを操作し、叫んだ。
「クリムゾンインパクトーーー!!!!」
巨大な騎士は石人形に向かって剣を振り下ろした。
ーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
ーーーーガガガガガガガガガ!!!!!!
巨大な両手剣が細やかに振動し、石人形を叩き切った。
「やったー!!!師匠!!わたしはやりました!!!」
メルフィーアはコックピットの中で立ち上がり、飛びはねながら歓喜の声を上げた。
彼女はきっと遠くから師匠が見ていると思いたかったんだろう。
『・・・メルフィーア。頑張ッタナ』
機械的な男の声が流れた。
「残った連中片付けるわよ」
メルフィーアは強い意志で再びレバーを握った。
ーーーー今日の月は綺麗だな。
カミトは瓦礫の隙間から夜空を見上げた。
彼は数時間前、メルフィーアの呼び出した巨人に見とれてしまい、逃げ遅れた。
クリムゾンドラゴンが動いた時、建物がくずれた。そしてそのまま瓦礫の下敷きになったのだ。
「兄さん!何やってるんだ!!?」
カミトの耳に聞き覚えのある少年の声が入った。
「アラトか」
カミトは笑った。
「って兄さん。何、不敵に笑ってるんだ!!?」
「さぁな」
カミトは自分を探しに来た大柄な少年に応えた。
「瓦礫を壊すのでじっとしてくださいね。じっとしないとオレが後悔するので勘弁してくださいよ」
アラトは腰に差した刀に手をかけた。
「あぁ」
ーーーー瓦礫が崩れた時、骨が折れたんだ。動けるわけないだろ。まぁ、知らないか。
カミトは自分の上に乗っている瓦礫が破壊される様を見届けていた。
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