第21話:再突入
2日目10:00迷宮に再度潜った。
扉の前のバリケードを排除するのに時間がかかったので遅い出発になってしまった。
(このペースだと一番は厳しいだろうなあ。先に進んだ人がミスって倒される可能性もあるから、ゲームがうまくない俺は慎重に行って生存を優先しよう。)
今更急いでゲームオーバーになるよりはその方がましな案に思えた。
もちろん生存してこのゲームがクリアされるまで、少しでも先を見たいという欲求もあった。
とりあえず前回に魔物と戦った場所まで来たが、死体が骨だけになっていた。
ゲームだと普通は消えるのだが、骨だけは残っていたので何か理由があるのかもしれない。
「魔物が骨だけになっているが、これはどういう事だろうか?」
「他の魔物が食べたのだろう。迷宮内の食糧は限られているからな。」
たしかに食べないと死んでしまう、当たり前の事だがゲームとしてはそこまでする必要はないと感じた。
「今更だが、魔物って何なんだ?」
「魔物は動物に異世界の魂が乗り移って怪物と化した存在だ。狂暴になり、どんなものでも食べようになる。そして成長する。」
「それは恐ろしいな・・・成長?」
「ああ、前回排除したのはネズミの魔物だったが、成長すると巨大化したり特殊な能力を得たりして危険な存在になる。」
「となると、死体を食べた魔物が危険な存在として襲いかかってくる可能性があるという事か?」
「そうだな。」
「もしかして魔物が成長した存在が悪魔なのか?」
「そうだと言われてもいるが、全く別の存在とも言われている。悪魔の情報は全く伝えられていない。」
「ふーむ、それは困るな。」
「ただ、悪魔を倒せるのは勇者様だけだと伝えられている。だから勇者様は特別な存在なのだ。」
(なるほど、そういう設定だから勇者は特別扱いされるのか。しかし特別なスキルなどは持っていないが・・・悪魔と戦う時覚醒でもするのかな?)
「とにかく気をつけて進んで行こう。」
俺達は魔力感知のミコを頼りに先へと進んでいく。
ただ地下一階は一本道ですぐに下への階段が見つかった。
「死体を食べた魔物がいるはずだが遭遇しなかったな。」
「おそらく下層に逃げ帰ったのだろう。私達を恐れているのかもしれない。」
「恐れる?」
「死体を漁る魔物ならたいして強くない可能性が高い。大群を倒した私達に向かってくる無謀はしないだろう。」
◇・◇・◇
地下二階の探索が始まった。
降りた最初の場所は20m四方で一つだけ鉄の扉が付いているシンプルな部屋だった。
重い扉を開けると、また同じような部屋があり、それがずっと続いている。
「ずっと同じ部屋だな。ミコ、魔物はいるか?」
「魔物の気配をまったく感じません。これは不気味ですね。」
「俺達を恐れて隠れているのか?」
「そうだとしても消えるなんて事はないはずですが・・・誰かが倒している可能性もありますね。」
「誰かって・・・他の勇者達か?」
「おそらく。」
(今まで考えてなかったが、他の勇者達と道が繋がっていてもおかしくはない。攻略が速い奴ならだいぶ進んでいるだろうし・・・。ただ、昨日倒した死体を食べた魔物を倒したというならまだ近くにいるのかも?)
考えごとをしながら進んでいると先頭にいるミコが次の扉の前で足を止める。
「どうした?何かあったのか?」
「この先に4つの魔力反応があります。」
「魔物か?」
「いえ・・・この反応は人のものです。」
「ちょうど4人という事は他の勇者達・・・なのか?」
「どうしましょう?」
(別に何かあるわけではないが、競争相手と接触してもいい事はない気がする。今の状況を利用する有益なやり方があるかもしれないが、俺としてはスルーだな。)
「ここで待機して様子を見よう。先に進んで行くなら接触しないように進めばいいし、こちらに来るようなら退避しよう。」
「他の勇者様の情報を得る道もあると思うが?」
「そういう腹の探り合いは得意じゃないから、逆にこちらの情報を与えてしまう可能性が高い。すまないが今回はやり過ごそう。」
「承知した。」
(本当にそういう事が得意ならもっと世の中うまく渡れた気がする。まあ人間関係から逃げてきた結果だ・・・とはいえ今頃反省しても手遅れだけどな。)
ミコに4人の反応を常時確認してもらいながら、待機する。
しかしどうも相手も動くつもりがないらしい。
「相手もこちらの存在に気付いて様子を見ているのかもしれません。」
「このまま無駄に時間を消費するのはさすがに良くないな。」
相手と接触する前に情報があれば有利だが、扉越しではスマホの鑑定が出来ないようで、相手の姿を直接写さないといけないようだ。
(まあ相手もまだ2階でウロウロしてる奴だ。それほど一番を取ることに執着はしていないだろう。それならプレイヤー同士争う事に良い事なんてないからな。)
「よし俺が先頭に立って彼らと話をする。君たちは俺の後ろに控えておいてくれ。」
「承知した。」
「わかりました。」
「わかった~。」
俺は軽い気持ちで扉を開けた。
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