第19話:再ガチャ

俺は仰向けに倒れ込んでいた。

筋肉粒々の男が鬼のような形相で俺を見下ろしている。


「おい!いつまで寝てんだ!立てよ!」

男から怒号が響くが体中が痛くて立ち上がることが出来ない。

その状態の俺に容赦なく蹴りが飛ぶ。


「痛い!痛い!やめてくれ!」

俺は必死に懇願するが、男は馬鹿にした顔でやめる気配がない。


「弱っちい上に根性もない・・・それで騎士になろうなんて舐めてるのか?」

男はその言葉を吐き捨てて蹴るのをやめ、俺の頭を掴んで睨みつけた。


「お前は試験失格だ。早く立って田舎へ帰れ!わかったら消え失せろ!」

俺はそう言って去っていく男の後ろ姿を見て、何を思ったか呼び止めるため叫んだ。


「待ってくれ!俺の親父の紹介状は見てくれたか?先に送ったと言ってたから受け取っていると思う。確認してくれ!」


すると男は鬼のような形相で俺を睨み、

「知っている。親の力で入ろうとするやつにはたいした奴はいない。お前は田舎で騎士ごっこでもしていろ!」

「そ・・そんな。」


俺のプライドは粉々に打ち砕かれた。


◇・◇・◇


(また夢か・・。この体の記憶だろうな。感情移入のためだろうが、嫌な夢だな。)

ただ、父親の力で地元では尊敬されていたのはうらやましく感じた。


隣を見ると穏やかな表情でミコが寝ている。


(まあ今は勇者ってだけで尊敬されているから、こういう優越感を得られるのはゲームのいいところだな。)


俺は彼女を起こさないようにベッドから抜け出して、迷宮に潜るための準備をする。

服を着て手に入れたアイテムを鑑定するためにスマホを確認する。


(あれ?ガチャ回数が補充されているな。3回可能か。)

どうも一日ごとに3回増えるようだ。

集合時間の8:00まで十分余裕があるので、ミコを起こす前に引くことにした。


ガチャを引くために召喚陣のところまで移動して、スマホの画面を開くと前回と同じように起動した。

今日のピックアップキャラを確認する。


「今日のピックアップは☆3のドワーフの人形師が高確率でゲットできます!」


「自ら製作した戦闘人形を操り、時には一緒に戦います。知識もあるので賢者としても頼りになります。!」


という文言で前髪で両目を隠した青髪ショートカットの女の子のディフォルメ画像が載っていた。

ピッタリとして各部にプロテクターがついている、黒いスーツを着用している。

隣に全身鎧の騎士が立っているが、これが人形だろうか?


(しかしドワーフって背が低くて厳ついイメージあるが、デフォルメされているせいか可愛い感じになっている。実際はナナミみたいにバキバキなんだろうなあ。)


現実の姿を想像するとちょっと恐ろしくなるが、やたら強そうではある。

戦力としては☆3は欲しいが、引いてしまうと誰か外さなければいけない。


(となると似たような戦闘タイプのナナミを外す事になるな。ゲームとはいえリストラ宣告しなきゃいけないのか。)


少し心苦しいが新キャラと戦力アップに心が躍った。

いつものように念を込めてガチャボタンをクリックする。

1回・・・2回と外れ・・・どんどん追い込まれる。

そして最後のクリックで虹色に光り・・・☆3!


「よし!やはり俺はもってる!」


◇・◇・◇


スマホで手に入れたアイテムの鑑定をしていく。


「なんで☆3のアイテムなんだよ・・・。だからキャラとアイテムの闇鍋はダメなんだよ・・・。」


結局3回のガチャはすべてアイテムだった。

ぬか喜びに終わったが、中途半端に☆が低いキャラが出るよりいいし、ナナミを外す必要もなかったので良かったと言えるかもしれない。


「俺また引いちゃいました?ってイキリたかったのに・・・チートキャラになれる運はないようだ・・・。」


手に入れたアイテムと貰ったアイテムの結果は下記となった。


☆:呼び出しの指輪:装備すると対になる指輪に振動で相手に危険を伝える指輪。

☆:ショートソード+1:刃渡り30cmの両刃の剣で、名のある鍛冶師に鍛えられているため量産品より品質が良い。

☆:結界石:結界を張り、安全な場所を作る。丸一日有効、消耗品。

☆☆:感覚強化の指輪:感覚を強化し、隠れたものを見つけやすくなる。装備している間効果が続くが、魔力を消費し続ける。盗賊の職業レベルを会得しているものが装備したほうが効果が高い。

☆☆☆:完全防御の指輪:あらゆる攻撃を完全に防ぐが、自身にしか効果がなくその場から移動も出来なくなる。装備している間効果が続くが、魔力を消費し続ける。


(手に入れた指輪は癖のある性能だが、使いようによっては強力だな。ただ、基本魔力消費をするのでMPが高い俺が使った方が良さそうだ。)


ふと時間を見ると約束の時間が迫ってきたので、ミコを起こすために召喚部屋を後にした。























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