第18話:ミコ
俺はミコと一緒にベッドで仰向けに並んで寝そべっていた。
パジャマなどはないので、どちらもTシャツとパンツ姿だった。
「ミコ、狭くてすまないな。」
「いえ、もともと一人用のベッドに私がお邪魔しているので・・・。」
狭いので自然と腕同士が接触する事になってしまった。
(体温を感じる。ゲームなのに生々しい・・・これは緊張するな。幼いから変な気は起きないが、人によっては困るかもしれない。それに運営に見られているかもしれないから、すぐに寝てしまおう。)
「勇者様・・・私は何をされてもいい覚悟はしてます。」
そう言って彼女は俺の手を握ってきた。
(急なエロゲ展開?それともこの後の行動で友好度が変わったりするのだろうか?)
急な展開に困惑したが、とりあえず会話をしてみることにした。
「なぜ、そこまで勇者に尽くすんだ?」
「私は神の声が聞こえるのです。邪悪を滅ぼすために降臨された勇者様に尽くせと。」
「神の声が聞こえる?神が存在するのか?」
「もちろんです。ただ、神は名前も姿もなく、現世に干渉もできません。だからこそ神から奇跡の力を与えられ、声を聞くことのできる私達神官が人々を救い、導いていかなければいけません」
(随分と傲慢な考えだな。普通なら妄想の激しい狂信者の考えだけど、実際奇跡の力が使えるとなると神の存在を信じないわけにはいかないよな・・・。)
「聞きたいのだが、神から奇跡の力を与えられと言っていたが、それには条件などあるのか?」
「少し長くなりますがよろしいでしょうか?」
「わかった。」
「大昔にあらゆる種族が覇権をかけて、争いあっていました。しかし、私たちの祖先は争いを嫌い荒れ果てた土地や過酷な場所へと移っていきました。」
(昔話から?これ長い奴だ・・・。)
「厳しい環境の中で食糧難や病気などがあり多くの人が倒れていきました。しかし、その苦境の中で奇跡の力が目覚めたのです。」
「・・・。」
「彼らは多くの人々を救い言いました『神の声が聞こえた』と・・。」
(僧侶は苦行の中で悟りを開いたとか聞いたことがある。それと同じようなものか。)
「つまりノームは神に選ばれし種族なのです。それゆえに神の声に従うのは当然のことなのです。」
「なるほど、そうなるとノーム以外は奇跡の力を使えない?」
「いえ、私達と同じように苦行の中から奇跡の力に目覚めるのは他種族でも存在します。ただ彼らには神の声は聞こえていないでしょう。特に人間の神官は神の名や偶像を勝手に作り、人を支配するために奇跡の力を利用しています。嘆かわしいことです。」
(随分な偏見だなあ・・・まあある程度事実だろうけど。)
「なるほど・・・奇跡の発現がどう起こるかわかった。そして神の声に従う理由もわかった。」
(ゲーム上勇者の仲間が協力的でないと困るから、神の声っていうのも理由付けなんだろうけど・・・。)
「それに・・・。」
「それに?」
すると彼女は黙り、長い沈黙が流れた。
(なんだ?他に何かあるのか?促したほうがいいのか・・・それとも待つべきなのか?)
すると何か意を決したのか、俺の手を強く握ってきた。
「それに・・魔物のせいで私の母は死にました。」
(思ったより、理由が重い!)
「そう・・・なのか。つまり復讐のため?」
「神に仕える身でありながら私怨にとらわれている・・・。私の汚れを浄化するには勇者様に清めてもらうしかないのです。」
(なるほど、つまりは何かに依存しないと不安になるキャラか。)
「それならば清めなければいけないな。」
俺達は向かい合わせになり、彼女に手を伸ばす。
少し震えているようだ。
そして俺は彼女の頭に手を乗せ、
「ミコ、今までよく頑張った。」
と言いながら頭をナデナデした。
「これで清めはおわりだ。明日のためにすぐ寝よう。」
「え?それで終わりですか?」
「ああ、そうだ。俺に尽くすというなら、悪魔を倒すことだけに集中してほしい。他は不要だ。」
「・・・わかりました。」
俺達はほどなく眠りについた。
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