第2話:職業相談
俺の通う職業安定所は3階建ての灰色の建物だ。
中に入ってすぐの受付には初老の女性がおり、ここで要件を告げると関係窓口に取り次いでもらえる。
「すいません職業相談お願いしたいのですが」
「わかりました。求職番号が記載された紙は持っていますか?」
「これでお願いします。」
「では奥の6番窓口になりますので、この紙に書かれた番号までお待ちください。」
「ありがとうございます。」
渡された紙の番号を見ると「666」と記載されており、6番窓口の電光掲示板の番号を見ると「660」となっていた。
(6人待ちか・・・まだ早い方だな)
周りを見回し、座れる場所を探す。
人が多くほとんどの長椅子は埋まっていたがなんとか端に座ることができた。
(人が多いな。最近は不景気だから失業率が高いんだろうなあ・・・。スマホでも見て時間潰すかあ・・。)
順番を確認しながら時間を潰しているとやっと「665」の番号になったので、履歴書の準備をしていると、唐突に軽く肩を叩かれた。
驚いてそちらを振り向くと、真っ白な髪の毛をしたスーツ姿のにこやかな初老の男性が立っていた。
「すみません、あなたが「666」番の佐藤さんですね?」
「ええ、そうですが何でしょう?」
「私はあなたの職業相談を受け持つ上田 海里(うえだ かいり)と申します。
実は人数が多いので、次の佐藤さんの職業相談を別の場所で対応する事になりまして、案内致しますので来てくださいますか?」
◇・◇・◇
俺は上田さんに関係者以外立入禁止の地下階段へと誘導された。
地下には等間隔に同じ部屋が5つ並んでおり、上田さんは一番端にある部屋の扉を開けて入るよう促した。
「こちらへどうぞ」
部屋内には長机とパイプ椅子が二つあるだけだった。
俺と上田さんは机を挟んで向かい合わせに椅子に座った。
「今日は職業相談ということですが、どのような相談でしょうか?」
「ずっと書類選考で落ちているので、履歴書の採点などしてもらいたくて」
「では確認させていただきます。」
彼は全体的に軽く確認すると、少し考えて、
「基本的にはよく出来ていると思います。ただ、志望動機が貴社の商品に魅力を感じて志望しましたと記載していますが、これはあまり良くないですね。」
「そうなんですか?」
「会社からすると、自社の商品を知ってくれている事は重要ですが、あなたの能力でどう貢献できるというアピールの方が重要なんですよ。ですから、私はこういう能力があるから貴社に貢献できると思い志望しましたと記載する方がいいですね。」
「そうですか・・・。しかし仕事を転々としてきたので、誇れる技能が何もないからアピールできる事が何もないんですよ・・・。」
その言葉に上田さんも言葉が出ないらしく、少しの沈黙が流れた。
「あなたは派遣社員として契約を切られ、書類選考で落とされて自信を無くしているようですね。とはいえ、働かなければ金銭的に厳しいでしょう?」
「それは・・・そうですね。」
俺はうつむいたまま、何も言えなくなってしまった。
「実はあなたに提案があるのですが・・・」
「提案・・・ですか?」
「召喚士やってみませんか?」
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