#19コア目

「防御の型はこんなもんでいいだろう。次は攻撃の型だがいけそうか? シュレットなら大丈夫そうだが」


「はい、やってみます」


「では、始め!」


「はぁっ!」



シュレットは付け入る隙がないマルズレットへと攻撃を開始する。

するとやはりといった気持ちでその無機質な声を聞く。



『無属性魔法[模倣]の効果により相手の剣術を模倣しました』



顔には出さまいと、模倣した攻撃の型でマルズレットへと攻め入る。



「やっぱりな。シュレットお前俺の攻撃を見てそのまま真似てるだろ」


「な! そ、それはそうですが。何故そう思ったのでしょうか」


「昔知り合いに俺の癖ってのを教えてもらったことがある。なるほどな。俺の癖っていうのは他から見るとこうなってる訳だ」


「シュレット、攻撃した後の右足の軸をもうちょい左に寄せてみろ。素早く次の型にいけるだろう」


「は、はい!」



マルズレットは防御の型の際、疑問には思ったが後で聞けばいいだろうと思っていた。

いざシュレットが攻撃側に移るとそんな思惑は何処かへ消え去った。

少し楽しくなってしまったのだ。



「よし、いい感じだ。三十分ほど連続で攻撃してこい。全部いなしてやる」


「はい! では参ります!」



そうして攻撃を続けること三十分。身体強化を使用しているとはいえ体力は消耗する。

シュレットは尻餅をつきながら休憩していた。



「攻撃と防御どちらも型はしっかり出来ているな。じゃあ休憩後次は攻撃と防御同時にやってみよう。組手だ」


「はぁ・・・はぁ・・・わ、わかりました・・・!」



防御をしている時もうそうだったが、今回の攻撃の時もそうだ。

脳内で鳴り響く『模倣しました』の声。



走り込みをしている時は鳴らなかったのに、今回はずっと響いていた。

そして走り込みをしていた時の魔力消費は比べ物にならないくらい魔力を消耗している。



なぜこんなに魔力を消耗しているんだ、と思い込むも理由が分からないシュレットである。

そうして十分の休憩後、マルズレットから再び声が掛かり組手を開始した。



「おらっ、どうしたっ! 防御ばっかりじゃ攻撃なんてできないぞっ! うらっ」


「くぅっ、ま、まだまだっ! あいやぁっ!!」


「おぉ! いいねぇいいねぇ! そうでなくちゃ面白くない!」



右へ左へ攻撃してくるマルズレット。防戦一方のシュレット。



状況の立て直しを図り、バク宙しながら後ろへ飛び、

後ろに重心が傾いている勢いのまま、それを利用するが如く強引に身体を前へと引っ張り、

勢いを付けた体勢でシュレットは、隙が見えたと思った右の脇腹目掛けて攻撃を謀る。この間一秒。



普通はできないスピードだろう。身体強化が成せる業である。



「この隙が見えると思ったぞ」



と言いながらマルズレットは、左足の軸を回転させ、その勢いのままシュレットを投げ飛ばす。



シュレットはハッと気づいた時には目の前に木剣が迫っていた。

咄嗟の判断で身体の目の前に短剣を構え、バックステップで後ろに勢いを逃した。



だが、直撃した勢いは殺せなかったのか、そのまま庭の端まで飛ばされていた。

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