お分かりですか

 自らの抱えきれぬ焦燥感を罪悪感として他人に肩代わりさせることが、どれほど卑怯なことなのか、お分かりですか。

 思い通りにならぬからと暴力で他人をねじ伏せることが、どれほど惨いことなのか、お分かりですか。

 守るものがあるために力に屈服せざるを得ないことが、どれほど悔しいことなのか、お分かりですか。

 いいえ、お分かりにならないでしょう。

 お分かりになるはずがないのです。

 わたくしたちのような者共の、声が聞こえていたならば、決して、このような世になりませぬ。

 人は死にませぬ。人を殺しませぬ。

 負わなくとも良い傷を抱えて、地獄の底を、這いつくばるように生きませぬ。

 悔しくて、たまらないのです。もうずっと、この身に有り余る思いなのです。

 卑怯者に抗う勇気も持たぬ己が憎いのです。

 叶うことなら、痛みも恐れも持たぬ身体に、何者にも屈さぬ心に、わたくしはなりとうございます……。

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