追放された"最弱"冒険者、実は【水神の愛し子】だった。~水を自由に操れる『神力』を使って”最強”となりペットの聖獣と世界を無双する~

蒼良美月

第一章

第1話・追放

「アレックス。お前にはこのパーティーを抜けてもらう。お前のような、お荷物はこのパーティーにはもう必要ない!」


 俺達は田舎の辺境で生まれ育って「一旗上げてやるぞ!」と息巻いて王都を目指し、田舎を出て三年になる。


 そして俺達は冒険者となり、一緒にパーティーを組んでいた。

 そんな中やっとCランクへの昇級試験を目前に控えているところだった。


 俺達は物心ついた小さな頃からずっと今まで一緒に頑張ってきた。


 突然俺にクビを言い渡した男が、このパーティーのリーダーである剣士「ブラッド」で、タンク役の大男「ゼント」と、器用に何でもこなし要領の良い弓使いの「フレドリー」、僧侶の「マルセル」と、荷物持ち兼、雑用係の俺の5人のパーティーだった。


 思えば俺はあの辺境の田舎にいた頃から、みんなの中ではをしていた。


 俺以外は、みんな子供の頃から運動神経も良く体格も立派な子供だった。

 その中でも特にリーダーの「ブラッド」は剣の才能も優れていて、村の「鑑定の儀」では「剣士」を授かったぐらいだ。


 そう「鑑定の儀」の時だ。


「剣士」や「弓使い」、「盾役」や「僧侶」と言う華々しい鑑定結果を受けた彼らとは違い、俺の受けた鑑定結果は「水の子」だった。


 当時「なんだこれ?」と思ったが、に「気にするな!」と、声をかけられ、 

 一緒に「Sランクパーティー」を目指しこの王都にやって来た。


 そんな俺は、このわけのわからない「水の子」と言う鑑定結果を三年経った今でも、よくわかっていないのだ。


 ただ、「欲しい時に水が出せる」この能力を買われて、俺はパーティーでの雑用係を任されていた。



「お前のような、水しか出せないようなクズはこのパーティーはもう必要ないんだよ! 俺達はもっと上を目指さなくてはいけないんだ。だからお前のような、お荷物に構っている時間はない!」

 リーダーの「ブラッド」が冷たく言い放った。


「そうだよなぁ。水なんか別に持っていけばいいだけだし。お前なんかいても何の役にもたっていなかったしなぁ。はっきり言ってお荷物だったんだよ。昔っからな!」


 薄ら笑いを浮かべながら、弓使いの「フレドリー」が俺を見下しながら罵った。


「お前が、一緒に遊んでくれって泣いてついて来たから、俺達は子供の頃もことに、こいつ今までずっと気づかないんだもんなぁ。本当に、まぬけで、鈍臭いやつだったよ」


 僧侶の「マルセル」が言った。


「わかったらさっさと出て行ってくれないか? そして、二度と俺達の前にもう現れないでくれ。子供の頃から、いつも俺達の後を泣きながらついてくるお前が本当にウザかったんだ!」


「やることと言えばいつも荷物持ちと、雑用ばかり、お前がいても邪魔なだけだったんだよ! そろそろ、もう寄生はやめてもらっていいかい?」


「まぁ三年も面倒を見てやったんだ。感謝しろよ? 同郷のよしみで何も出来ない、水しか出せないお前を、憐れんでパーティーに今までおいてやってたんだからな!」



 口々に、みんなが俺に言い放った……





 ……そうか。

 友達と思っていたのは俺だけだったんだな。


 俺はみんなのお荷物だったのか。

 今までみんなの足を俺が引っ張っていたのか……



「わかったよ。出て行くよ……」


「今まで悪かったな。ありがとう」


 俺は込み上げてくる涙を抑え、一気にしゃべり、逃げるようにみんなの前を去った。






 部屋に戻った途端、俺はベッドの布団に潜り込み泣いた。


 なんで俺は、こんなわけのわからない「水の子」なんてスキルだったんだ!


 俺は悔しくて、激しく胸の中で荒れ狂うモヤモヤした葛藤を、何処にもぶつけることができず、そして、自分の情けなさと、不甲斐なさに落胆し大声を出して泣き続けた。


 何で俺はこんな「水の子」なんかのだったんだーーーー!! 






 ……そしてそのまま俺は寝てしまったようだ。


 ────「アレックス〜アレックスやーー?」



「ん? 誰かが俺を呼んでいる?」


「おーーい。アレックスや」


「ん? 誰だ?」


 目の前に長い髭のおじいさん? のような人が立っていた。


「何処だ? ここは?」


 辺りは真っ白で何もない。


「アレックスや、お前に言い忘れていたことが実はあったんじゃよ」


「ん? 言い忘れていたこと?」


 でも、このじいさん誰だ?


「すまんなぁ。儂が言い忘れていたせいで、お前に迷惑をかけてしまったなぁ」


「何のことだ? 何を言っているんだ?」


「お前のその『水の子』のスキルのことじゃよ」


「このスキルが何か? あるのか? こんな最弱スキルに……」


「すまんのぅ。実は言い忘れておったが、その『水の子』スキルを使用すれば、何でも思い通りになるんじゃ。『水の子』とは思った通りに水の力を操れる力のことだ。」


「は?」


 何言ってるんだ? このじいさん?


「例えばだが『水の子』スキルを使って、剣を振るうと、水の力が剣に宿り剣が自在に動く。『水の子』スキルを使って、土を練れば、叩いても割れないぐらいの強い石ができる。『水の子』スキルを使って農作物を育てれば、に美味しい農作物ができる」

「まぁそんな感じで、お前が『水の子』を使用すると、それに水の力が宿ると言うことだ」



「は? 何それ? 意味わかんないんだけど……」


「儂が言い忘れたミスのせいでお前に迷惑をかけてしまったお詫びに、その力を強くしておいたからな。そして、その力はいくら使ってもようにしておいた。そのくらいで勘弁してくれんかのぅ? 本当にすまなかったのぅ」


 じいさんは、申し訳なさそうに俺に謝った。


 訳のわからない俺は、見ず知らずの老人にしきりに謝れた為、ちょっと申し訳なく思い


「そんなに謝らなくてもいいですよ。大丈夫ですから」と答えておいた。


 どうせ、俺なんか雑用ぐらいしか出来ない弱い男だし……

「水の子」のことだって、使っても減らないようにしてくれただけでじゅうぶんだ。


 思った通りに水を操れる?

 何だそれ?



「では、アレックスよ、儂はそろそろ帰らねばいけない。達者で暮らせよ。そして、そのお前の力は皆の為に使うんじゃぞ」


 そう言って、その老人は消えた。





 ───「はっ! 夢か!」



 目を開けたら、いつもと同じ古ぼけた薄暗い俺の部屋だった……

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