あれは何だったのか……
喜多里夫
第1話 留守番をしていた時に
もう今から半世紀近く昔の話になります。
私の両親は共稼ぎで、私は小学校から帰ってきても家には誰もおらず、一人で留守番をしているような日がたくさんありました。私には弟もいたのですが、これは弟も遊びに外へ出て行って、家にいない時に限って起こるのです。
誰もいない時に限って、私の名前を呼ぶ声が聞こえてくるのです。
おかしい。
家には私以外、誰もいないはずなのに。
老婆のような、あえて言えば、私の祖母のような声でした。
私が子供部屋にいる時に、奥の方の仏壇のある部屋の方から聞こえてくるのです。
ちなみに返事をしたことはありません。
子供心に、返事をしない方がよい、と思ったのでしょうか。
もし返事をしていたら、返事をして奥の部屋まで行っていたら、私は何かを見たのかも知れません。
それともこれは、ただの幻聴だったのでしょうか。
この家には、私にとってもう一つ怖いことがありました。
一人で子供部屋にいる時に、庭の砂利をザッ、ザッと踏んで玄関に向かって歩いてくる音がするのです。
お客さんかな、と思って玄関に回っても誰も来ない。
そんなことが何度もありました。
ある時などは、確かに人影を見たのですが……やはり誰も来ない。
あれは、ただの幻覚だったのでしょうか……。
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