うちんと 続
侑李
第二部 第一章
お姉ちゃん
※今回から読んでもらう方にご説明すると、この世界は女系社会です。葛西冬未、隼瀬夫婦のダブル主人公です。話の繋がりはあったりなかったりします。今作は前作最終回の少し後より始まります。
----------------------
2016年 夏
学校も幼稚園も夏休みというわけで、3人の子供達全員連れて買い物に来ている隼瀬。
「芳美!走り回らん!あぶにゃあでしょ!」
「ねーねもはしっとったい」
「ねーねはあんたがどこさんでんはってかんごつ(あちこち行かないように)見てくれよっとたい。本当ごめんね、陽葵」
「んねんね、パパは璃華ばだっこしよるけん大変だけんね」
「本当優しかね陽葵は」
「私なお姉ちゃんだけん。パパ、芳美連れてお菓子んとこ見てきてええ?」
「うん、決まったらパパんとこ来にゃんよ」
「はーい、ほら芳美、行くよ。ねーねの手ぇ離しちゃダメだけんね」
芳美の手を握って、お菓子コーナーへ連れていく陽葵を見て、本当すっかり頼れるお姉ちゃんになったなと思う隼瀬である。して、陽葵が芳美を見てくれている間に妻や子供達の栄養バランスも考えながら、食材を選んでいく隼瀬。高校生の時に妻の冬未と結婚して以来、というかその前に同棲を始めた時から彼はずっと主夫(結婚後は専業)をやっていた。とはいえやはり日々の献立には1番悩むものだが、それでも毎日ちゃんとできているのは我ながら褒めてやりたいと隼瀬は思う。そのうち、1個ずつお菓子を持って陽葵と芳美も戻ってきて、買い忘れなどを確認しながらレジで精算して家に帰る。
帰宅後
「それ食べたら歯磨きせにゃんよ」
お菓子を食べる子供達に言い聞かせ、璃華も寝たというわけでその間に洗濯物を取り込む隼瀬。
「隼瀬、暑かね」
隣で同じように洗濯物を取り込みながら隼瀬に声をかけるのは親友の三森充希。彼も彼の妻の咲良も隼瀬、冬未にとっては親友で、充希達には陽葵と同級生の長男、陽斗と、璃華と同級生になる長女、弥咲の2人の子がいる。
「うーん、もうずっとクーラーつけっぱなしだん」
「うちもうちも。璃華ちゃんな寝とっと?」
「うん、だけん今んうち洗濯物入れよう思て」
「そうね、僕もちょうど弥咲寝たけんが入れとこう思て。そっちな3人だけん洗濯物も大変ね」
「ほんなこったい。ほんで芳美なんかすーぐ汚すけん。そん度に陽葵が叱ってくれよるばってん」
「陽葵ちゃんすっかりお姉ちゃんね」
「あんまお姉ちゃんだけんとか気にさせんごつしよるばってん自然となんかしてくれるごんなったつよね」
「へー、陽斗なんかあれでまだまだ甘えたさんてから」
「それもかわいかたい、僕も冬未も陽葵があんましっかりしてきたけんちっと寂しかし」
「ははは、あんた達親ん方が子離れできんとだろ」
「ははは、かもね」
主夫同士、なかなか話は止まらず、痺れを切らした陽葵と陽斗がそれぞれパパを呼び、家に入った頃には1時間近く経っていた。
「パパ、はるちゃんパパと仲良かつは知っとるし、璃華が起きたっちゃ私がおるけんよかばってん、時間ちゃんと見てはいよ。ほして水も飲まんで熱中症なったらどうすっと?ママもまだ帰らんとに私達子供にでくっとも限界のあっとだけん」
「はい、すんません・・・」
陽葵に真っ当な理論で説教され、返す言葉もない隼瀬である。
「分かればいいと。よしよし」
陽葵がパパをよしよしし、それを真似して自らも同じようにする芳美。その幼い手の感触にもっとしっかりしないとなと思う隼瀬であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます