34話「見えない脱出!」
『よし、ポクに任せるでふよ!』
「早く! 早くフー二!」
『わかってるでふよ。物事には順序ってものが――』
「いいから早く! いつものアレを出して?」
今回に限っては亮太がピンチだわ。
いや、前にも狼に食べられそうになったり大変な時はあったけども。今はそんな事、考えてる場合じゃないわね。
とにかく、この場を切り抜けられる何かを……。
そう思いながら私はフー二を見上げる。
『今回のスキルはでふね~』
フー二は、いつものように呑気に妙な踊りをしながら勿体ぶっている。
私は少し焦らせるように強い口調で言い放った。
「フー二! 今は遊んでいる場合じゃないの。その踊りと決まり文句は後で暇な時に、いくらでも聞いてあげるから! 早く神様ショップを出して」
『ふにぃ……。わかったでふ』
フー二はあからさまに落ち込むと、渋々神様ショップを目の前に出現させた。
マジックハイド――30,000円。
『ザ・マジックハイ――ぐヴォォォ』
どうしてもそれを言いたいのね。
私はフー二が喋っている途中で、クレジットカードを口に突っ込んだ。
すると瞬時にフー二の体は光り出し、亮太にスキルが行き渡った事を現していた。
「ふぅ……」
安心した私は液晶に目を移そうとした。
するとフー二は、何やら不服そうに涙混じりに口を開いた。
『安心してる場合じゃないでふ! ポクの事を邪険にしたらバチが当たるでふよ!』
「へぇ~バチが当たるねぇ。どんな?」
フー二をからかうように目線を向ける。
『急にタライが降ってきたり、蜘蛛が落ちてきたり、爆発したり、でふよ!』
「なにそのバラエティみたいな罰! 最後のはちょっと怖いけど」
『ふ、ふに。怖いんでふよ。だからポクを邪険にしない方が身の為でふ!』
「あ~はいはい」
私は呆れるように軽くあしらうと、フー二から液晶に再び目を移した。
『ふくぅ……。リョウコちゃんはわかってないでふね。神様がどんなに怖いかでふ』
「だってフー二は、その神様の……使いなんだよね? じゃあそんなに怖いバチは当たらないわよ。だってフー二はそんなに悪い子じゃないもの。うふふ」
『ふくぅ……』
۞
〈スキルを習得しました――マジックハイド〉
突如、脳裏に響くその機械的なアナウンスに、俺は慌ててステータスを確認する。
マジックハイド――魔素の塊が自身と近くにいる味方の周りを包み込み姿を隠す。敵意がある対象から身を隠す事ができ、ピンチを乗り切る事が出来る。
俺はそれを確認した瞬間、迷わず使った。
――マジックハイド!
魔素を集めるイメージと共に、心の中でそう唱えた。
すると俺たちの体は透明化された。
「い、いないぞ!」
「なにっ!? やっぱり逃げやがったのか? でも一体誰が……」
危機一髪だった。
もう目の前に衛兵が来ていた。
瞬時に透明になった俺たちの姿は、衛兵には見えず、コルックが逃げたと思っているようだ。
――ふぅ。
心の中で一息吐く。
「これどうなっ――」
姿は見えなくても声は聞こえるはずだ。
普通に喋り出したルルの口を、慌てて手で塞いだ。
そして口に人差し指を重ね、静かにと合図する。
俺たちにはお互いの姿が見えている。
「今声が……」
衛兵が牢屋の中に入ってきた。
俺たちは、壁に背をつけゆっくりと忍び足で牢屋から出る。
そして、衛兵が牢屋の中に完全に入ったのを見計らうと、牢屋の扉を閉めて鍵をかけた。
「なっ!? どうなってるんだ!?」
そして俺たちは通路を走り抜けた。
「おい! 何かいる! 捕まえろ!」
「何かって……」
「おわっ!?」
その叫び声にあたふたする衛兵に、ルルがぶつかってしまった。
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