25話「謎のメッセージ」

〈スキルを習得しました――ダンジョンズアイ〉


 そのアナウンスにステータス画面を開き、習得したスキルを確認しようとした。

 すると、続けざまに聞きなれないアナウンスが俺の耳を占領する。


〈通信メッセージが届いています〉


 俺は魔ブーストを切り、体を止めるとステータス画面を見つめる。

 するとそこには見覚えのないメールマークのアイコンが点滅していた。そのアイコンの右上には数字で1と表示されている。

 スマホとかでよく見る、メッセージが何件あるとかいうアレによく似ている。


 俺はそのメールアイコンに触れてみる。

 すると別ウインドウが開き、メールでいう件名のようなものが表示された。


『リョウへ――神の使いフー二より』


 フー二って誰だよ? それに神の使いって?

 宛先は間違いなく俺だ。間違いメールとかそんなんじゃない。


 俺は恐る恐る、その件名を優しく指でタッチする。

 すると、ゆっくりと目の前の空間に何かが現れた。ホログラムだ。青色の半透明で、羽の生えた妙な生物? が語りかけるように音声が流れた。


――――――――――


 リョウへ。


 ポクは四女神サリア様の下僕、フー二でふ。リョウは知らないかもしれないけど、ポクたちはずっとリョウを見守っているでふ。

 この通信メッセージは、サリア様に特別に少しの間だけ許可を貰って使ってるでふ。あんまり時間がないから要件だけ言うでふ。

 近々ポクたちは、そっちに行くかもしれないでふ。でも幻惑の瞳がなきゃポクたちを見つけられないかもしれないでふ。

 いいでふか? ポクたちがそっちに行くまでに幻惑の瞳を探し出すでふ。幻惑の瞳は、紫色のまん丸い瞳の形をしている羽が生えたモンスターでふ。しっかり探しておくでふよ。

 ではまた連絡するでふ。バイバイでふ。


 フー二より。


――――――――――


 そこで通信メッセージは終わっていた。


 状況を理解するには時間が必要なようだ。

 四女神サリアって、あの無愛想な女神だよな?

 変な喋り方だったけど、"ポクたち"って言っていたな。その神の使いフー二ってのと、誰が来るんだ? 四女神サリアか? いやいや。あの無愛想な女神には、頼まれても会いたくはない。

 あの恐怖を感じる表情。今でも忘れない。

 冷めきった顔、ピクリとも表情筋を使おうとしない。


 それに、フー二とかいうやつも面識ないし。何で急に通信メッセージなんてもんが届いたんだ?


「あ!」


 もしかして……支援者と何か関係があるのか? あの通信メッセージに映っていた"生物"が支援者なのか?

 でもあんなやつ見た事ないしな。


 そういや、こっちに来るって言ってたよな?

 どこにいるやつなんだ? 異世界であるこっちに簡単に来れるのか?

 それに"幻惑の瞳"ってなんだよ……。


 俺の頭の中は、ハテナマークで埋め尽くされていた。

 いきなり沢山の事を言われても理解が追いつくわけがない。


「紫色の瞳の形をしている羽が生えたモンスター……ね」


 そんなのどこに……と思いながら辺りを見回す。するとふと"悪魔"が目に入る。


 なんという事でしょう……その特徴がそっくりだっだ。

 だけどモンスター? こいつ、モンスターなのか?

 いや、でもこいつは冒険者ギルドから貰ったものだしな。モンスターなんて一言も……。


 そういえば、初めにこいつを冒険者ギルドから貰った時にはなかったのに、知らない内にてっぺんに金色の触覚みたいなやつが生えてたんだよな。

 他の冒険者のアイちゃんとは、どこか姿形が違う気がするし。それも知らない間に成長したって事か?

 確か受付嬢が言っていたもんな。アイちゃんの中には成長するのもあるとかないとか。


 でも、だとしても、フー二とやらが言っていたやつと関係あるのか? そうは思えないけど……。


 わからなすぎる。

 一度に色々情報を与えないでくれ。俺の頭はそんなに情報処理能力が高くないんだ。


「はぁ」


 俺は自分の処理能力の低さに半ば呆れながら、髪の毛をくしゃっと乱暴に手指に絡める。そして再びステータス画面に目を移した。


 考えていても仕方がない。

 今はとにかくコルックを助ける事に集中しなくては。


 まずはスキルだ。

 通信メッセージの事ですっかり忘れていたが、習得したスキルを見てみる事にする。


 ダンジョンズアイ。

 オート発動で、未発見の建物の位置を特定する……か。

 これまた便利そうなスキルだ。


 とりあえず辺りを見渡してみる。


「……あれ?」


 何も見えないぞ。オート発動じゃなかったのかよ。

 いくら見渡しても何も見えない。特に建物がピックアップされるわけでも、何か表示されるわけでもない。


「おかしいな……」


 試しに目に魔素を集めて集中してみる。

 目を閉じて集中。

 ……感じる。

 何かが見えるような気がする。


 俺は目を開けると、何もなかった野原に薄らと赤い光柱が天に伸びていた。

 しかも一つや二つじゃない。すぐ近くのお城の中心には青色の光柱が伸び、その周り、数百メートル先まで、見渡す限り沢山の赤色の光柱が伸びていた。あの赤色のやつが未発見の建物だろうか。

 発見済の建物は青色の光柱で表示されるようだ。


 しかしすごいスキルだな。まるでゲームの世界のようだ。さっきまではそんな光柱見えるどころか、辺り一面緑一色だったのに。今は色鮮やかだ。

 思わず自分の目を触ってみるも、変わった様子はなかった。


 そして俺は、今度は目の集中をやめてみる。すると、無数に伸びていた光柱が全て消えた。

 なるほど。このスキルはどうやらオンオフが切り替えられるタイプのようだ。

 全然オート発動じゃないし。いや、正確には一度発動したらオート発動らしいが。

 必要ない時にはオフにしておけって事か。


 俺はもう一度、ダンジョンズアイをオンにすると、一番近くにある赤色の光柱の元へ向かった。


「おー、まじであった!」

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