第45話 愛花の決意

「この屋敷で起こっている問題って何だ?」


もしかして使用人の1人が全く仕事をしないことか?

いやそれは拓夫をクビにすれば解決だから違うか……


それなら俺のお見合いの件と言うか、無職だと思われている件か?

いやでもこの件は実際問題俺は無職じゃなくてvtuberって仕事をしているし、何ならお見合いの件はもう断ってるから違うか……


ならアレか!使用人長が拓夫を狙っている件か!

実は結構前になるのだがこの屋敷に来た時に、拓夫と遊んでいると何故かよく使用人長とすれ違ったり、話しかけられたりして、それでその事が気になって俺が直接使用人長の元に話を聞きに行ったら、案外ポロッと拓夫の事が好きな事を話してもらった。


何でも使用人長はダメ男がタイプらしくて、まともに仕事をしないだけでは飽き足らず、自分達の雇用主に対しての態度の悪さを見て、使用人長はそんな拓夫のダメ男さに胸を撃ち抜かれたらしい。


…………けどコレって問題なのか?


いやまぁ50を過ぎた婆さんが30代の男に職場で色目を使ってるのは問題っちゃ問題だけど、それは拓夫からしたら問題だろうけど屋敷的にはそこまで問題じゃないよな。


と言うか使用人長と拓夫には悪いけど、わざわざそんなしょうもない事で犯人もこんな意味深なメッセージを残さないだろう。


……多分


ならどれだ?


そんな風におれが頭を捻らせていると、おれの隣で一緒に考えていてくれた真冬が、何かに気づいたのかハッとした様な表情をした。


「夏兄わかった!」

「えっ!本当か真冬」

「うん。多分だけどアレじゃないかな?ほら今お母さんの家何でかわからないけど、みんな静かになっちゃってるじゃん。それじゃないかな?どうかな夏兄?」

「あーなるほど……そうかそれかー」


でもその件ってどう解決すればいいんだ?


激おこぷんぷん丸な大爺様を宥めればいいのか?それともアレか?もっと根本的な解決をしなきゃいけないのか?


ならまずは愛花ちゃんに大爺様と言い合っていた事を聞きに行かなきゃ行けないけど……


普通そんな事年に1回か2回しか家に来ない親戚に話すか?


いや絶対に話さないよな……


ならいっその事大爺様にでも聞きに行くか?

いや絶対面倒くさいことになるからコレだけは無いな。


うん無い無い!


けどだからと言ってここで何もせずにいたら何も変わらない、そう考え俺はその場で立ち上がった。


「じゃあお兄ちゃんは今回の件さっさと解決してくるわ」


そう言って俺は真冬の頭を軽く撫でた。


頭を撫でられた真冬は顔を少し赤らめて満面の笑みを返してくれた。


「頑張ってね夏兄!もし何か困った事があったら私も手伝うから何でも言ってね!」

「ありがとな真冬。困った時は俺も真冬の事遠慮なく頼らせてもらうな」

「うん!」


という訳で俺はかわいいかわいい妹からのエールを受けて、俺は部屋を出て歩き始めた。


そうして俺は心の中で何度もかわいい真冬の笑顔を思い出しながら、愛花ちゃんの部屋へと向かった。



愛花ちゃんの部屋の前に着くと俺は軽く扉をノックした。


「愛花ちゃんちょっと今いいかな?」


俺は前回扉をノックをした時反応が良くなかったことから、今回もすぐに愛花ちゃんが部屋から出て来てくれるとは思っていなかったのだが、今回はノック一回で扉が開かれた。


「……」

「愛花ちゃんちょっと話があるんだけど今いいかな?」


俺が愛花ちゃんにそう聞くと、愛花ちゃんはいつものロボットの様な無表情で首を縦に振った。


「よかった。それで話したくなかったらいいんだけど、さっき大爺様と何か言い合いをしてた様だけど、何を話してたか聞いてもいいかな?」

「………………大丈夫」


その愛花ちゃんの答えに俺は胸を撫で下ろした。


「それじゃあ早速質問なんだけど、愛花ちゃんが大爺様と話してた内容って何なのかな?」


そう聞かれた愛花ちゃんは少し考えたのち話し始めた。


「実は私がしている趣味が大爺様にバレてしまって、それで大爺様からその趣味を今すぐ辞めろと言われまして。それで……」


そう言うと愛花ちゃんは大爺様に言われた事を思い出したのか、顔色を悪くし俯いてしまった。


「その趣味っていうのはもしかしてvtuberのこと?」


俺がそう聞いた瞬間先程まで落ち込んでいた愛花ちゃんの顔が、暗い表情から驚きと恐怖心の2つが混ざり合った様な何とも言えない表情になっていた。


「ど、どうしてお兄さんがその事……」


そんな少し怯えている愛花ちゃんを見て、俺はやってしまったと後悔した。


俺自身がvtuberとして結構特殊な位置にいて、ぶっちゃけた話毎日の誹謗中傷に、運営からの対応それに過去には殺人予告なんかも来たことがあった為、正直真冬や両親に迷惑がかからなければ、身バレぐらいどうでもいいという考えだった為、一般のvtuberがいきなりリア凸された時の恐怖心を、考慮しておらずただでさえ落ち込んでいる愛花ちゃんに、いらぬ恐怖心を植え付けてしまった事を後悔し、すぐに謝罪とどうして俺が愛花ちゃんがvtuberをやっている事を知っているかの経緯をゆっくりと説明した。


そのおかげで愛花ちゃんの顔からは恐怖心がなくなり俺は安堵した。


「ごめんね怖がらせちゃって」

「いいえ大丈夫です」

「それで愛花ちゃんに聞きたいんだけど、愛花ちゃんはvtuberをやめるつもりはあるの?」


そう俺が聞いた問いに対して愛花ちゃんは、今日聞いた中で1番はっきりと宣言した。


「絶対に辞めません!」

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