最弱の精霊に転生したけど強くなりたい~異世界精霊と泣き虫の魔女~
すー
第1話:転生の丘
その丘には一本の立派な木が立っている。
葉が枯れることはなく、
花が咲くことも無いが、時より実をつける。
それは果実ではない。
初めは透き通った雫のような見た目だ。
雫は次第に膨らみ、それと共に中身の形が顕になっていく。
姿は人であったり、獣であったり、虫であったり様々だ。
それらは人と契約を交わし、共に生き、共に戦う精霊と呼ばれる存在である。
その立派な木は人々に世界樹と名付けられ、精霊界に在る伝説の存在として語り継がれていた――
(ここはどこだろう)
いつの間にか俺は暗闇の中に居た。
見えない、聞こえない、痛くない、何も感じない。
そして不安もない。
まるで母のお腹の中に戻ったような安心感。
断片的な記憶は思い出せた。 しかし具体的な名前や光景がテープを貼られたように見えなくなっている。
(あ、俺生まれる)
どくん、と何かが脈打った。
漲る力、俺は不慣れな体で暗闇を破った。
「おはよう、おめでとう」
目の前に現れたのは美しい女性だった。
「ようこそ、精霊界へ」
――ここはどこ?
「ここは精霊が生まれ、住まう世界」
――人間はいないの?
「人間? ここにはいないさ」
――もしかして俺も……?
「そう、もちろん君も精霊だよ」
――精霊……何をすればいいんだろう……。
「君はここで好きに過ごして良い。 惰眠を貪るもよし、鍛練するもよし」
「もしも強くなりたいなら
「精霊は人間のパートナーを持つこともできる。 人間はみな精霊と契約を交わす。 そして共に戦う道もある」
――戦うのは怖いな
「応じる必要なんかないよ? 選択権は君にある」
歩きながら彼女は質問に答えていく。
道中に人工物はなく、夜の森が続く。
「さあ、着いたよ」
彼女の言葉と共に森が開けた。
そこでは種族問わずたくさんのおそらく精霊が過ごしていた。
――ここは?
「人間風に言えば広場みたいなものかな? みんな気の良い仲間たちばかりだから気軽に話してみるといいよ」
それじゃあ、と言って彼女は去って行ってしまった。
――ええ? この後一人なの……?
さてどうしようか。
とりあえず様子見しようと考えていたが、
「おい、新人」
一匹の蜥蜴に声を掛けられた。
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