第10話 「手際」
グラニュールの胴体に
これで何体目だ? 見かける度に殺して来たが、五十ぐらい仕留めたところで数えるのを止めた。
群れないから仕留める手段さえあればどうにでもなるのが救いだな。
手際は良くなったが油断はしていない。 上の連中に比べれば楽に仕留められはするが、一撃でも掠れば即死する威力の攻撃を繰り出す化け物だ。 油断は即死に繋がる。
レベルはそろそろ二千を超えそうだ。 千を越えた辺りで上がり辛くなった。
一応、頑張ってレベリングしたが、ステータスは大して上がらず
上がっているのは『傲慢』、『強欲』、『憤怒』の三つだ。
理由に関しても想像は付く、仕留めた際の優越感、次の獲物を求める貪欲さ、最後にグラニュールが死んだ後に残骸になる姿を見る度にアルフレッドの死に際が思い起こされ怒りが湧き上がるからだ。
お陰で
もしかしたら俺はレベリングを楽しんでいるのだろうか? 免罪武装に感情を喰われている状態なので、自分で自分の抱いている感情が分からない。 楽しんでいるのかと聞かれれば否定はできないが、肯定も難しい。 もう俺自身が何を思っているのかさっぱり分からないのだ。
取りあえずの目的としてここから出る事には変わりはないが上の連中を捻り潰してアルフレッドの仇を取るのは決めている。 正直、今の段階では話にならないが、他にやる事もないので仕方がない。
本音を言うと免罪武装の所為でアルフレッドの事ですら単なる記憶に置き換わりつつあった事もあって、死んでもいいといった気持ちにすらなっていた。 その場合はあの世でアルフレッドに詫びよう。
そんな気持ちで俺は今日もグラニュールを探しては仕留めて回っていた。
どれだけの日数、ここを彷徨ったのだろうか?
もう日付の感覚すら曖昧なのでもしかしたら何年か経っているかもしれない。
ステータスを確認すると俺のレベルはようやく三千を突破した。
身体能力も平均三万程になった。 初期と比べれば結構な数字だが、ここまでやってこの程度ならもう見切りを付けた方がいいのかもしれない。 グラニュール相手に勝てているのは
その為、方針の転換が必要になりつつあった。
俺自身の成長に期待できないのなら武器の成長に期待するべきだ。
特に
――で、最終的に俺が目を付けたのは
前者が『傲慢』後者が『強欲』を司っている。
幸か不幸かこの二つに限っては効率よく上げる手段が存在した。
ところで話は変わるが、ここに棲息しているグラニュールを俺は結構な数仕留めている。
にもかかわらず減っていないのはどういう事だろうか?
ゲームみたいにリポップする? それはある意味では正解だった。
連中は定期的に壁から排泄されるように産み落とされる。 生まれたては他に比べるとステータスが低く、戦闘経験もないので仕留めやすい。
俺みたいな雑魚には非常にありがたい存在だ。
最近はもっぱら生まれたてを狙って狩り続けている。 それもあまり褒められない手段でだ。
目の前には四肢と尾、頭を切り落とされ何の抵抗もできなくなったグラニュール。
俺はそれをひたすら嬲るように痛めつける。 わざと急所は狙わずに徹底的に痛めつけるのだ。
それにより嗜虐心が刺激され
このやり方には更なる効果があり、弱弱しく明滅するグラニュールを見ればアルフレッドが死んだ時の事を嫌でも思い起こされ、そんな状況を作り出している自分に対する怒りが湧き上がり
お陰で収支は黒字だ。 まさにグラニュールが居れば成立する永久機関。
どんどん性能を増していく免罪武装を見れば確実に成果が上がっているが、比例してこんな事を平気で実行できる自分自身への嫌悪感が増す。 それも免罪武装に喰われるので早々に麻痺するのだ。
どんどん自分の事が嫌いになるがその嫌悪感すらも消える。
そんな状態で人間は正気でいられるのだろうか? さっぱり分からない。
ただ、そんな壊れた頭でも疑問を抱ける程度の思考能力が存在するのが不思議だ。
免罪武装に感情を喰われると心に空白のような物ができるのか、凄まじい虚無感に襲われる。
それも早々に消えるのだが、問題は何がそれを喰っているのかが分からなかった。
胸に穴が開くような空白ができる度に抱く疑問だが、その空白すらも消えた瞬間にどうでもよくなり思考の片隅へと消える。
俺は小さく舌打ちしてグラニュールにとどめを刺す。
「あぁ、しまった」
またやってしまった。 嫌悪感が免罪武装の捕食スピードを超えると衝動的にとどめを刺してしまう。
気持ちはすぐに収まるのだが、失敗してしまったと少し後悔してしまう。
「……次はもっと上手く加減しないとな」
もう何回目になるか分からない呟きを漏らして俺は次の獲物を求めてその場を後にした。
心配するなよアルフレッド。 ちゃんと仇は討ってやるからな?
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