第6話 護衛さんは動きます

教会が少し遠くに見える位離れた場所にある、公園に足を踏み入れた。


花は少ないけれど、芝生が広がっていて、所々に遺跡のような白い柱のようなものが立っている。


「ここは古代に神殿が建っていた跡地らしいよ」


公園といっても、子供が遊ぶような感じではなくて、小道がいくつかのびていて、のんびりと散歩をしたりするような場所のようだ。


みんな教会に行ってしまったのか、公園を散歩している人は少なかった。


「‥ねえ、兄様、聖女様の光属性魔法って‥‥」


何となく、さっき兄様は、他の人に聞かれたくなかったのかなと感じたので、もう一度聞いてみる。


「うん、光の属性魔法は、怪我を癒したりする力があるんだけど、珍しいらしいよ。教会は光属性がある人を聖女候補にして、すごく力のある人を聖女様に認定するんだってさ」

「それって‥‥」


僕は次の言葉をいいかけたけど、兄様の目を見て、今は言わない方がよいのかなと思った。


僕は光属性の適正をもってるんだけど、家族にしか使わないでって、言われていたんだ。


辺境は魔獣と戦うことが多いから、魔獣と戦って家族が怪我したときに使うことはあるんだけど、それも、使っていいって、いわれたときしか使っちゃいけないんだって。


聖女様って言われるのって女の人だよね。


僕は男だから、聖女様にならないから他の人には内緒なのかもね。女の子と間違われても困っちゃうもんね。


公園の小道を少し進んでから、僕は、パッと勢いよく振り返ってみた。


小道を散歩している人の姿がまばらに見える。僕が振り返ったときに、ぴたっと足が止まった人がいた。


また少し歩いてから、ぱっと振り返る。また、後ろを歩いていた人のの足が、ぴたっと止まる。


もう一度歩こうと、見せかけてぱっと振り返った。後ろの人がぴくっと肩をふるわせた。


「あ、動いたよ。」

「ソーマ、遊ばないであげて」


僕と兄様がお出かけをするとき、二人で出かけると言っても、使用人の人が何人か、僕たちを守ってくれるためについてきてくれてるんだって。


教会の近くは、人の通りが多かったから、どこにいるかわからなかったけど、公園は、人が少なくて、柱以外ない開けた場所なのでどこにいるか分かるかな、と思ってたんだ。


あ、柱の陰に隠れている人もいるみたい。


「えへへ」


僕は、背後に向かって手を振ってから向き直って、歩きだした。じっと見られてお散歩するのって変な感じだけど、ついてきてくれているのがわかったので気にしないでおこう。

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