5分で読める淡い百合両片思い7~さくらんぼのパラドクス編~
水色桜
第1話
こんな気持ちを持ってはいけない。そう思えば思うほど意識してしまう。滑らかにノートの上を移動する指先、時々する咳払いの声、すべてが私の意識を吸い寄せて離さない。
「お姉、手が進んでなくない?ちょっと休憩にする?私も疲れてきたし。」
おさげを左右に揺らしながら妹の唯が言う。
「そうだね。私コーヒー淹れてくるよ。唯も飲む?」
「飲む!砂糖と牛乳多めでお願い!」
コーヒーが機械で淹れられるのを待ちながら一息つく。一緒に勉強しているだけなのに凄く疲れる。唯の艶やかな唇を見ているとどんな感触なんだろうとか、気持ち悪いことを考えてしまう。きっと唯に知られれば幻滅されてしまうだろう。コーヒーとチョコレートを持って戻ると、唯はなぜか私のベットの上にいた。
「あっお姉。えっとこれはその…。」
「もしかして眠くなっちゃった?」
どうやら勉強して疲れてしまったようだ。さっきはそんな風に見えなかったが、睡魔は突然襲ってくることもあるのだろう。
「コーヒー持ってきたよ。あと糖分補給にチョコも。」
「あありがと。よーしコーヒー飲んだらもうひと頑張りだね!」
なぜかちょっと大きめの声で唯が言う。私も気合を入れなおす。明日は期末テスト当日なのだ。集中しないといけない。
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お姉がコーヒーを淹れに一階に行った。多分5分くらいは戻ってこないはず。すかさずお姉のベットに滑り込む。
「は~。やっぱりいい匂い。お姉なんでこんなにいいにおいするんだろう。」
私はお姉がいないことをいいことに匂いを堪能する。
「勉強してる顔もかっこいいな。やばい我慢できなくなりそう。」
私は独り言を呟く。小学生のころからお姉は勉強も運動もできる神童だった。お姉は私にとって自慢であり、初恋の相手だった。けれど妹の私はきっと眼中にないだろう。お姉は押しに弱いところがあるから、いっそのこと押し倒してしまおうか。キスだけじゃなくてその先も…。そんなことを考えていたからだろう。いつの間にか時間がたっていたらしい。お姉がコーヒーを持って戻ってきていた。
「あっお姉。えっとこれはその…。」
しどろもどろになりながら言い訳を考える。眠くなっちゃったからとか言えばいいだろうか。でもそんなにすぐに眠くなるなんて不自然だし…。あれこれ考えていると
「もしかして眠くなっちゃった?」
やはりお姉はお姉だ。こういうときに無類の鈍さを発揮する。この鈍さがありがたいようなありがたくないような。やはりちゃんと直球で言わないとお姉には伝わらなそうだ。私は告白のセリフを何通りも考えながら、コーヒーで一息ついたのだった。
5分で読める淡い百合両片思い7~さくらんぼのパラドクス編~ 水色桜 @Mizuiro__sakura
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