友達#10

 恋とか友情とか知らなかった。知りたくなかった。夢とか希望とか知らなかった。楽しさとか喜びとか感じたことなかった。でも今知ってしまった。友情を。その友情を壊さないため、無くさないため、終わらせないため、私は努力していた。



もうセミの鳴き声もチラホラと聞こえ始め、少しずつ気温も上がり、あったかいと言うより暑いと言う言葉が適切になっていた。そして友達ができて、初めての夏休みを迎えようとしていた。


「もうそろそろ夏休みだね!」

私は最近自分から香ちゃんに話しかけるようにしている。どうしても、もっと会話したいと言う欲が抑えられないから。


「その前に期末テストだよー。本当に嫌ダァー。」

 言葉通り、本当に嫌そうにしている香ちゃんの顔は今日の天気とは裏腹にどんよりと雲っている。私たちはその次の土曜日に私の家で勉強会をした後、中間テストの反省を経て、期末テストと言う一学期最後の壁にぶつかろうとしていた。


「恭子ちゃーん!!!」

 後ろから飛んできた声を背中で受けて、前に進む。今日は期末テスト。

「夏休みどこ行く〜?」

「期末テスト終わってからね。」


 私はやっぱり香ちゃんを傷つけたくないし、香ちゃんのお母さんも言っていたように、迷惑もかけたくないので、テスト終わりにお楽しみは残しとくようにした。


 期末テストはと言うと中間テスト同様まだまだ簡単で、もう既に6年生で予習をしたところばかりだった。この前一番点数の低かった国語を少し多めに勉強したぶん国語はスラスラと解けた。そして余った時間は他の人たちがシャーペンを走らせる音に耳を澄ます。


カーンコーンカーンコーン、、


 最後のテストの終わりを告げるチャイムが教室を包み込むと、クラス全体にやりきったと言う空気と、達成感が溢れる、そしてその空気は行き場を失い、また自分達で吸い込むのだろう。そんなことを考えていると中間テスト同様香ちゃんが話しかけてくれた。


「終わったねー、やったよぉ〜、本当に疲れたぁぁ」

「疲れたねー、手応えあった?」

「そりゃあもちろん!国語なんて恭子ちゃんが言ったとこほとんど出たじゃん!!」

「国語より英語の方が私が言ったとこ出てたけどね。」

「えっ!嘘!マジィ〜」


 なんて今時の反応をされても反応に困ってしまう。

「終わったことは置いといて!夏休み初日一緒にショッピングモール行こ!」

「それテスト中に考えてたでしょ。」

「なんでわかったの!?」

 口を大きく開け目を見開いた姿は絵文字のようだった。

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