友達#4

 まだ2時間だけしか経っていないのに、驚くほど楽しく、心の中は喜びで満たされていた。そんな心の奥底にはまだ彼女への申し訳なさそう悲しさがあるのだけれど。


 香ちゃんと水族館の中にある小さなフードコートでお洒落な白いテーブルを囲んでいた。香ちゃんはクリームソーダを頼んで私はバニラのソフトクリームを食べていた。


「明日は何処いく?」

 明るい声で自分の体も気遣わず、私のことだけを考えての質問だろう。


「私の家で遊ばない?」

 土日と二日連続何処かへ遊びにいくのは金銭的にも体力的にも厳しい。


「いいね!」

「映画とか見ようね。どんな映画がいい?」

映画なら香ちゃんも負担になり過ぎないと思った。


「一緒に初めてみるのなら何でもいいよ!私同じの何回も見れないんだよねー。」

「そうなんだ。香ちゃんらしいね。」

「どう言うこと?」


キョトンとした顔で見つめてくる顔は、よく言う小動物ぽさがあった。


「最先端を取り入れてるって感じ?ほら!服とかも流行のでしょ?よく似合ってる!」

「ありがとう」

 顔お真っ赤にして照れている香ちゃんもしっかり可愛かった。


「私お手洗い行ってくるね。」

 私はそう言って立ち上がり、お手洗いに向かった。別にトイレに行きたいわけではない。いつも香ちゃんに気を遣わせるのは悪い気がしたからこうやって距離を置くことにしている。


 一応お花を摘んだ後さっきの席に戻る。するとそこには外国人らしき人が香ちゃんと話していた。


「Excuse me, do you know where the exit is?」

「えっ、あっ、イグジット?出口?えー、」

 香ちゃんは頑張っているが少し難しそうだ。


 私は外国人の肩を叩く。

「It's on the right at the end and then on the left.」

「oh thank you」

 そう言って外国人は笑顔で手を振って違う方向へ向かっていった。何がしたかったのだろうか。


「恭子ちゃんカッコよ!すごいね!」

「そう?ありがとう。」

「私なんて緊張して喋れなかったよ!」

「いいえ、出口と聞き取れただけで凄いわ。訛りがすごかったもの。」


 その後は2人でお土産屋により、お揃いのイルカのキーホルダーと香ちゃんは母にと、魚の絵柄が入ったクッキーを買っていた。


「じゃあまた明日ー!」

「ええ、また明日」

 元気に手を振りながら夕日に消える香ちゃんの姿は名前の漢字そのものだった。


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