使用人#2

 家に帰ってわかった。あの謎の違和感の正体。それは会話の進み方だ。最近、新しく雇われた商人の理央さんはあの人ではないことが分かった。その理由は簡単で、話し始めてすぐ気絶するが、その後は時に何も起きないと言う特殊な人だったから。


 どう頑張ってもすぐ気絶するので、朝のうちに気絶してもらっている。大体1日に2回程度気絶する。それほど長い間ではないので、本人も特に気にしていないみたい。


 話がそれたけど、理央さんと話してることが多くなり、違和感に気付きにくくなっていたが、秋田君は特に目立った症状が出ていなかった。少し耐性が強いのだろうか。


「ウッ、うん、、」

「おはよう。」

「おはようございます。恭子様。」

「大丈夫?」

「はい,大丈夫でございます。」


 そう言えば今日の帰り香ちゃんと連絡先を交換したのだった。あの違和感の気持ち悪さで忘れていた。


ピコン!


 噂をすれば影がさす。と言わんばかりに着信音が鳴る。初めての友達とのやり取り、緊張するが、少し楽しみでもある。

窓を覗き込むようにスマホを見る。


『ヤッホー!香だよ〜。よろしくね!(絵文字)』


 映し出された文字は何か特別な可能性を感じた。もしかしたらメールのやり取りだと呪いの効果は無いのかもしれない。


少し期待してメールの返事をする。


『恭子です。よろしくね。』


 変な文になっていないだろうか?少しぎこちない。初めてのメールのやり取りにそわそわしているとすぐ返事が返ってきた。


『早速なんだけどさ!次の土日ってどっちか空いてたりする?!』


 これは遊びの誘いというやつなのだろうか?私は少し涙ぐんでしまった。土日は空いている。いや、空けておく。


『うん!どっちも空いてる!』


 この返信で分かったことがあった。「!」を付ければ案外なんとかなることに。


『じゃあ遊ぼ!どこ行きたい?』


 特に行きたい場所はないが行くなら人の少ないところがいい。


『水族館とかどう?』

『ナイスチョイス』

『まだ時間あるし細かいことは明日決めよ!』

『うん。』


 香ちゃんがしっかりリードしてくれたのでやりやすかった。明日決めよって言ったのは、おそらくメール越しでも呪いの効果があるからなのだろう。


「私土日どっちかで水族館に行くわ。」

「分かりました。」

「私おしゃれな服とかわからないのだけど、アドバイス頼めるかしら。」

「はい。まず友達との遊びなら肌はあまり見せない方が良いです。まぁ香様はそんなこと気にしないと思いますけど。」

「わかったわ。」

「水族館に行くのでしたら、あまり暗い服はダメですね。白のデニムオーバーオールとかはどうでしょう。」

「いいわね。じゃあ中は何を着ればいいのかしら。」

「無難に肌色か、少し大人っぽくなりすぎますが紫とかはどうでしょうか。」

「流石ね。」


淡々た会話できる喜びを教えてくれたのは莉央さんだった。本当にありがたい。

だから私は理央さんを大切にしたい。

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