悲憤-hihun-2

 バーへ行き二人で仕事話をして盛り上がった。成田さんとは年齢も近いためか、気も許せて話も弾む。


「もう最近は忙しいんだけどさ、プライベートの話す内容は変わらないの」


「ええー、そうなんですか」


 ふと、時計を見ると24時を過ぎたばかり。明日は午後からの仕事だったがずっと返事の無い樹矢が心配で解散した。





 ___ガチャ



「たーだいまぁー」


 家の扉を開けると部屋は真っ暗だった。返事もなく、人がいる気配も感じない。


(あれ。あいつ帰ってないのか?)


 もしかして寝てるかもしれない。そう思い寝室の扉を開けると、そこにはベッドの側に座って蹲っている樹矢がいた。


「わ!樹矢?電気もつけないでどうしたの?疲れて寝てるのか?」


 声を掛けると樹矢はゆっくり顔を上げ、俺を見た。暗くて分かりづらかったが、その表情はプライベートでも仕事でも滅多に見せることの無い怒りの顔だった。


「朱、どこ行ってたの」


「えっ。とー。連絡はしたけど見てない?」


「どこ行ってたんだよ!こんな遅くまで!顔も赤いし呑んでたんだろ!」


 樹矢は立ち上がって俺の胸ぐらを掴みそのままベッドへ押し倒した。あまりの勢いに思考が止まる。さっきまでのふわりとした気分なんて何処かへ飛んでいってしまった。


「誰と!男!?まさか女!?」


 怒りとどこか寂しげな表情で俺に必死に叫ぶ。掴まれた力はとても強く、俺の胸に重くのしかかり息がちゃんと出来ない。


「まっ、て。みぃくん……おれっ」


 詰まらせて出る言葉は当然届かない。ちゃんと話をしようとしてるのなんてお構い無しに、樹矢の怒りは収まらず俺の服を乱暴に脱がしていく。


「抱かれたのか?最近なかなか会えないからむて、他の所へ行ったんだろ!」


 止まらない怒り。


 俺は反抗することを止めてしまった。

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