白黒-shirokuro-1
「はい、いいねぇー。もっとカメラを睨んでみようか」
カシャ___カシャ___
今日はカメラマンとして雑誌の撮影日。
撮影モデルは恋人の瀬羅樹矢だ。
初めて樹矢を俺が撮ったときの写真がとても評判良く、今後も是非撮影してもらえるならなるべく俺がいいと樹矢のマネージャーからの頼みでもうかれこれ3年は撮り続けている。
「その顔いいね。樹矢くん、ポーズも変えてみて」
撮影中は周りのスタッフもいるから何時もみたいに呼び捨てにはできない。
あくまで俺は樹矢の表情を引き出して撮影をするのが仕事。ただのカメラマンだ。
でも___
「やっぱ格好いい」
ボソッと呟いてしまうほど樹矢のクールな顔は格好いい。綺麗な顔立ちに高身長、手足もスラッとしていてどこを切り取っても絵になる。代わる代わる衣装はどれも似合っていて、自分のものにしてしまう。それがモデルである瀬羅樹矢の実力だ。
何時もはほんっと馬鹿みたいに声出してクシャって笑ってる時とのギャップに、またドキッとしてしまう。
世の中のファンはそんな樹矢に心を持って行かれてるんだろうな……って、俺もそのひとりか。
そんな事を思いながら続けた樹矢の撮影が俺の合図により終わりを告げた。
「お疲れ様でした!朱斗さん、今日もありがとうございました!」
何時もの笑顔で樹矢は言った。
「こちらこそ。出来上がり楽しみにしててね」
これが俺達の表の顔。仕事仲間としての朱斗と樹矢。
「朱斗さん、今日もご飯一緒にどうですか?」
仕事が同じでケツも一緒の時のお決まりの誘い文句。
「うん。いいよ」
樹矢と約束をした後、撮影現場から出て俺は自分の車に仕事道具を乗せて一人で目的地に向かう。相手はあくまでも表に立つ人間。男同士だとしても、変に噂が出るのは迷惑が掛かる。
家から近い、よく通っている居酒屋の個室へ入ると、樹矢は先に到着していた。
やっと……二人だけの時間が始まった。
「かんぱーい!今日もお疲れ様っ、朱ちゃん♡」
「樹矢もお疲れ様」
「今日の俺、どうだった?イケてた??」
ワクワクする子供のような目で俺の顔を見つめる。
「今日も良かったよ」
「えぇ!それだけー?もっと感想あるでしょー!」
「……ねぇよ」
「嘘だー!朱ちゃん、俺が良い顔した時ドキッとしてたでしょ。カッコイイって思ってたのお見通しなんだから!」
やっぱり敵わない。
天然なのになんでこんなに俺の事分かってるんだろう。ポーカーフェイスしてるはずなのになんで見破られるんだろう。
「ね?正解でしょ?」
クシャって俺の好きな笑顔をする樹矢。
……好きだなぁ。
「あ!俺の事好きって今思った??ねぇ、ねぇ、朱ちゃん!」
ホント、敵わないな。
俺は思わず苦笑いしてしまった。
「思ったよ。……樹矢のことが好きだからな」
「………っ!朱ちゃん!!!」
樹矢の大きな身体が俺に覆い被さりぎゅっと抱きしめられた。
そんなのも束の間でちゅっとキスされて、俺も樹矢を抱きしめ返した。
樹矢に押し倒された状態でこいつが歯止めなんかかかるはずもなく、どんどんキスが深くなっていく。
「んっ…んんっ…みきっ……や…!ここ店っ…!」
深い口づけから解放されたと思えば、樹矢は。
「みぃくんって呼んで」
(いや、そこかよ……!!)
「だめ!ここお店だから!するなら家帰ろう、すぐそこだし、ね?………みぃくん」
最後に呟いた一言によって、樹矢の表情に余裕が無くなったのが分かった。
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