ギフテッドくん。
中原恵一
「恐竜の絵」を描いてください
ある日、小学校の先生が博物館での校外研修を終えた課題として「恐竜の絵を描いてください」と言った。
しかし、さすがギフテッドくんは違った。
ギフテッドくんは恐竜図鑑を読み漁って得た知識を元に、最新のティラノサウルスの復元図を描いてみせた。
頭と尻尾を地面に対して水平に保ち、腕は見えないほど小さく、羽毛の生えたティラノサウルスを見て同級生たちは大笑いだった。
「何この毛、ダサ」
「腕ヒョロすぎ。カッコわる」
「こんなの恐竜じゃない」
するとギフテッドくんは怒り心頭のようで、彼は他の児童が描いた絵をケチョンケチョンに批判し始めた。
「君らこそ、ちゃんと先生の言うことを聞いたか? 僕の定義から行くと、君らの描いたものは全部恐竜じゃない」
「へ?」
困惑する同級生たちを前に、ギフテッドくんはオタク特有の早口でまくし立てた。
「まず、ヤマダ君の絵だが、ゴジラみたいに尻尾を引きずって歩いていた恐竜は存在しない」
「で、でもウルトラマンの怪獣はみんな尻尾引きずってるよ?」
「あれは中に人間が入ってるからだろ。こんな姿勢じゃ尻尾が邪魔になってバランスがとれないし、まともに歩くこともできないだろう」
怪獣映画が好きなヤマダくんはタジタジになってしまった。
「次にスズキ君。なんでティラノサウルスが人間の乗った車を追いかけ回してるんだよ? 恐竜は六千六百万年以上前に絶滅したんだぞ?」
「俺はただジュラシックパークを参考にしただけだよ」
「ティラノサウルスは時速50kmでなんて走れないし、そんな速さで動き回れる遺伝子改造生物を僕は恐竜とは呼ばない」
続いてスズキ君もノックアウト。
「最後にワナタベさんの絵だけど、これはロンガイだ。翼竜や魚竜、首長竜はそもそも恐竜じゃない。先生の話ちゃんと聞いてたか?」
たくさんの空想上の恐竜たちが集まる世界のイラストを描いたワタナベさんは泣き出してしまった。
女の子を泣かせてしまったことで、同級生のみんなはギフテッドくんを責め出した。
「オマエ、ムカつく」
「さっきから偉そうに。ナニサマなんだよ」
しかしギフテッドくんはツンとした様子で一言。
「僕は先生の言った通りにしてるだけだよ。先生は『恐竜の絵を描け』って言ったんだぞ? みんなちゃんと課題のテーマを守れよ」
これにはクラスのみんなも参ってしまった。
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