想いは少女を六弦に宿す~偶然出逢ったギターに憑いてた女子高生との甘々同棲ラブコメ(短編小説)(「G’sこえけん」音声化短編コンテスト作品)

夕奈木 静月

第1話「君」との出会い

(あれ…?私…死んじゃったはずなのに…どうしたんだろう?ここ、よく来てた楽器屋さんだよね…。おーい店長さん~。

 うわっ、なんだろ…身体が…窮屈で、動けない…。

 私は波根花憐はねかれん、高校二年生。

 先週、突然の事故で死んじゃったの…。

 それからしばらくは、真っ暗な闇の中でさまよってたんだけど…、急に今、目を開けることができたんだ)

 

 ガタガタ…。


(きゃあっ、持ち上げられて…、なになにっ…?わたし、ギターになっちゃったのっ!?)


 シールドがアンプにつながれる音がした。


(なんだかアンプにつながってると落ち着く~。

 …って、違う~!そうじゃなくて…どうして!?私は人間のはずでしょ~?)


 たどたどしいギターの音色。


(うんうん…あったあった。私もギター始めた時、こんな感じだったなあ~)


 試奏しているのは…


(同い年くらいの…男の子だね。この辺でよく見かける制服着てる…。

 バンドやってるとか、学校で軽音部入ってるとか、かな?)


 私につながれていたシールドが外されて、ケースに入れられるようだ。ファスナーの音がする。


(うええ~ん…暗いよっ。私…これからどうなっちゃうの~?)


 レジの音。


(もっ、もしかして私…買われちゃったのぉ~!?

 と…いうことは、今から君の家に行くってこと~!?)


 自転車で走っているみたいだ。


(暗い暗い~っ!怖いよっ…。早く、早く止まって…)


 自転車が止まる。鳥の声が聞こえる。

 ケースが開かれる。


「うわあ~。近所にこんな場所あったんだ~。全然知らなかったよ…。

 すごい遠くまで見渡せるっ…!やーっほ~!!」


 ガタガタッ。ケースの上に投げ出される私。


「痛った~い…。もう、なにするのよっ!?って…私の声…聞こえてるの?」


 驚き、うなずく君。


「じゃ、じゃあさ…私をここから出してくれない!?」


 気の毒そうに首を振っている。


「どうやって、って顔してるね…。まあ、たしかにそうだ…。

 私も方法が全く思いつかないよ…。あはは…」


(困ったな…。でも、こうやってまた、この街の景色を見られたのは…素直にうれしいな…。

 みんな元気で暮らしてるかなあ…?まあ一週間しか経ってないから特に変わらないか…)


「おっといけない…。ねえ君…、君はどんな音楽が好きなの?」


 途切れ途切れに、でも懸命に奏でられるブルージーなフレーズ。


「へえ~っ!渋いのが好きなんだね~。若いのに珍しい…って、私はいくつなんだって話だけどっ…!あははは…。

 でも私もそういうの、好きだなあ…。ねえ、もっと弾いてみて?」


 ~♪~パチンッ!


「あっ!大丈夫?チョーキング、慣れないと難しいよねっ?ふふっ、私もそうだったな…」


(ギターから出られれば、コツを教えてあげられるんだけどな…。

 あっ、そろそろ帰るのかな?)


 ケースの開かれる音。


「ねえ…少しでいいから外が見えるようにしてくれないかな?真っ暗だと怖くて…」


 微笑んで首を縦に振る仕草が見える。


「よかった…。君、優しいんだねっ…」


 顔を赤く染める君。


「かわいい~!あっ、ごめん…。私も…君と同じ高校生だから…そんなに歳…変わらないか…。

 えっ?一年生?そっか…一応、私がいっこ上かあ…。

 じゃあ…お姉さんらしく厳しくしないとねっ!うそうそ、冗談だよ…。これからどうぞよろしくねっ!」

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